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福岡・保育園移転 なかった「事業計画書」
運営法人 ― 「仮の数字」で補助金申請

2013年7月 2日 09:55

市が9億円をかけて先行買収した中央保育園の移転用地 福岡市が進める中央保育園(福岡市中央区)の移転計画にからみ、市が、運営法人側の杜撰な計画に基づく補助金申請を認めていたことが明らかとなった。
 同園を運営する「社会福祉法人福岡市保育協会」が市に提出した補助金申請の書類には、定員増にともなう職員配置体制が明記されている。しかし、実際には具体的な計画もないまま便宜的に職員数を記入し、補助金申請を行っていた。保育士確保の目途は立っておらず、移転後の運営方針を示す正式な「事業計画書」も作成されていない。
 市と運営法人側は、事業計画書の不存在や補助金交付過程の杜撰さを認めており、子どもを置き去りにした「土地ありき」の移転計画だったことを裏付けた形だ。
(写真は、市が9億円をかけて先行買収した中央保育園の移転用地)

乏しい保育士確保の具体策 
 福岡市が立案した中央保育園の整備計画によれば、現在150人の定員を300人に増やし、問題の移転用地の中に「中央保育園」と「第2中央保育園」を建設することになっている。「中央保育園」の定員は165人、「第2中央保育園」は135名だ。

 運営を任される「社会福祉法人福岡市保育協会」(以下「保育協会」)が、市に提出した新園舎建築のための補助金申請書類によれば、定員数が多く、夜間保育も行う予定の「中央保育園」の職員数は計52名。保育士39名のほか、主任保育士、事務員、施設長がそれぞれ2人ずつ配置されている。一方、「第2中央保育園」の職員数は36名と明記されている。(下、保育協会が提出した「社会福祉施設整備調書」の一部)

保育協会が提出した「社会福祉施設整備調書」の一部

 保育協会側が示した職員数のうち、中央保育園の「保育士39名」は、現行の体制とほぼ同じ数字だ。これでは深夜2時までの夜間保育を実施することは難しい。
 保育士不足が深刻化するなか、第2中央保育園の「保育士27名」が確保できるのかどうかも疑わしい状況だ。しかし、市への情報公開請求によって入手した資料のどこを見ても、保育士確保についての具体的な方策は記されていない。

「仮の数字」で補助金申請
 そもそも、きちんとした事業計画書が存在するのか?二つの保育園の保育士は、計画通りに確保できるのか?―保育協会の理事でもある同園の園長に話を聞いた。以下はその概要である。

記者:市は新たな保育園についての事業計画は出されていないといっているが、事業計画書はあるのか?
園長:資金計画は出したが、事業計画書はない。一応、2棟に分かれてのシミュレーションは出している。

記者:定員が300名になることを市から聞いたのはいつか?
園長:移転先が決められた後の昨年の6月以降だったと思う。

記者:定員を300名にして保育士が確保できるのか?
園長:順調に行っていれば、工事が始まって6月、それから求人を始めることにしていた。
    (資金計画においては)今の人員を二つに分ける。夜間を入れて三つ。そういう話は市にしていた。

記者:現在の保育士を3班に分けただけということか?
園長:そういうことだ。

記者:具体的な計画はなかったということか?
園長:資金計画の中でそれは必要。だから分ける。主任を中心にしてA、B、それから夜間の方に、
    仮の配置を・・・・。

記者:仮の数字ということか?形の上だけで、裏付けのない計画を出したということか?
園長:それは資金計画を出さないといけないから。

記者:ありもしない計画を受け入れた市側の責任はないのか?
園長:ありもしない計画ではなくて、工事が始まったら求人をすると・・・・。

記者:しかし、申請書には人員をどうするか書かなければならなかったから、便宜上の数字をあげた、
    ということではないのか。
園長:それはそうだが、求人はする。

記者:移転ありきで子どもは置き去りではないか?
園長:そうは思わない。

 正式な事業計画書は不存在、加えて保育士確保の目途も立たないまま、9億円もの税金を投入して移転用地だけが先行取得され、さらに3億5,000万円の補助金申請が通ったというわけだ。福岡市側も事業計画書が未提出であることを認めており、杜撰というよりデタラメと言った方が良さそうな実態だ。

市関係者からも厳しい批判 
 これまで福岡市が行ってきた新規保育所の募集では、応募した側に膨大な書類の提出を義務付けてきた。しかし、今回の移転計画に関して保育協会側が提出した補助金申請のための文書は、設計図面も入れてわずか100枚程度。市は、これに対し記載内容の裏づけさえ取っていなかったことになる。

 出来レースの結果とはいえ、あまりにお粗末なその経緯に、市関係者からも批判の声が上がっている。
「土地の取得過程は不透明、補助金申請の過程にも瑕疵があるというんじゃ、これまでの保育行政を否定するようなものだ。そもそも、きちんとした事業計画書がないのに、計画が進むことなんてあり得ないだろう。移転実現のためなら、なんでもありということだ。情けないが、市役所はすっかり狂ってしまった。児童館(中央保育園に併設されている市立中央児童会館)と商業施設を一緒にしようという、高島(宗一郎)市長の思いつきで事業をねじ曲げたのが原因。保育園と児童館を合築するという、従来の計画に戻せば済む話だ。この計画を通すことは、行政の自殺行為にほかならない」(市幹部OB)。



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