自民党の総裁選に関する報道が大きく取り上げられる一方、振り向きもされない国民民主党の代表選。同時進行だというのに、有権者の反応は皆無に等しい。
衆参で58人もの国会議員を擁しながら、支持率0%台の同党。よほど求心力がないのか、「自己破産」した人物を、来年春の県議選候補に擁立し、関係者の顰蹙を買っている。
■自己破産した人物が国民推薦で県議選に
問題の人物とは、来年春の統一地方選挙で八幡東区から県議選に出馬予定の新人K氏。国民民主党福岡県連(代表:吉村敏男県議会議員)の推薦が決まっている。
旧民主党関係者によれば、同氏は平成24年に「自己破産」しているという。官報で確認したところ、確かに平成24年12月5日に、同氏の自己破産が公告されていた。(*官報の画像加工はHUNTER編集部)
自己破産して債権者に迷惑をかけた人物が、政党推薦で県議になるなど聞いたことがない。調べてみると、他にも不可解な点が浮上する。
■個人事業なのに「会社概要」
ネット上で確認したK氏のフェイスブックのプロフィール欄には、「〇〇コーポレーションを管理」とある。同氏がフェイスブックに投降した文章にも、「弊社」という言葉が頻繁に出てくる。「〇〇コーポレーション」を検索したところ、出てきたのが下の画像。どうみても企業のホームページだ。ポスティングを主業務としており、「会社概要」のページも、しっかりある。ところが、会社登記を確認したところ、サイトに表記された住所地も含め県内に該当する会社はなかった。
さらに、「〇〇コーポレーション」のサイトにある新着情報には、K氏の“街宣”の様子がアップされていた(下の画像参照)。一体、これはどういうことか――。
■K氏を直撃
疑問点は二つ。
・自己破産した人物が政党の推薦を受け、堂々と公職の候補者になることが妥当なのか?
・登記されていないものを「会社」と称することが許されるのか?
まずは、K氏本人に真意を尋ねた。
記者:自己破産されているというのは事実で間違いないか?
K氏:はい、そうです。記者:国民民主党側もその事実を承知していると聞いているが、間違いないか?
K氏:はい、結構です。記者:単刀直入に聞くが、自己破産した人が、公職の候補者になるというのは不適切だとは思わないか?
K氏:えーっと、法律に則って、まあ、そういうことが過去にありました。これは事実です。そのあと、いろいろな仕事をして、いまに至っておりますが、まあ、そういうことがあったことは非常に、社会的に厳しい目で見られることは私も承知しておりますけども……。まあ、地域とか社会に貢献するという意味で、一般的な普通の仕事に就くこと、会社を経営すること、まあ、そういうことと政治家をやることは同じかな、と思っておりまして……。記者:政治家と普通の仕事とは違うのではないか?人に迷惑をかけてはいけない仕事ではないのか?
K氏:その通りです。記者:しかし、自己破産の時に、人に迷惑をかけたのではないか?
K氏:まあ、その方(債権者)についてはそうですね。自己破産して、債務をお支払いすることはなかったですね。記者:債務を支払わなかったというのは、一人だけか?
K氏:そうです。記者:他には?
K氏:ないです。記者:なぜ自己破産したのか?
K氏:連帯保証人になって、私が……。記者:連帯保証?元本保証ではないのか?金融取引の元本保証ではないのか?
K氏:まあ、保証人ですね。記者:何の保証人か?
K氏:株式取引をされた方が、保証をして欲しいということですね。記者:元本保証ではないのか?
K氏:元本保証……?記者:投資を呼びかけたのではないか?
K氏:彼(債権者)が投資をしたいと言われたんで、まあ、紹介しましたよね。記者:紹介しただけなら、保証する必要はないだろう。
K氏:まあ、そうですね。ただ、彼は言ってました。『お金を請求する気はありません』、と。記者:お金を請求する気がなければ、保証人はいらないが?
K氏:だから、私も辻褄が合わないなと思いながら『ああ、そうですか』ということでした、その時は。記者:取材結果と違うことを話しておられるが?
K氏:彼と私にしか分からないことで、まあ、裁判の記事には残っていると思いますが……。記者:自己破産は間違いないか?
K氏:はい、そうですね。記者:自己破産したあなたが、公職の候補者になることには何の問題もないということで良いか?一般の仕事に就くのと同じだと言われたが。
K氏:まあ、世に立つ仕事をするということでは、一般の仕事であっても政治家であっても同じかなと……。記者:世に立とうとする人間は、自己破産などしないだろう。
K氏:まあ、そうですけど、悔い改めてということで……。記者:ところで、〇〇コーポレーションというのは、あなたの会社か?
K氏:はい、そうです。記者:役員か?
K氏:代表です。まあ、個人事業なので。記者:個人商店?
K氏:そうですね。記者:登記されていないということでいいか?
K氏:役員は誰もいません。記者:登記していないということでいいか。
K氏:登記と申しますと?記者:法的な株式会社でも合同会社でも、合資会社でも合名会社でもないのか、ということを聞いている。登記の意味が分からないのか?
K氏:えーと、そのへんの法律的なことはちょっと、分からないですけども……。記者:大丈夫か、あなた。呆れた。本当に選挙に出るのか?
K氏:いや、あの……。
自己破産した人間が、“選挙に出れない”という法的な縛りはない。しかし、破産して債権者に迷惑をかけた人間が、わずか6年足らずで公職の候補者になれるかというと、世の中それほど甘くはあるまい。社会通念上は、やはりアウトだ。話を聞く限り、K氏が反省しているとは思えなかった。ハッキリ言って、ふざけている。
問題は、K氏の「〇〇コーポレーション」が、会社でもないのにネット上であたかも「会社」であるように偽装していること。これは、法的にはギリギリの行為。明らかにグレーだろう。周辺を取材したところ、K氏は以前からポスティングの仕事をしており、個人事業なのに「会社」を偽装していたという。こうした人物に、県会議員になって税金で飯を食う資格があるのだろうか。
■関係者から「立憲潰し」の指摘
国民民主党は、K氏が自己破産していたことや、会社を偽装したホームページのことを知っていたのか――。念のため同党福岡県連に確認を求めたところ、幹事長を務める福岡市議は「常任幹事会にもそのこと(自己破産のこと)は上がっていましたが、ホームページのことは知りません」という回答。つまり、自己破産の事実を知りながら、K氏の推薦を決めたということになる。
ある県政界関係者は、次のように話している。
「国民民主の県連代表は、旧民主党県連の実力者だった吉村県議。Kの推薦は、北九州の岩元一儀県議と吉村県議が主導して決めた。支持基盤が重なる立憲民主党の候補者が、当選できないように数多くの候補者を立てることが狙いだ。いわば立憲つぶしのための粗製乱造。当落は関係ない。そうでなければ、自己破産を知っていて、推薦など出せるはずがない。こんなことをやっているから支持率が下がるんだ。有権者をなめている」