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福岡市嘱託職員 増加する「県警OB」

2014年2月 6日 08:55

 福岡市(高島宗一郎市長)による退職した福岡県警警察官の再雇用が、年々増加している実態が明らかとなった。
 地方自治体では、正規職員の削減が進む一方、退職後のOBを嘱託職員として再雇用するケースが増加している。しかし、福岡市における県警OBの再雇用数は突出しており、市や県の関係者からも疑問視する声が上がっている。
 就職難にあえぐ市民をよそに、常識を超えた市政運営がまかり通っている証左とも言えそうだ。
(写真は福岡市役所)

増え続ける「県警OB市職員」
 一昨年6月、HUNTERは福岡市への情報公開請求で、平成20年度から同24年度までの5年間で、市の嘱託職員として任用された県警OBの人数を確認し、実態を報じた。それによると、平成20年度から22年度まで60~61人だったの県警OB嘱託職員の数が、平成23年度から上昇。同年度に64名となった後、平成24度から一気に8名増え72名となっていた。

 今回、改めて嘱託職員の採用状況について情報公開を求めたところ、25年度にはさらに5名雇用し、77名にまで増えていることが判明。平成24年度の時点で、2億円を超えていた県警OBへの人件費が、さらに積み増しされた状況だ。

【県警OBの採用人数】
・平成22年度・・・60名
・平成23年度・・・64名
・平成24年度・・・72名
・平成25年度・・・77名

 一方、一昨年の時点で福岡県が嘱託職員として採用していた県警OBは35名。人件費総計は約1億円で、人数、人件費ともに福岡市の半分。この数字はその後もほとんど変わっておらず、福岡市だけが突出して県警OBの受け入れを行っている状況だ。

 取材に応じた県議会関係者はこう話す。
「県と県警の関係から言って、県警OBを大量に再雇用することはない。必要な人員だけを嘱託として招いている。例えば環境部。捜査員の経験を生かしてもらい、産廃の不法投棄などに対応してもらっている。県が不必要に県警OBを雇い入れる必要はない。警察の仕事と県の仕事は、厳然と区別されるべきで、役所が率先して警察OBを雇うようになれば、おかしな状態になりはしないか。福岡市は何か勘違いしてるんだろう」。

背景に県警OB副市長の動き
 平成24年度に県警OBの市への再就職が8名も増えたのは、市役所内部の組織改編が原因だった。福岡市は同年4月、暴追運動の強化などに対応するため、市民局内に「生活安全部」を新設。初代部長に現役警察官を招くとともに県警OB5名を嘱託で生活安全課に採用した。通常、新設課を外部の人間ばかりで構成することはなく、これまでの福岡市では考えられない人事だとされていた。

 県警OB採用数が増加に転じた背景には、県警OBである大野敏久氏が副市長に就任したことがある。高島市長の人事だったが、いまも疑問視する声は少なくない。ある市職員は次のように話している。
「大野さんが副市長になってから、市役所内部が息苦しくなった。HUNTERが『ゲシュタポ』と書いたが、ネツトの閲覧制限や報道関係者との接触調査なといった現状を考えると、まさに的を射た呼び方。県警OBの天下りが年々増えることにも納得できない。そもそも、警察OBじゃなければならないような仕事があるのか。すでに県警からは正規の警察官が複数、出向してきており、きちんと役割を果たしているはずだ。これでは、警察の仕事を市役所で引き受けるようなもの。どう見ても大野さんの手下を増やすためとしか思えないが・・・」。

副市長は「長い目で見て」と言うが・・・ 
 一昨年、県警OBの天下りが増えていることについて話を聞いた折、大野副市長は「治安を守るためには警察、行政の連携が必要」とした上で、「県警OBを招いて良かったと言われるような仕事をやっていく。どうか長い目で見て下さい」と語っていた。しかし、市民から見て、何か特別な成果が上がっているとは思えない。成果が得られぬまま、県警OBの天下りが増える現状は、やはりおかしいと言わざるをえまい。暴力に対抗するのは警察の仕事。高島市政は、何を守るためにこうした人事を行っているのだろうか。



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