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高島福岡市長 県警OB副市長に報道つぶし依頼
「県警に言って・・・」―幹部会議での発言、複数が認める

2013年12月17日 08:50

福岡市の高島宗一郎市長 福岡市の高島宗一郎市長が、幹部会議の席上、県警OBの副市長に対し、県警を動かしてHUNTERの動きを封じるよう、相談を持ちかけていたことが明らかとなった。複数の関係者が、市長の発言内容を認めている。
 報道機関(KBC九州朝日放送)出身の市長が、警察権力を使って自分への批判報道を葬り去ろうとした形。独裁色を強める高島市政の歪みが、頂点に達している証左でもある。

関係者の証言
 会議の現場に居合わせた市関係者によれば、市長が問題の相談を行ったのは昨年から今年にかけて。幹部会議の席上、県警OBの大野敏久副市長に対し、「県警に言って、HUNTERをなんとかできないの」と持ちかけていた。警察権力を使って、気に入らないメディアをつぶそうという企てだ。同様の要請は複数回あったとされるが、大野副市長は、一度も返事をしなかったという。詳しい事情について、関係者から次のような証言を得ている。

 「大野副市長に対しては、(HUNTERの)周辺を洗えば、埃(ほこり)の一つぐらい出るだろう、という話しぶりだった。何でもいいから(材料を見つけて)摘発させろということ。つまり、警察権力を使ってHUNTERをつぶすという意味。“なんて馬鹿なこと言ってんだろう”と呆れて聞いていた。

 相談された大野さんは、黙るしかなかっただろう。『はい、わかりました』なんて口が裂けても言えない。もし、こんなばかげた話で県警が動いたことが分かれば、(県警)本部長の首が飛ぶ程度では済まない。

 最初は冗談だろうと思っていたが、何度もそういう話があって、ああ本気なんだと思い、またまた驚いた。何度も同じことを言われれば、『指示』と受け止めるのが普通。実際に大野さんが動いたかどうかは承知していない」(元市幹部)。

 別の関係者も、市長発言を認め、こう語る。
「市長は、とにかく、HUNTERについて口汚く罵っていたから。ちょっと話せない酷さだった。思い出したくもない。それほどの内容。市長の友人で、市の顧問になってる方についてのHUNTERの記事や、自分への批判記事が相当こたえていたみたいだった。批判に対し、真摯に向き合えばいいのに、子どもみたいに周囲に当り散らしていた。

 大野さんに『県警でなんとかならないか』と持ちかけた時のことは、よく覚えている。複数回。発言内容に間違いはない。(市長は)自分が何を言っているのか分かってなかったんじゃないか。とにかく、最初は『HUNTERなんか見るな』だったが、次第にエスカレートしたのか、最後は『県警』だった。

 市民は高島さんの実態を知らないが、とんでもない市長さん。(市長は)権力者が警察権力を使って、言論を封じるということが、何を意味するのか理解していない。批判を続けるHUNTERを、警察使ってつぶそうなど、常人の考えることではない。危険この上ない話だと思う。

 大野さんが市長の話をどう受け止めたのかは分からない。しかし、何度も同じ話が出れば、部下として知らん顔はできない。HUNTERについて、調べる程度のことはやったかもしれないし、まったく動かなかった可能性もある。そのあたりの真相については聞いていない」。

県警OB副市長―「覚えていない」
 常軌を逸した高島発言について、話を持ちかけられたという大野副市長に話を聞いた。その時の、やり取りの一部である。

 記者:高島市長が大野副市長に対し、「県警に言って、HUNTERをなんとかできないのか」という話をしたとの証言を得ている。証言者たちは、警察権力を使って、うち(HUNTER)をつぶそうということだったと受け止めているが、事実か?
 大野副市長:市長は忙しくて、あなたのところの記事を見ている暇などないですよ。それは私も同じ。

 記者:市長発言は事実ではないのか?
 大野副市長:記憶にない。覚えていないですなぁ。

 8分ほどの取材だったが、大野副市長は市長発言について、「憶えていない」。立場上、「なかった」と言いたかったはずだが、幹部会議に参加した半数以上が市長の発言内容を認めており、完全否定できない状況だ。「記憶にない。覚えていない」が精一杯だったと見られる。

権力者の驕りを露呈
 高島市長は大分県出身。獨協大学を卒業後、KBC九州朝日放送に入社。タレントアナウンサーとして活躍していたが、平成22年の福岡市長選に出馬し、自民(推薦)、公明などの支援を受け、初当選を果たしていた。

 HUNTERは、高島氏の就任以来、不透明な政治資金処理や政治資金パーティーをめぐる市内部でのパーティー券販売、仮想行政区「カワイイ区」の問題点、議会開催中のフィットネスクラブ通いなどを報道。さらに、市長の友人で市顧問の会社社長が、同業者の業者選定に関与したことなどを厳しく追及していた。
 何人もの市職員が、市長がHUNTERを敵視する発言を続けていたのは事実と話しており、前述した元市関係者の話を裏付けている。

 高島氏が、県警出身の副市長に事実上のHUNTERつぶしを持ちかけたことは、批判的な報道を続けるメディアを、自らの権力と警察組織を使ってつぶそうとした証。まともな政治家の所業とは思えない。
 先の臨時国会で成立した特定秘密保護法は、国家権力が情報を隠し、真相を暴こうとする人間を処罰するための法律だが、国会で成立した以上、愚行であっても一応は「合法」。しかし、首長が、個人的な恨みや感情から警察組織を使って他者を圧殺する企てには、どこにも法的根拠がない。悪質さにおいて、犯罪行為といっても過言ではあるまい。

 高島氏は報道機関出身だ。報道や言論の自由について、誰よりもその大切さを理解していばければならない。しかし、若くして権力の座についた市長は、一般的な常識さえ失っているということだろう。「冗談だった」で済まされる話ではない。



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