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吉祥寺駅で転落事故 勇気ある日本人男性への賛辞

2013年9月27日 09:05

 今月16日、台風18号の影響で増水した大阪市の淀川に転落した小学生を、コンビニ店アルバイトの中国人男性(26)が川に飛び込んで救出した。大阪市はその後、橋下市長自らこの中国人男性に感謝状を贈っている。
 日中関係が冷え込んだ中、この若い中国人男性の行動に拍手を送った人は少なくなかったはずだ。自らの犠牲をいとわぬ行動は、国籍など関係なく、称えられるべきだろう。
 この小学生救出劇の数日前、記者は、取材で訪れた中央線吉祥寺駅のプラットホームで、思わぬ場面に遭遇していた。ご婦人の転落事故。なんの躊躇もなく飛び降りてご婦人を助けたのは、中年の日本人男性だった。報道されることがなかったこの日の出来事を、どうしても書き残しておきたくなった。(写真は、転落事故直後の吉祥寺駅の様子)

転落 鳴り響いた警報
 13日金曜、午後4時を少し回った頃。この日は取材の疲れから電車を乗り越すという失態を犯し、遅れて目的地の中央線吉祥寺駅に到着した。
 乗ってきた電車がホームを出た直後のこと。うしろで何かが硬いものにあたったような妙な音。振り返ると同時に、悲鳴があがった。転落。ホーム下にご婦人。白っぽい服に血痕。線路の真ん中に携帯電話。ひとコマごと確認できるのだが、記者の頭の中は真っ白。次に何をすればいいのか、すぐに浮かんでこない。駅構内は、「列車非常停止ボタン」の警報が鳴り響いていた。

 “降りて助けよう”。そう思い定めてホーム下に降りようとした時、そこにはすでに黒っぽいシャツを着た男性が―。この間わずかに数秒。情けないことに記者は電車が来てはいないかと左右の確認が先になり、遅れをとってしまっていた。躊躇はなかったと言えば嘘になるだろう。

 件の男性は、脇目も触れずに血に染まったご婦人を抱き起こし、ホームの端に押し上げる。居合わせた数名でホームに引き上げたが、ご婦人はぐったり。意識はあるものの後頭部から出血している。駅員さんの呼びかけに反応し、何度も起き上がろうとするが、ままならない。やっと救急隊が到着したのは、それから5分ほどしてからのことだった。
 後日、事故処理にあたった所轄署(武蔵野警察署)に聞いたところ、幸いにもご婦人は命に別状がなく、ほどなく搬送先の病院を退院されたという。

助けたのは日本人男性 
 それにしても、真っ先にホーム下に飛び降りた男性の行動には敬服するばかりだ。電車が来れば惨事。一歩間違えれば助ける側の命も危ない。そんな状況で、何の躊躇もなく線路上に降り、ご婦人を助けた胆力は並ではない。しかも終始冷静で、ムダな発言など一切なし。男性の姿がずいぶん大きく見えた。
 武蔵野署によれば、この男性の国籍は日本、特別に表彰などの予定はないという。大手メディアの報道があったとすれば、どうなっていたか?そう考えると釈然としない。

 12年前(平成13年)、山手線新大久保駅のプラットホーム。転落した男性を助けようとして、2人の男性が線路に飛び降りたが、進入してきた電車にはねられ、3人とも亡くなるという痛ましい事故が起きた。この時、転落した乗客を助けようとして犠牲になったのは、日本人カメラマンと韓国籍の青年だった。当時の報道を、ご記憶の読者も多いだろう。

 この事故を契機に種々の転落防止策がとられるようになった。前述した「列車非常停止ボタン」もそのひとつだ。それでも、自殺を含めた転落事故は後を絶たない。
 吉祥寺駅で筆者が出くわしたご婦人の転落事故は、偶発的なものだった。いくつかの原因が重なってホーム下に落ちてしまったと見られるが、勇気ある男性の行動が、悲劇を防いだことに違いはない。拙稿で申し訳ないが、最大の賛辞を贈りたい。

 最後に、ひとつ気になったことを―。JR東日本は首都圏を抱えて黒字経営のはずだ。各駅に転落防止柵を設置する余裕くらいあるのではないか。ぜひご一考願いたい。









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