政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

核関連施設疑惑の南大隅町長 ― 辞められぬ理由
背景に歪んだ町政

2013年4月30日 08:25

鹿児島県南大隅町 森田俊彦町長 核関連施設の誘致にからむ黒い交際について、数々の嘘を重ねて町民を欺いてきた鹿児島県南大隅町の森田俊彦町長が、記者会見で、辞任しない考えであることを表明した。
 森田氏は、今月行われた町長選で、贈収賄が疑われる飲食接待やモーターボート譲渡、さらには疑惑の東電関係者への委任状といった一連の事実を否定して当選しており、有権者を欺いたことは明らか。そうした中で、前代未聞の居座り劇だ。
 改めて問題点を整理し、“辞められぬ理由”を探ったところ、同町が抱える構造的な問題が浮き彫りとなった。

嘘→証拠→謝罪→でっち上げの繰り返し
 今月26日、鹿児島市内で記者会見を開いた森田町長は、委任状についての記憶が不鮮明だととぼけたあげく、書かれた委任内容を破棄し、回収すると言い出した。自らの進退については、町長選挙で、核関連施設受け入れ拒否の訴えが町民の理解を得たとして辞任を否定しており、あくまでも町長の座にしがみつく構えだ。

 森田氏はこれまで、核関連施設誘致をめぐる数々の疑惑について、否定しては証拠を突き付けられ謝罪するという愚行を繰り返してきた。ただし、謝罪といっても形だけのもので、責任は他人に転嫁、“事件”を起こした本人は、何のけじめもつけていない。

 はじめに発覚したのはモーターボートにからむ疑惑だった。森田氏は当初、東電と深いつながりを持つオリエンタル商事(東京都千代田区)の原幸一社長からモーターボートを譲渡されたことについて、事実関係を否定。ボートは知人への貸し金のカタだったといういう話をでっち上げた。

 その後、問題のボートの「登録事項証明書」という決定的な証拠を前に、一転して嘘だったことを認める。この時、森田氏は「これ(モーターボート)はもう突っ返します」と発言していた。返せばことが済むという幼稚な発想だ。

 問題はそれから。3月の町議会における答弁では、モーターボートの授受だけを認め、飲食接待や委任状の存在を否定。さらに、疑惑発覚を町長選の対立候補が仕組んだものだと印象付ける発言を繰り返し、議論のすり替えを行ったのである。これほど卑劣な首長は見たことがない。

 下は、今年1月から町内の有権者に向けて配布された「森田としひこ後援会」の会報だ。「相手陣営から発信された不可解な情報」の箇所には、疑惑について《デマ、捏造、事実無根》と明記している。後援会ぐるみで町民を騙していた証拠だ。

有権者に向けて配布された「森田としひこ後援会」会報

 委任状をめぐる問題も同様の経過をたどった。森田氏は、モーターボート譲渡の嘘が明らかとなった折、原氏との間に密約があり、その件で一筆入れた覚えはないかと追及したHUNTERの記者に、「ないです」と断言。3月議会などでも委任状の存在について否定する発言を繰り返していた。結局、TBSの取材班に委任状の写しを突き付けられ、ようやくその存在を認めた形だ。

 3月のHUNTERの報道以来、森田氏の話してきた全てが嘘だったと証明されたことになるが、当人の辞書には「辞任」という言葉がないらしい。「軽率だった」、「前町長も(委任状を)書いていた」・・・・。騒ぎになって、記者会見まで開きながら、この程度の言葉しか出てこない森田氏。嘘をついて町民を騙したことへの反省はなく、自らの政治的責任にも一切言及していない。前町長をはじめ他者に責任を押し付け、過疎化が進む町の現状が悪いと言わんばかりの姿勢は、時代劇の悪代官を彷彿とさせる。政治家としてというより、まともな社会人としての自覚が欠如しているということだろう。

 一貫しているのは、嘘をついた後で証拠を示され謝罪、他者に責任転嫁するなどして開き直る、というパターンだけだ。盗人猛々しいとはまさにこの町長にこそ相応しい言葉である。
 それではなぜ、これほどまでに町長の椅子にこだわるのだろうか?

辞められぬ理由 背景に歪んだ町政
 町で囁かれているのは、町政トップが替わって不正が暴かれることを恐れる利権集団が、町長の辞任を引き止めているとの見立てだ。

 オリエンタル商事の原社長に委任状を渡していたのは、森田氏1人ではない。報じてきた通り、税所篤朗前町長、漁協の組合長に加え、大村明雄町議会議長も闇交渉に参加していたことが分かっている。大村議長は、8年もの間議長を務めてきた町の実力者で、原氏とも昵懇の仲。森田町長を支える中心的人物とも見られている。二元代表制の下にあって、首長と議長がつるめば怖いものなし。かつての核関連施設誘致促進派が町政を牛耳っているのが現状だ。

 この大村明雄という議長も、森田氏同様に往生際が悪い。3月議会のこと、HUNTERの報道をもとに質問に立った町議が、記事にある《原さんはしょっちゅう役場に来ては議長室に入り浸りだった。役場側では私ではなく、助役が原さんに応対していた。だから議員も役場の職員も原さんのことはよく知っている》という税所前町長の話を引用した直後、議長が「入り浸りとはどのくらいの頻度か。週に4・5度ということだな」などと、しつこく質問者を追及したのである。議長は日本語が理解できないらしい。

 入り浸るとは“頻繁に出入りすること”、 “居続けること”であって、回数は関係ない。前町長は、原氏が度々議長室を訪れていたことを実際に見聞していたため、このような表現を使ったまで。問題は、議長と原氏が役場内で何度も会っていたという事実なのだ。森田氏もこの議長も、問題をすり替えて逃げるのを常套手段としているようだが、二元代表制の下、町と議会のトップがこの程度なのだからタチが悪い。この2人に、町の有力組織である漁協や建設業界が加われば鬼に金棒、逆らう人間を排除することで歪んだ町政を常態化させているのである。

 南大隅町には「情報公開条例」が制定されておらず、町長や議長が何をやってきたのか、外部から検証することはできない。こうした中、町長、議長をはじめ町の有力者達に、公費を使った不適切な支出や補助金不正があったとの指摘が出ている。事実なら、町長が替わることで真相が明かされる可能性が高くなる。困る人間は、森田氏を引き止めるしかない。確かに、常識外れの居座りにも説明がつく。噂とはいえ、あながち的外れな話ではないのかもしれない。

求められる町民の覚悟  
 モーターボートの授受、飲食接待、そして委任状・・・・・。はじめに疑惑を否定し、証拠を突き付けられては、次々と前言を翻す森田氏とその嘘つきを支える利権集団。彼らに、町民を欺いた責任をとる義務があるのは言うまでもない。しかし、「正義」が守られるかどうかは、町民の意思にかかっている。求められているのは、正しい町政を取り戻し、次代に引き継ぐという強い町民の覚悟ではないのだろうか。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