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がん治療施設 巨額補助金への疑問
支出決めた福岡知事の"鶴の一声"
大震災利用した佐賀県

2012年6月 5日 11:10

 佐賀県が重点施策として建設を進める「九州国際重粒子線がん治療センター」(サガ ハイマット)をめぐって、不透明な資金調達の実態が浮き彫りとなった。

 福岡県(小川洋知事)は今年、資金難に陥った同センターの運営財団に5.9億円の補助金を支給することを決定し、平成24度予算に計上していた。しかし、福岡県への情報公開請求を通じ、小川洋知事の口頭による了承だけで多額の補助金支出が決められていたことが分かった。
 担当部署である県保険医療介護部内にも、方針決定時の決済文書は存在しない。

 さらに、補助の依頼は、麻生渡前知事時代の平成23年2月にも行われていたことが判明。早い時期から運営財団の資金繰りが悪化していたことが分かったほか、佐賀県側がその後に起きた東日本大震災を理由に福岡県から補助を引き出していたことも明らかとなった。(写真は福岡県庁)

破綻した資金計画
 同センターの運営主体は「公益財団法人 佐賀国際重粒子線がん治療財団」。平成25年春のオープンを目指し、九州新幹線「新鳥栖駅」前での建設工事が進んでいる。
 約150億円とされる初期投資の資金は、佐賀県が20億円の補助金を出すほか、民間からの寄附88億5,000万円と出資金などの41億5,000万円でまかなう計画だった。

 ところが、民間からの寄附は思うように集まらず、財団の資金調達計画に狂いが生じる。同センターを誘致した鳥栖市が分担する予定とされた寄附などが集まっていないのである。
 鳥栖市は、同センターの誘致にあたって25億円の寄附を集めることを表明していたとされ、佐賀県はこれをもとに資金計画を立てている。しかし、鳥栖市が集めた寄附は9億円にも達しておらず、16億円は未達成。計画が狂うのは当然だ。
 不足分の責任分担をめぐって、同市と佐賀県の間に不協和音が生じているほか、資金計画の核となる九州電力からの寄附も不透明な状態となっている。

 平成22年4月、九州電力は同財団に対し複数年で39億7,000万円の寄附を行うことを発表していたが、福島第一原子力発電所の事故によって原発を取り巻く状況が大きく変化。火力発電所用の燃料費増大や、"やらせメール事件"などで同社の経営基盤も悪化し、予定通り寄附が実行されるかどうか分からない状況となっている。財団の資金計画は破綻しているのである。

異例の補助に"鶴の一声"
 こうした中、今年1月に同財団と古川康佐賀県知事が、小川洋福岡県知事に補助への協力を要請。福岡県は、これに応える形で要請された5.9億円の満額を支出することに決め、平成24年度予算に計上していた。他県の計画に巨額の補助金を出すのは異例だ。

 HUNTERは先月、福岡県に対し補助金支出を決めた過程を示す公文書の開示を請求。佐賀県側からの補助要請文および添付書類のほか、福岡県の内部文書として予算策定時の説明資料や知事への説明用の資料が開示された。
 しかし、佐賀県側の要請に応じることを決めた時点の決済文書や知事の決済を示すものは不存在。県内部で十分な検討がなされた形跡はない。

 予算化を担当した県保険医療介護部は、知事への説明用の資料しか残っておらず決済文書はないとしたうえで、知事が説明を了承したため佐賀県側の要請どおり満額の5.9億円を補助することになったとしている。不透明な公金支出は、小川知事の"鶴の一声"で決まった形だ。

大震災利用して補助金要請
 gennpatu 1864410165.jpg福岡県が開示した文書の中には、小川知事が補助金支出を決めた前年、つまり平成22年2月8日に、同財団と古川知事から麻生渡前福岡県知事に提出された補助要請文があった。この文書には大きな意味がある。(右の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER)

 麻生知事への要請文には、「5.9億円」という具体的な金額は記されておらず、《ご賢察の上》(要請文の表現)協力をいただきたいと結んでいる。同財団の資金計画が、昨年はじめ頃には隣県に助けを求めなければならないほどの状態になっていたことを示しているが、東日本大震災後の経済状況とは関係なかったということだ。

 一方、小川知事宛の要請文は前年に麻生前知事に出されたものとほぼ同じ内容。違っているのは「5.9億円」と金額が明記してあることと、資金不足の理由として《東日本大震災の発生や歴史的な円高など想定外の経済状況の変化》(要請文中の表現)を挙げている点だ。(下に文書の一部。赤いアンダーラインはHUNTER)

 つまり、佐賀県側は、前述した鳥栖市の寄附集めが難航しているという事実には触れず、東日本大震災を補助金要求の利用付けに使ったに過ぎない。被災者を愚弄する行為と言われても仕方があるまい

gennpatu 18644101667.jpg

 資金計画が破綻した理由の第一が、鳥栖市が寄附を集めきれていないことだとすれば、福岡県民は鳥栖市と佐賀県の杜撰な計画の尻拭いをしたことになってしまう。明らかに筋違いの支出であり、福岡県民の理解を得ることは難しいだろう。
 補助金支出を決めた小川知事の判断や、大震災を利用した佐賀県側の手法には、改めて批判の声が上がりそうだ。



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