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福岡市長宅は対象外 計画停電への疑問 

2012年8月 8日 11:00

20120808_h01-01t.jpg 昨日7日は立秋、暦の上では「残暑」となったが、暑さが衰える様子はない。夏場の電力需要がピークを迎えるのはこれからとされるが、九州電力による計画停電について、多くの疑問が残されたままとなっている。

地域独占企業の無責任
 下の写真は、いずれも福岡市内、左がコイン駐車場、右がマンションのエレベーター内に掲示された計画停電時についての注意書きである(掲示はそれぞれの管理会社による)。

計画停電時の注意1  計画停電時の注意2

 計画停電が実施されたら、エレベーター内に閉じ込められ、車も出せなくなるということらしいが、事情を知る地元住民は別として、計画停電を知らずに訪問してきた人にとっては迷惑極まりない話である。
 九電が計画停電の概要を発表して以来、九州のいたるところにこうした注意書きが貼られているのだが、その内容に首をかしげる人は少なくないだろう。

 もともと九電は、計画停電の周知方法について《記者発表するとともに、ラジオCMおよび当社ホームページでお知らせいたします》としているが、これだけですべての市民に情報が伝わるとは思えない。
 ラジオ・テレビやパソコンと無縁という人もいるだろうし、たまたま放送された時間帯を仕事や家事に忙殺される場合もあるからだ。

 新聞を購読している家庭でも、記事を読むのが九電が停電を計画している第1時間帯 の「 8:30 ~ 11:00」(停電実施は9:00)に入ってからなら、間に合わないことになってしまう。

 九電は、マスコミ向けの発表さえやっておけば責任を果たしたことになると考えているのだろうが、傲慢とのそしりは免れまい。
 「独居老人宅に対する特別な案内はしていません」(九電のコールセンター)という弱者無視の姿勢なのだから、その無責任体質は押して知るべしである。

 最悪なのは、計画停電が実施されていることを知らずに、該当地域内のエレベーターを利用したり、駐車場に車を入れた場合だ。閉じ込められるは、車は出せないはでは泣くにも泣けない。

 訪問先が計画停電の地域に当たっているかどうかなど、よほど綿密に行動予定を立てない限り分からない。つまり、マンションや駐車場の管理者に「計画停電中」の貼り紙でも出してもらわなければ、悲劇を止めることはできないのだ。多くの物件を管理する企業だった場合、そこまで手が回るとは思えないが・・・。

福岡市長宅が対象外の理由は?
 ところで、計画停電の対象地域を決めたグループ割りについては、いまだに分からないことが多い。とくに計画停電の対象から外れた地域のケースについては、その理由が判然としないものがあるのだ。

 例えば、高島宗一郎福岡市長の自宅がある西区西の丘地区(1丁目~3丁目)は、1丁目の一部を除き計画停電の対象外となっている。九電にその理由を聞いたところ、詳細は答えられないという。

 九電は、停電の対象外となる施設について、今年5月に政府が公表した「セーフティネットとしての計画停電」の考え方に基づきき設定したとしている。
 政府の考え方というのは、《緊急かつ直接的に人命に関わる医療機関等や、国の安全保障上極めて重要な施設、国や経済社会の基幹機能を有する施設を計画停電の緩和対象とする》というもので、国から指示があった具体的な施設として、以下を列挙している。

  • 医療機関(救命救急センター等の救急医療機関、周産期母子医療センター、災害拠点病院等)
  • 国の安全保障上極めて重要な施設
  • 国の主要な機関、道府県庁、市町村役場、区役所の本庁舎、道府県警察本部・警察署、消防本部・消防署等
    上記のほか、技術的に可能な範囲で鉄道・航空、金融システム等についても通電。

 高島市長の自宅近くには大きな病院があるが、同病院の住所は西区拾六町で、計画停電対象地区と対象外とが混在している地域だ。
 また、近くには福岡市西部清掃工場もあるのだが、これまた「大字拾六町」と違う自治区である上、計画停電対象地区と対象外とが混在している地域となっている。

 結局、なぜ市長の自宅近辺(西区西の丘2丁目・3丁目)だけがスッポリと計画停電の対象外となっているのか分からない状況だ。

 九電は、計画停電が配電線単位で実施されるため、配電線路が異なる場合は、同じ地域(町内)であっても、サブグループが異なったり、対象地と非対称地が混在することがあるとしている。しかし、公平性を保つためには、対象外となった理由についても、きちんと説明する義務があるのではないだろうか。

 官民挙げて節電に励む中、原発抜きの電力供給は、いまのところ余裕があるとされる。九電は「原則、計画停電は実施しないというのが当社の方針」としているが、計画停電への疑問は尽きない。



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