玄海(佐賀県玄海町)と川内(鹿児島県薩摩川内市)、ふたつの原発を有する九州電力は、「やらせメール」や「仕込み質問」の事実が発覚したことで社会的信用を失墜させた。
信頼回復を目指し設置したはずの第三者委員会(元委員長:郷原信郎弁護士)との間にも確執が生じ、真相究明は不十分なまま現在に至っている。
すったもんだの末、会長・社長は交代したが、電気料金を原資とする豊富な資金力で九州の政・財界を牛耳ってきた同社の力は衰えておらず、政治やメディアによる追及も尻すぼみ状態だ。
夏の電力需要をまかなうため官民挙げて節電に取り組む中、同社が保有する接待施設「城南クラブ」と黒塗り乗用車使用の実態を取材した。
「城南クラブ」
福岡市中央区。大きな道路から少し入ると、緑に囲まれた一角にその建物は在った。
かつては炭鉱経営者が所有し、文化財としての価値も高いとされる木造建築の家屋こそ、九電が重要な客を招く接待施設「城南クラブ」である(下の写真)。
ここに招かれるのは、政治家や財界人、著名な文化人などに限られ、会長、社長といった九電幹部が応対するのだという。
山崎広太郎元福岡市長が、初当選時に対立した福博の財界と手打ちを行ったのも「城南クラブ」だったし、昨年の福岡知事選では、候補者選びを主導した松尾新吾前九電会長や小川知事などが度々ここに集まったとされる。
政界の舞台裏を知る「城南クラブ」は、九電の"力の象徴"と言うべき施設なのである。
黒塗り乗用車
一方、黒塗りの車もまた、権力の象徴である。
九州電力本社の地下駐車場。ズラリと並んだ黒塗りの車がこの会社の体質を表していると言えよう。
利益の5割以上を家庭用電力から得ている公益企業の幹部が、なぜ黒塗りの車に乗らなければならないのか分からない。
「やらせメール」や「仕込み質問」の背景にあるのが市民を見下した同社の体質であることは言うまでもない。市民を騙すこと、情報を隠すことに対する感覚が鈍くなっているのも確かだ。権力を操ることに慣れすぎたせいである。
同社に求められているのは、そうした姿勢を改めることのはずだが、依然として同社は権力装置ともいえる接待施設や黒塗り乗用車の使用を続けているのである。
変わらぬ九電
HUNTERが城南クラブと黒塗り乗用車に注目したのは、一連の騒ぎを経て九電の権力体質が変わるかどうかを確認したかったからに他ならない。
"政治家や財界人への接待などやめるべきだし、九電幹部が黒塗りの車に乗る必要などないはずだ"
取材の趣旨を話した上で、城南クラブと黒塗り乗用車の使用状況を尋ねたところ、九電側の回答は次のようなものだった。
【城南クラブについて】
昭和40年に取得し、社外対応施設として活用している。取得の経緯については個別の契約に関する事項なので回答を差し控える。
【黒塗り乗用車について】
本店で保有している黒塗りの車は、送迎用として必要最小限をリース契約しているものである。詳細については確認していない。
残念ながら、木で鼻を括ったような回答は同社の体質が何も変わっていないことを示している。これでは原発の安全性や電力不足に対する九電側の主張を信用するわけにはいくまい。
もちろん、接待施設や黒塗り乗用車の運用費を電気料金からまかなうことが容認されるとも思えない。