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九電の欺瞞性 ― 川内原発〈火山灰は東へ、放射性物質は西へ〉の矛盾
活断層調査も国が否定

2013年6月 5日 09:10

川内原子力発電所.jpgのサムネール画像 重粒子線がん治療施設「サガハイマット」(佐賀県鳥栖市)への九電からの寄付が止まっている状況について、「(原発を)4日早く運転すればなんてことはない」などと傲慢な発言をした松尾新吾・前九電会長(現相談役・九州経済連合会会長)。懲りない九電の体質には呆れるばかりだが、都合の良い調査結果を前提に、崩壊したはずの「安全神話」にしがみつく姿勢もまた、変わっていない。
 同社の瓜生道昭社長は、先月30日の記者会見で松尾氏を擁護したが、じつはこの会見で、原発に関する九電の調査結果の欺瞞性が浮き彫りとなるやり取りが行われていた。
 再稼働を急ぐあまり、原発に関する自社の各種調査結果に胸を張る九電だが、実態はお寒いものであることが明らかとなりつつある。
(写真は川内原子力発電所)

桜島の降灰と放射性物質拡散予測の矛盾
 この日の会見で、火山の影響について、九電が『これ以上の調査は必要ない』と判断した理由を聞かれた瓜生社長は、およそ次のように話し、問題はないとの見方を示した。

 「バックフィット(既存原発の新たな安全性評価)の時に限界もあり、川内3号の時に文献調査、それから学者の皆さんとの話だとか、過去のデータ等を踏まえながら判断した。火山で一番悩ましいのは灰。灰についての対応はどうか。私どもとしては、ある程度の灰が降ったとしても、変電施設なり、中枢施設なりに入らないよう、しっかりしたフィルターを設置しており、大丈夫だと判断している」。

 瓜生社長は、川内原発がある薩摩川内市では過去の降灰が確認されていないとも語り、社長に確認を求められた社員もこれに同意していた。

鹿児島 249.jpg 会見に先立って行なわれたとされる記者レクでは、同社の担当者が“偏西風”の影響によって、原発より東側にある桜島の降灰は川内では少ないと説明していたらしく、毎日新聞は31日朝刊でそのことを記事にしている。(写真は桜島)

 7月に施行される新たな原子力規制基準には、原発に影響を及ぼすと判断される 火山による影響評価の実施が盛り込まれているが、九電は「これ以上調査の必要はない」という。“偏西風”の影響で、桜島の火山灰が西に向かうことが少ないという理屈らしいが、そうなると、川内原発で事故が起こった場合の放射性物質の拡散予測との間に大きな矛盾が生じることになる。

 下は、いったん公表した16原発すべての放射性物質の拡散予測図に誤りがあったとして、原子力規制委員会が昨年12月13日に新たに公表した資料のうちの、川内原発に関するものだ。

予測.bmp

 修正された予測図(右側)によれば、川内原発を起点として、放射性物質のほとんどが海側(つまり西側)に向かって拡散する形となっているのが分かる。すると、九電のいう“偏西風”の影響は皆無ということになり、桜島の降灰についての九電側説明と明らか矛盾する。桜島の灰は東に、川内の放射性物質だけは西に―そんな都合の良い話があるとは思えない。

 会見ではこの点について追及されることはなかったが、九電の主張する“偏西風”が影響するのなら、川内原発で事故が起きた場合、放射性物質はその“偏西風”に乗って内陸側の東に向かうはずだ。修正された拡散予測が間違っているのか、あるいは九電側の主張に無理があるのかのどちらかだが、原発に関する情報がいかにいい加減なものかを物語る、分かりやすいケースとなった。九電の主張は信用できない。

否定されていた九電の活断層調査
 もともと、九電の原発に関する各種の調査には信頼性がない。問題の会見の冒頭、瓜生社長はこうも話している。「川内、玄海というのは、いわゆる太平洋プレート境界からも離れており、水深も浅い。起きた時の地震の大きさ、津波はある程度小さなものだろうと考えている」―じつはこの仮説、すでに国の機関から否定されているのである。瓜生社長の主張の根拠となっている九電の活断層調査を、国の機関が真っ向から否定していたことが、今年になって明らかとなっているのだ。

 今年2月、政府・地震調査研究推進本部が、「九州地域の活断層の長期評価」を公表した。地震を引き起こす恐れのある活断層について、同本部が3年間にわたって再評価するための議論を続けてきた結果だ。
 HUNTERが注目したのは、市来区間、甑海峡中央区間、吹上浜西方沖区間の3区間に分かれ、川内原発に近接して走る「市来断層帯」への再評価。公表結果が、明らかにこれまでの九電側調査と違っていたからだ。

 HUNTERが文部科学省に情報公開請求して入手した同本部地質調査委員会長期評価部会の分科会議事録によれば、平成24年に行われた分科会の会議で九電の地質調査結果を酷評、新たな断層の存在を指摘していた。

 市来断層帯に関する議論は、九州電力の資料を基に行われている。その結果、川内原発沖の甑海峡にある甑断層が北に延びる可能性と、内陸を走る市来断層(五反野川断層)で海域延長部に断層が延びることを確認。さらに詳細な検討については「原子力保安院の会議で行うべき作業」としていた。事実上、川内原発の安全性に大きな疑問が突き付けられた形だ。

 下は、この時の議事録の一部だが、九電の活断層評価について、厳しく批判しているのが分かる。(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

鹿児島.jpg

鹿児島 102.jpg

川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2) 議論の基礎資料となったのは、九電が平成21年に国に提出した『川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2)』(右はその表紙)。その九電作成の資料について、《解釈はとにかくひどいものである》。《最もひどいのは、地表面(海底面)にまで断層変位が及んでいるにも関わらず、断層の存在を全く無視していることである》と厳しく批判している。全否定と言っても過言ではあるまい。
 九電の原発に関する公表事項自体が、意図的に歪められていた可能性も否定できない。

 九電の調査とは、しょせんこの程度のものだ。傲慢な上にいい加減とくれば、原発再稼働など到底容認できるものではあるまい。



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