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福岡教育大学の危機 ~経営協議会を「日本会議」関係者が侵食(上)

2018年8月 2日 07:35

福教大.png 教育行政が前代未聞の不祥事に揺れている。相次ぐ文部科学省官僚の逮捕、懲戒処分――。国民の教育を司る役所から、規範意識が消えたのは確かだ。
 行政を監視するはずの政治はといえば、森友学園や加計学園の問題が象徴しているように、「官邸主導」で役人を恫喝し、彼らが忖度せざるを得ない状況を作り出した。腐った政治が、行政をも蝕む。
 そうしたなか、地方の教育現場も、歪んだ思想を持つ勢力に侵食され始めている。(写真は福岡教育大学)

■不祥事続出の文科省
 7月4日に受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたのは、文部科学省科学技術・学術制作局長の佐野太容疑者(58)。東京医科大学(東京都新宿区)を、文科省の私立大学支援事業に選定させることの見返りに、自分の息子を東京医大に合格させた「裏口入学」容疑がかかっている。医学部人気が高止まりするなか、金銭ではなく職務上の権限を取引材料にしたことはまさに「前代未聞」だ。

 さらに同26日には、文科省前国際統括官の川端和明容疑者(57)が収賄容疑で逮捕された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)に出向中の2016年、医療コンサルタント業者の依頼で宇宙飛行士を講師として派遣する際に謝礼を受け取り、金額にして約140万円相当の接待などを受けていたとされる。人気の高い宇宙飛行士の講演について、謝礼や接待を受けて優先的に取り扱ったというから、もはや倫理観はブローカー並みに落ちるところまで落ちた。

 30日には、40代の文科省職員が懲戒免職された。京都教育大学に出向中の2015年10月ごろから、学生保護者の教育後援会費約770万円を横領した疑いだという。朝日新聞などによると、同職員は横領した後援会費を「ゲームなどの課金」の支払いに充てたという。

 たった1カ月の間に局長級が2人も逮捕される「異常」事態。文科省が狙い撃ちされているようにも見えるのは、前川喜平前事務次官が積極的に官邸批判を行っていることと無関係ではないだろう。面目をつぶされた官邸による、「意趣返し」「リーク」と見ることもできる。

 しかし、教育行政をめぐるニュースが近年、きな臭いものばかりだったのも確かだ。

  • 国家戦略特区を利用した、加計学園の獣医学部新設(愛媛県今治市)にまつわる疑惑(2017年募集、2018年開学)
  • 森友学園(大阪市)が、開学予定の小学校用地として2016年6月に国有地を格安で購入した疑惑。

 この二つの疑惑については国会でも激しい論戦が繰り広げられたが、さらに医学部新設をめぐっては、恣意的な認可が行われた疑惑もある。

 2017年4月に、医療法人社団高邦会(福岡県大川市)によって新設された国際医療福祉大学医学部(千葉県成田市)は、東日本大震災による復興特例(東北医科薬科大学/2016年医学部開設)を除くと38年ぶりの医学部新設だった。しかし、人命に直結する資格の教育課程にしては、設置認可までの行程はずさんで疑惑だらけ。加計学園と同様に、たった1週間の公募期間、さらに1週間で設置事業者決定というあわただしさで、あまりに「高邦会ありき」に写るスケジュールに「東の加計学園」とも噂された。「医療界の政商」の異名を持ち、安倍首相や菅義偉官房長官とも近い高邦会の会長、高木邦格氏の政治力が影響したとする見方は、あながち的外れだとは言えまい。

■福岡教育大学に日本会議の影
 加計学園、森友学園の両疑惑は、安倍首相の「お友達」であることが行政現場に強く影響を与えたことが背景にあるとみられている。さらに森友学園の国有地売却をめぐっては、売却交渉を記録した決裁文書にあったウルトラ右翼集団「日本会議」の名前が消されていたこともわかっている。

 日本会議は「悲願」とする憲法改正の「地ならし」を目的に、教育現場への影響力を重視しているといわれる。いま、そうした教育現場への介入を実証するような動きが、福岡教育大学(福岡県宗像市)で起きている。

 福岡教育大学(以下、福教大)は、教員養成大学として長い歴史を持ち、とくに九州内の教育現場に多くの教員を送り出してきた。「福教大閥」は教育行政にも影響力を及ぼしており、福教大を押さえることは教育現場を取り仕切る体制を敷くための重要な布石となる。

 その福教大は、2016年4月に就任した桜井孝俊学長の選出をめぐって、揉めに揉めた。桜井学長の前任の寺尾愼一学長時代から続く「改革」路線に対して、一部教員から反発の声があがったのだ。

 教育研究費を削減し、カリキュラムでは教員免許を取得しない「ゼロ免課程」を廃止するなど、学生の意向を無視した「改革」を強行し、運営面では寺尾前学長を批判した教員を冷遇、「恐怖政治的」(福教大職員)を敷いて学内自治を弾圧した。

 学長選前の3月には寺尾前学長の解任要望書が出され、教員の半数にあたる84人が署名したが、寺尾前学長は副学長として残り、「寺尾派」とされる桜井学長と共に改革を続ける方針を表明している。

 そして今年4月、福教大は大学運営の最高機関である経営協議会メンバーを発表した。そこに記されたメンバーに、ある教員は「ここまで露骨に進めるのか……」と息を飲んだ。

(つづく)



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