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福岡・高島市政を蝕む隠蔽体質(上)

2014年1月24日 08:30

公文書非公開決定通知書 昨年、国民の知る権利を阻害する「特定秘密保護法」が成立した。国の役人が勝手に情報を選別し、隠蔽する仕組みを合法化したに過ぎない。
 地方自治体には関係のない法律のはずだが、平然と情報を握りつぶしている自治体がある。
 福岡市(高島宗一郎市長)は、13億円以上の税金が投入される事業の関連公文書を非公開にすることを決め、昨年末までにHUNTERなどの情報公開請求者に通知した。文書の中にはすでに報道で公表されたものも含まれており、すべてを非公開にする合理的な理由はない。背景にあるのは高島市政になって進む「隠蔽体質」。その実態について検証する。

表面化していた文書の内容
 HUNTERは昨年11月、市が進める認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転に関する公文書の開示請求を行った。対象文書は、同園移転新築工事の関係者による会議の議事録やその関係資料である。

工事関係者会議の議事録など じつは、請求した文書の大半を、HUNTERはすでに入手し、その記述内容を報じていた。入手した工事関係者会議の議事録など(右の写真)には、移転先での開園時期が遅れることについて、《マスコミ・保護者等から問い合わせがあった場合は、契約工期にて完成を目指す旨で対応してほしい》と、事実上隠蔽を申し合わせたことが明記されていた。

 また、会議の仕切りをやった人物が、中央保育園の運営法人である「社会福祉法人福岡市保育教会」の理事ではなく、認可保育所の代表の集まりである「一般社団法人福岡市保育協会」の事務局長で、昨年4月から同協会に天下りしていた元市部長だったことなども明らかとなっている。市、保育協会、ゼネコンが組んだ大掛りな隠蔽の構図が浮かび上がっていたのだ。

 議事録等の記述が明かした最大の問題は、新たに整備される中央保育園の“本当の開園時期”が、市を含む関係者の間で確認されていたことだ。それによると、整備される新「中央保育園」と「第2中央保育園」のうち、予定通り4月に開園できるのは新「中央保育園」のみ。「第2中央保育園」は6月オープンになることが、明確に示されていた。

 移転新築工事を請負った地場ゼネコン・北洋建設側が作成し会議に提出した文書には、工期変更により、第2中央の完成まで工事が続くことで《A園(第2中央)工事の為、園庭は使用できません》と書いてある。これは、園庭を災害時避難の集合場所と定めた従来計画の破たんを意味している。また、議事録には、追加工事費の発生についての記述もあった。《工期修正について発生した追加費用は全額福岡市》。さらなる税金投入の裏付けである。
 こうした事実について、市は現在も正式に認めようとしていない。

開示決定期限を延長し「非公開」に
 HUNTERは、入手した一連の文書を提示して市側に取材したが、市こども未来局は議事録などの存在を認めながらも、「4月開園」と強弁。開園時期の遅れや避難計画の破たんを認めなかったため、昨年11月、改めて市に議事録及び関連資料すべての情報公開を求めていた。

 これに対し市は、開示決定期限を延長したあげく、12月20日になって「非公開」を決定。HUNTERと、同様の情報公開請求を行っていた中央保育園の保護者会に「公文書非公開決定通知書」を送付した(市の文書送付は24日、配達は26日)。下は、その通知書にある非公開理由である。

「公文書非公開決定通知書」にある非公開理由

13億円公費投入事業の実態を隠蔽
 個人情報を非開示にするのは当然だが、その他の非公開理由は容認できない。まず、会議には市こども未来局保育課と財政局の職員が参加しており、公務の一環であったことは疑う余地がない。市では、こども未来局と財政局がそれぞれ同じ文書を保有しており、この議事録などをもとに、事業の状況についての部内での報告が行われている。組織として共有したということで、明らかに開示すべき公文書だろう。

 次に、保育園の移転には巨額の公費が投入されることを忘れてはならない。すでに支出済みの土地代が約9億円、予定される施設整備補助金は約3億5,000万円だ。さらに、数千万円単位といわれる追加工事費に加え移転先周辺道路の整備などにも予算がかかる。ざっと見積っても13億円を超える公費が投入される事業なのだ。土地代に加え補助金までもらう形の中央保育園側(社会福祉法人福岡市保育協会)や市の都合で、事業の実態を示す文書を隠すことなど許されまい。公開されれば『本市の保育事業の適正な遂行に支障を及ぼす』ような文書があること自体、事業に透明性がないことを物語っている。今回の非公開決定で、市が、市民に対する背信行為を認めた格好だ。

