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垂れ流された事業費
福岡県直方市 上頓野産業団地を追って(2)

2012年6月 4日 09:20

gennpatu 23339246644.jpg 通常、赤字になることを前提に土地分譲計画を立案する経営者などいない。しかし、財政的に決して豊かとは思えない地方自治体で、それが現実となっていた。福岡県直方市の上頓野産業団地造成事業である。

 造成した分譲地のうち、1区画だけは売れたというが、分譲予定価格を下回る金額での契約。元を取るどころか、赤字を増大させていた。計画が甘かったというより、もともと無謀な公共事業だったのである。

設計関連費用だけで1億7,000万円 
 直方市が開発した上頓野産業団地は、平成19年10月から造成が始まり平成22年7月から分譲を開始した。3ブロック(A用地、 B用地、C用地)に分けられた上頓野産業団地の面積と分譲予定価格は次のとおりである。

・A用地 有効面積16,000㎡(分譲面積 24,300㎡)→1億3,600万円
・B用地 有効面積27,400㎡(分譲面積 31,500㎡)→2億3,300万円
・C用地 有効面積40,700㎡(分譲面積 54,900㎡)→3億4,600万円

 約20億円の公費投入額に対し、完売しても7億円程度の収入しか得られないという不可解な同事業。完売することより、産業団地を造ることに注力したようで、直近の八幡インターチェンジから同産業団地までの案内看板さえ設置されてこなかった。
 売却が進まぬ状況のなか、昨年7月になってようやく契約にこぎつけたB用地の販売価格は2億1,932万円。予定価格を下回る形である。もちろん、差額分のしわ寄せも市民に回される。

 全体が不透明な造成事業だが、計画段階から分譲開始までの過程にも疑問が付きまとう。支出の内容を検証すると、野放図に垂れ流された公費の額と、杜撰な事務管理の状況が浮かび上がる。

 平成8年に直方市土地開発公社が土地を取得して以来、公社や事業を引き継いだ形の市が委託した設計関連業務だけでも次のような状況で、設計業者への支出総額は1億7,206万4,450円に上る。

・平成 9年 金剛山造成調査測量設計業務 9,060万6,600円
・平成11年 金剛山造成設計業務 399万円
・平成17年 金剛山産業団地進入道路新設工事設計業務 626万円
・平成18年 金剛山産業団地進入道路新設工事測量・設計業務委託 564万3,750円
・平成18年 金剛山産業団地造成設計委託 1,445万8,500円
・平成19年 上頓野産業団地造成工事施工管理業務委託 1,732万5,000円
・平成20年 上頓野産業団地造成事業に伴う水道設備設計業務委託 623万3,850円
・平成20年 上頓野産業団地造成事業に伴う法面設計委託 194万9,850円
・平成21年 上頓野産業団地内線道路災害復旧測量設計業務委託 553万4,550円
・平成21年 上頓野産業団地確定測量・開発完了申請業務委託 1,616万7,900円
・平成22年 上頓野産業団地水道設備実施設計業務委託 308万7,000円
・平成22年 上頓野産業団地確定測量・開発完了申請に伴う測量業務委託 80万7,450円

設計委託はすべて同一業者へ
 直方市の設計業者への業務委託には、いくつかの問題点があった。

 まず、前述の12件すべてが同一の業者に委託されていたことだ。
 平成9年「金剛山造成調査測量設計業務」同11年「金剛山造成設計業務」同19年「上頓野産業団地造成工事施工管理業務委託」の3件は入札だったが、なぜか3件とも東京に本社を置く設計業者「株式会社オオバ」が落札。他の9件はすべて随意契約で同社に業務を委託していた。安易に同一企業への業務委託を繰り返していたことは明かで、当時の担当職員でさえ、入札に付すべき案件があったことを認める発言をしていた。

 設計業者となじみがあり過ぎたせいか、平成11年の「金剛山造成設計業務」では、"完成届け"の確認がないまま、支出を行っていたことが明らかになっている。
 支出の前提となるべき "完成届け"が存在しておらず、探したが「ない」という。つまり、はじめから無かったということだ。
 成果物としての設計図書は存在するものの、事務規定に抵触することは事実で、この点については直方市の財政課も率直に事務管理上の誤りを認めている。

 杜撰だったのは設計関連だけではない。造成工事費をめぐっても当初の契約金額を大きく上回る結果となり、市の財政を益々悪化させる状況を招いていた。

つづく



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