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福岡市・中央保育園移転 報じられない園児募集の実態

2014年2月 5日 07:00

 保護者らの反対意見を無視し、福岡市の高島宗一郎市長が強行した「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転にともなう待機児童解消策が、費用に見合う効果を上げていない実態が浮かび上がった。
 市は、同園の定員をこれまでの150人から300人に増やすことで、待機児童もその数だけ減ると主張していたが、同園の新年度における現在の応募状況を確認したところ、0歳児、1歳児、2歳児で定員オーバーとなっているものの、3歳児、4歳児、5歳児については、定員割れ。全体でも300人には達しておらず、他園との調整やさらなる募集に望みをかけねばならない状況だ。
(写真は、現在の「中央保育園」)

聞いて呆れる「定員オーバー」
 先月14日の定例会見、高島市長は、市政記者クラブ所属の記者から「中央保育園に関しては、倍増させた定員に見合う、匹敵するぐらいの状況だったとの話ですけれども、まあ開園の状況とかですね、それは今どうなっているのでしょうか」と聞かれ、次のように述べている。

 『中央保育園に関しては、今、一次締め切りの申し込みの時点で、既にもう昼間はお断りをしなきゃいけないぐらいオーバーしているんですね。夜間の方に関しては、新規に始めるということで、今、既にある第2どろんこ保育園ですかね、あっちの方に今集中をしているんですね。ただ、新しく中央保育園でも2時まで始めますよということで、第2どろんこの方ももう定員を随分オーバーをしていますので、そうした皆さんを中央保育園にというふうに、要するに平準化をしていくとですね、もう一次締め切りの段階でいっぱいいっぱいという状況です。ですから、これ、またこれから第二次募集の締め切り等もあるとですね、やはり非常にニーズは高いということが言えると思います』

 新中央保育園の定員は、すでにオーバーしているというのだ。しかし、この時点でHUNTERの取材で明らかになった募集の実態は、まるで違うものだった。下が、市長会見時の中央保育園の応募人数内訳である(数字は昼間の255名についてのもの。左から、進級する在園児数、新規の入所希望者数、定員)。

園児表

 移転後の新「中央保育園」及び「第2中央保育園」の昼間定員合計は255名、夜間保育定員が45名である。全体の入所希望者は290名を越えており、昼間定員はたかしにオーバーしている。0歳児クラスは1名オーバー、1歳児クラスが21名オーバー、2歳児クラスでは30名がオーバーとなっており、この年齢の保育に限ってはニーズの高さがうかがえる。オーバーした子どもの数だけ、入所を断られるのも事実。50名ほどがこぼれ落ちる状況だ。

 しかし、3歳児クラスは6名、4歳児クラス7名、5歳児クラスには12名の空きがあり、逆に25名の定員割れ。その後、1月25日時点で入所が決定した人数はこうなっている。

0歳児26名、1歳児39名、2歳児44名、3歳児39名、4歳児43名、5歳児39名、夜間13名。計243名。

 13名の夜間保育は別として、入所希望が0~2歳児クラスに集中したため、3~5歳児のクラスが埋まらず、昼間は255名の定員に対し結局230名しか集っていない。これが実態だ。「既にもう昼間はお断りをしなきゃいけないぐらいオーバーしているんですね」という高島市長の発言が、いかにいい加減なものか分かる。市長は、入所希望者の総数だけを取り上げ、実態を隠していたのである。おそらく高島市長は、入所希望が0~2歳児のクラスに集まるという、保育の現状さえ知らなかったのだろう。

ツケは市民に
 困ったことに、市政記者クラブ所属の記者たちも、市側の発表した数字を何の検証もなく垂れ流し、高島市政の歪みを容認する格好となっている。今年1月の地元紙の報道ではこうだ。見出しは「保育所申し込み3万1,948人 福岡市新年度1次締め切り」。記事では、『保護者の一部などが移転に反対す中央保育園(中央区)には、定員300人に対し294人が申し込んだ。入所者は2次締め切り(2月6日)、3次締め切り(3月7日)を経て確定する』。これでは市長のおとぼけ発言と同じレベル。実情は市民に一切伝わらない。そもそも、移転に反対してきたのは『保護者の一部など』ではなく、『保護者と保育士の大半』。事実関係さえねじ曲げている。恥を知れと言いたい。

 中央保育園に関する数字についてさらに検証してみよう。中央保育園の現園舎では、じつは最大190名の保育が可能だった。従って、現在の募集実態を示す数字(230名)では、実質40名程度しか待機児童が解消されないことになる。この事業にかかる公費は、土地代9億円+施設整備補助金3億5,000万円+追加工事費約3,500万円。約13億円もかけて40名の待機児童解消しかできていないことになる。待機児童一人当たり約3,250万円―。子育て支援は重要なテーマだが、費用対効果を考えるべきだろう。無理やり風俗街の土地を買ったツケは、市民が支払うことになるが・・・・・。



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