 そもそも、開園が遅れることを明記した議事録や建設会社提出の文書は、すでにHUNTERの記事で一部が公開済み。市は、一連の文書の存在について認めており、こうした部分まで隠す合理的な理由は見当たらない。
 今回の非公開決定は、市側の嘘や杜撰な移転計画の実情が改めて公表されることを怒れたか、あるいは別に不適切な事実があるためとしか思えない。まさに悪質な「隠蔽」。市民の知る権利を踏みにじる行為だとも言える。

情報公開請求放置で「条例違反」 
 中央保育園に関する文書の情報公開をめぐっては、昨年9月、こども未来局が市情報公開条例に違反し、HUNTERの情報公開請求を放置していたことが発覚。同局の吉村展子局長が、条例違反を認め下の文書をHUNTERの記者あてに示していた(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

条例違反.JPG

 じつにふざけた内容だ。文書のタイトルは「情報公開決定の遅延について」。条例違反でありながら、この段階で、すでに事を軽く扱おうとする姿勢が露骨に表れている。公印はもちろん、吉村氏自身の印鑑さえ捺されていない。公式な文書かどうかも分からぬ、いわば誠意のかけらもない文書である。

 また、吉村局長自身がHUNTERの追及に条例違反を認め謝罪しておきながら、文書には「条例違反」という言葉は出てこない。文中の、『公開決定の期限を失念し、決済を終わらせるのが遅れてしまい、公開決定の期限より遅れてしましました』という行為が条例違反にあたるのだが、文書全体の流れはからは、“うっかりミス”で済まそうという意図が透けて見える。事案の矮小化を狙った姑息な手法だ。

 このケースでHUNTERが福岡市に情報公開請求していたのは、中央保育園移転に関連する次の2件。

①中央保育園の移転予定地について、不動産鑑定評価を依頼した際の決済文書にある
  「鑑定見込み額900,000,000円~1,000,000,000円」の算出根拠。
②平成25年7月17日付「中央保育園の移転について」(子ども未来局作成)で、幅広く色々なご意見を伺い」と
  ある中の「ご意見」が誰からのもので、どのような内容だったかを示す文書。

 福岡市の情報公開条例では、請求に対する公開・非公開の決定を、《請求があった日の翌日から起算して7日以内にしなければならない》と規定。事務処理上の困難その他正当な理由がある場合に限って、《請求があった日の翌日から起算して20日を限度として延長することができる》としている。また、決定の内容については、公開・非公開を問わず《速やかに、その旨を書面により通知しなければならない》とも定めている。決定期限を延長した場合も同じ扱いだ。

 前記①の請求は8月9日(受付日は12日)に、②の請求は同15日(同日受付)に行っており、条例の規定に従えば、市は①について同月21日、②については26日に公開・非公開、もしくは決定期限の延長を決め、《速やかに》通知を出さねばならなかった。

 しかし、決定期限を過ぎても市側から何の連絡もなかったため、記者が9月2日になって市に状況を確認。担当のこども未来局保育課が「決済はとっているが・・・・」などと曖昧な受け答えに終始したため、改めて説明を求めたことで条例違反が露見した。

 ちなみに、条例違反を犯してまで決定を遅らせながら、結果的に対象文書は「なかった」ということになっている。福岡市では、裏付け文書もないまま、発注金額を決めたり、公表文書を作っているということになる。「デタラメ行政」というほかない。もちろん、あるものを「ない」と主張している可能性は否定できない。現在の市役所なら、十分考えられる話なのだ。

 HUNTERの記者に応対した保育課長と決裁権者である吉村展子こども未来局長は、公開・非公開の決済は行っていたものの、担当職員が書類の管理を誤り、今回の事態を招いたと説明。情報公開条例に違反する行為であることを認めながらも“うっかりミスだった”と主張した。前出の「情報公開決定の遅延について」という文書もそれに沿ったものだ。しかし、これを信用することはできない。
 
 市保育課は、問題の条例違反以前に、重大な文書隠しを行ない、HUNTERの記者に見破られて開示に応じるという失態を演じていたからだ。隠蔽はいまに始まったことではない。その問題については、次稿で詳細を明らかにする。

つづく



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