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福岡市、中央保育園移転にからみ文書偽造の疑い
― 消された「待機児童数」 ―

2013年8月 2日 07:30

鹿児島 603-1.jpg 市民の反対を無視して風俗街への移転が強行されることに決った認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の施設整備補助金をめぐり、市作成の公文書が偽造されていた疑いが浮上した。 

消された『待機児童数 47人』
 偽造の疑いが持たれているのは、中央保育園の運営母体である社会福祉法人福岡市保育協会(以下、「協会」)が移転にともなう施設整備補助金の申請をおこなった際、「福岡市社会福祉施設整備費等補助対象施設選定委員会」(以下、「選定委」)でこの内容を審議するために作成された『審査事項チェックリスト』と呼ばれる文書。選定委員は、補助金申請者から提出された書類を精査した上で、この用紙に個別意見と「適」・「否」の別を記入する仕組みとなっている。

 文書を作成したのは市こども未来局保育課。選定委開催のため、委員会名簿や施設別資料など7種類の文書を準備した折に、中央保育園についての市側確認事項を記し、下に示した状態で決済を受けていた。

社会福祉施設整備費等補助対象施設選定委員会

 審査事項のうち、「必要性」-「増改築の必要性があるか」の項目において、「本市確認事項」の欄に『待機児童数 47人』と明記してある。

 一方、次に示した文書が、実際の選定で使用され、委員が意見や適・否を書き込んだ後のもの(黒塗りは福岡市)。決済済みの用紙と同じ内容だが、5人いる委員の審査事項チェックリストのすべてから、『待機児童数 47人』だけが消されていた。

消された “待機児童数 47人”

 問題の部分を拡大してみると、次のようになる。

消去前 → 消去後

 選定は、「増改築」される中央保育園が、社会福祉施設整備費等補助対象施設として適しているかどうかを判断するものだ。従って、計画内容、財源、計画の必要性が厳しく問われる。とりわけ“必要性”については、市側確認事項に記されているように、待機児童対策にとって重要であることが認められなければならない。決済段階の用紙に、『待機児童数 47人』と記されているのは、そうした理由からだ。

 市と中央保育園側の計画では、定員を150人も増やすことになっている。対して、待機児童数は「47人」。どう見ても計画に無理がある。
 しかし、79人となっている未入所児童数だけなら、なんとか格好がつく。そこで『待機児童数 47人』を消した―――補助施設選定にあたり、いったん決済を受けた用紙から、もっとも重要な部分が削除されていたとなれば、意図的な操作があったと見る方が自然だろう。そうなると明らかな“虚偽公文書作成”である。

合理性欠くこども未来局の説明
 なぜ待機児童数だけが消されたのか、事業を所管するこども未来局保育課に話を聞いた。

 ―― 選定委員会に供される文書として決済された『審査事項チェックリスト』には、『待機児童数 47人』と記されていた。間違いないか?
 保育課:間違いない。

 ―― ここに実際の選定で使用された5人分の『審査事項チェックリスト』のコピーがある。『待機児童数 47人』との記載がないが、公文書開示の折に、何らかの理由で消したということはないか?
 保育課:それはあり得ない。

 ―― なぜ選定の時のチェックリストから『待機児童数 47人』が削除されているのか?
 保育課:経過が分からない。決済文書と違うものが、委員さんに渡っていたことは認める。

 ―― 意図的に消したのではないか?
 保育課:それはないと思う。

 ―― いったん決済をとった文書ではないか。データをプリントアウトするなり、コピーするのが普通で、一部分だけ消えることなどないはずだ。偽造ということでよいか。
 保育課:意図的ではないから、偽造ではない。

 ―― 意図的ではないという証明ができるか?
 保育課:・・・・・・・。

 ―― 証明ができない以上、意図的に消した、つまり偽造ということではないか?
 保育課:それはない。

 ―― ほかに新たに決済をとったチェックリストがない。データ上で消さない限り、こうした現象は起きない。150人も定員を増やすにしては、「待機児童47人」では少なすぎる。だから消したのではないか?
 保育課:そんなことはない。

 ―― 現実に『待機児童数 47人』が消されているではないか?
 保育課:・・・・・・・。

 一連の事務作業を担当したこども未来局保育課は、チェックリストから待機児童数についての記載が消されていたことに、合理的な説明ができない状況だ。

 刑法は、《公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前2条の例による》と規定。印章又は署名がない文書の偽造について、《公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する》と定めている。

選定もアリバイ作りの一環?
 問題の選定をめぐっては、規定された「会議」を開かずに、持ち回りという杜撰な方法で約3億5,000万円にのぼる補助金支給にゴーサインを出していたことや、選定資料の誤りを見落としていたことなどが判明しており、正当性が疑われる事態となっていた。

 ある福岡市幹部OBは、次のように話している。
「いったん決済を受けた書類の内容が改変され、待機児童の実態を隠した。その結果、巨額の補助金支給にゴーサインが出されたという形だ。不正があったと見られてもおかしくない。文書偽造と言われても、否定する根拠さえないのではないか。こうなった以上、選定そのものをやり直すべきだ。
 そもそも、会議の資料は間違えるわ、選定審議は持ち回りで片付けるわと、聞いたことのないような話ばかり。市役所の公金取扱いに関する意識が弛んでいる証拠だろう。今回の選定も含めて途中の段階が単なるアリバイ作りとなっていることは、まさに『土地ありき』だったことを示唆している」。



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