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福岡・疑惑の保育園移転 隠蔽示す施工業者の文書を入手

2013年12月10日 08:30

 福岡市が進める認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転にともなう新園舎建設工事を請負った地場ゼネコン「北洋建設」(中央区白金)が、建設業法が義務付けた工事現場における「施工体系図」の掲示を意図的に回避したことや、取材に対して虚偽を申し向けていたことを示す文書が見つかった。建設工事の遅れが露見することを防ぐ狙いだったと見られる。
 問題の文書は、工事にからむすべての関係者に配布されており、移転計画の破たんを、市、運営法人、施工業者がグルになって隠蔽した証拠。同園移転をめぐる闇は、底なしの様相を呈してきた。
(写真は、新中央保育園の建設工事現場)

施工業者作成の文書
 HUNTERが入手したのは、中央保育園の建設工事を請負った北洋建設の現場責任者が作成し、工事の関係者会議に提出された文書。そこには、10月30日にHUNTERの取材を受けた時の、現場責任者と記者のやり取りが記されていた。(下が問題の文書。赤いアンダーラインと囲いはHUNTER編集部)

虚偽の証拠

取材への「嘘」明記 業法違反も辞さず?
 この中で、北洋建設現場責任者は、実際には下請である九電工に5,000万円以上の設備工事を発注していながら、「ありません」と回答したこと。また、その理由として、「ある」と答えた場合、「施工体系図」掲示の必要が生じることや、(体系図掲示によって判明した)下請業者への問い合わせを防ぐためと記している。工期遅れを糊塗するため、建設業法が定めた規定を知りながら、意図的に「施工体系図」の掲示を見送っていたことになる。

 建設業法は、下請契約の請負代金が一定額以上(下請契約合計が3,000万円以上、建築一式工事の場合は4,500万円以上)となる工事について、建設業者が下請業者の名称や工事内容その他国土交通省令で定める事項を記載した「施工体制台帳」を作成し工事現場に備え置くことや、施工の分担関係を表示した「施工体系図」を作成し工事現場の見やすい場所に掲げることを義務付けている。公共工事なら、公衆が見やすい場所に施工体系図を掲げなければならない。中央保育園の建設工事では、北洋建設が下請業者に5,000万円を超す設備工事を発注しており、施工体系台帳の作成及び施工体系図の掲示義務がある。

 同社を監督する国土交通省九州地方整備局に聞いたところ、文書の記述が事実で、施工体系図を掲示していなければ、監督官庁の権限で処分する事案だという。もちろん、文書にある「コンプライアンス違反は無いので問題ない」との記述は誤りである。
 文書に記した内容通りの現状なら、北洋建設側は、違法を承知で施工体系図の掲示を回避したともとられ、極めて悪質。工期遅れによる移転計画破たんを隠蔽するため、関係者への取材を妨げる姿勢は、姑息としか言いようがない。

工期遅れ隠蔽のため重ねる「嘘」
 中央保育園の新築工事をめぐっては、在園児保護者に対する市側の説明不足に加え、不透明な移転計画の過程が判明。これが原因で移転反対運動が起き、市の判断で6月の着工を延期した。実質2ヶ月遅れで工事を開始したものの、結局、予定通りに開園できるのは前面道路に面した新「中央保育園」のみ。残る 「第2中央保育園」の開園は6月になることが確実となっている。新しいふたつの保育園は、建物がつながっているため、建築基準法上あくまでも一つの保育園。このため、建築工事なかばで新「中央保育園」だけを使用する場合、同法上の「仮使用」ということになる。

 仮使用状態で「第2中央保育園」の工事を進めるため、園庭は使用不能。工事車両の行き来があるため、園の入り口が極端に狭くなり、十分な避難経路も確保できなくなる。災害時における園児の避難計画は、子どもたちを園庭に集合させ、園入り口から道路に誘導することを前提にするものだったため、市側が主張してきた安全確保策が破たんすることになる。このため市は、工期の遅れや「仮使用」について認めようとせず、「4月開園を目指す」とのコメントしか出していない。

 文書で、北洋建設の現場責任者は、仮使用についての質問取材に対し「仮使用に関する協議に関しては分からない」と答えたことを明かしている。実際、取材にもそう答えていたが、これは嘘。HUNTERが入手した工事関係者会議の議事録によれば、北洋建設の現場責任者本人が会議に参加しており、そこでは「仮使用」という言葉を用いて話し合いを行っていた。

 さらに、北洋建設側は、10月3日付で「中央保育園新築工事 工期変更に伴う要望・検討事項」を作成。工事の関係者会議に提出された同文書には、仮使用申請のことや、修正された工程での「第2中央保育園」の開園時期を6月1日とすることなどが明記されていた。この文書も北洋の現場責任者名で作成されている。(下がその文書のコピー。赤いアンダーラインと書き込みは、HUNTER編集部)

業者提出文書  北洋提出文書

 工期が遅れ、「仮使用」で一方の園舎だけを先行利用するということは、工事期間中「園庭」が消滅するということ。即ち、緊急時避難計画の破たんを意味しており、今回見つかった文書は、この状況を隠蔽するため、なりふり構わぬ嘘で逃げようとした証拠。中央保育園移転計画における、市側の説明に信憑性がないことを改めて証明した格好となった。

*中央保育園建設工事現場における施工体系図の掲示について、HUNTERの問い合わせを受けた国土交通省九州地方整備局は、北洋建設側に事実確認を行っていた。整備局によれば、北洋建設側は、「工事現場内の作業員の見えるところに体系図を掲示している」と回答したという。取材当日まではなかったはずだが・・・。



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