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福岡・中央保育園移転で新たな事実
運営法人側との協議記録は不存在 ― 隠蔽の可能性も

2013年6月27日 09:40

福岡市役所 福岡市が市内中央区で進める中央保育園(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転計画をめぐり、市側と保育園の運営を行っている社会福祉法人側との協議記録が作成されていないことが分かった。
 市側は「すべて口頭で協議した。記録文書はない」(保育課)としているが、ことの推移からみて双方の主張や指示内容を残さずに計画を進めるのは不可能。疑惑が持たれる土地取得の経緯を隠すため、意図的に記録を廃棄した可能性も否定できない。
 移転に関する両者間のやり取りを示す文書としては、法人側から市に提出された要望書が2枚残っているだけ。移転予定地取得までの過程を含め、事業計画の進捗状況が一層不透明なものとなった。(写真は福岡市役所)

市側と運営法人 「協議」は必須
 中央保育園の移転は、平成23年7月26日に行われた「市政運営会議」で決定された。それまで同一敷地内に併設された福岡市立中央児童会館と同園を合築して建替える方針だったものを、高島宗一郎市長の発案で、両施設を分離して整備する計画に転換したためだ。この時の市政運営会議の「議事概要」には、次のように明記されていた。
早急に現地近接の定員拡充が可能である用地にて整備する方針で、運営法人と協議を開始する》。(下がその議事概要。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

市政運営会議 議事概要

 会議のたたき台となった市こども未来局の「総括シート」にも、こう記されている。
定員の拡充が可能である候補地1にて整備する方向で、(社福)福岡市保育協会と協議を開始する》(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

総括シート

 「総括シート」の裏に書かれた市財政局の意見にも、運営法人との協議を義務付ける記述がある。
中央保育所整備にかかる運営法人への貸付の実施方法については、今後の運営法人との協議、整備費見込み等を踏まえ、財政局と十分に協議を行った上で、決定いただきたい》(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

市財政局の意見

 いずれも、中央保育園の運営母体である「社会福祉法人 福岡市保育協会」との協議を早急に始めることを要求する内容だ。市側は、昨年6月議会での移転地決定報告やその後の保育園側への説明などを経て、今日に至るまでの間に幾度となく法人側と協議を重ねてきているはずだ。協議が進まなければ、今年4月の土地買収も不可能だし、法人側への公的助成金額(貸付金額)も決められない。

協議記録不存在
 一体どのような協議を行ってきたのか?―――HUNTERが福岡市に対し、市と法人側とのこれまでのやり取りを示す文書を情報公開請求したところ、開示された文書は、平成23年11月と平成24年6月に法人側から市に提出された要望書だけ。前者は移転に際しての法人への「考慮」を求める要望書であり、後者は移転地の横で建設が始まっていたパチンコ店に対する指導を依頼する内容だった。その他の協議記録はない。確認したところ、市と法人側との協議はすべて口頭で行われており、文書やデータといった形では残っていないという。杜撰というより、隠蔽を疑った方が良さそうな話だ。

 市側の説明が事実なら、定員を150名から300名に増やした後の運営方法や、懸念されていた周辺環境への対応について、どのような話し合いを行ってきたかの検証ができないことになる。本件に関する市側の説明に、合理性を求めることが不可能な状態だ。市として説明責任を果たせないだけでなく、事業計画の信頼性そのものを揺るがしかねない事態と言えよう。

 土地取得だけが先行した結果とはいえ、主役であるはずの『子ども』の姿はどこにも見えてこない。



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