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乗っ取られた? 福岡教育大学 ~経営協議会を「日本会議」関係者が侵食(下)

2018年8月 3日 10:03

 学長による「独裁」ともいえる法人運営が教職員からの反発を生んでいる、国立大学法人福岡教育大学(以下、福教大)。大学の頂点に君臨するのは、櫻井孝俊学長。独裁的運営を始めた寺尾愼一前学長の後継とされ、非民主的大学運営はそのまま継承されている。
 その福教大の経営協議会の委員に、複数の日本会議関係者が就任していることがわかった。日本会議は憲法改正を目指すウルトラ右翼団体で、森友学園問題でも改ざんされた決裁文書に名前が登場していた。
 経営協議会には日本会議関係者のほか、文科省天下り問題で話題になった人物や、獣医学部新設について「安倍首相のお友達」であることが強力な後押しになったとされる加計学園・加計孝太郎理事長につながる名前も入っている。

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 福岡教育大学広報誌『JOYAMA通信』(2016年11月号)より。向かって左から、黒見義正・福岡ECO動物海洋生物学校長、尾崎春樹・学校法人目白学園理事長、櫻井孝俊学長、後藤靖子・JR九州常務取締役(現在は経営協議会学外委員を退任)、学外委員の城戸秀明・福岡県教育委員会教育長

■教育勅語を重視―志明館小中学校の発起人が学外委員に
・「朝鮮半島の植民地統治は事実に反する」発言~加計学園―安倍首相人脈
理事・副学長(総務・財務担当) 嶋倉 剛

 2008年5月、当時の江島潔下関市長は、嶋倉氏を教育長として招聘。同年、補助金増額の陳情に訪れた山口朝鮮学園の理事長と保護者に対して「朝鮮の植民地統治は歴史的事実に反する」と発言した。この発言は全国ニュースで伝えられて問題になったものの、江島市長は「教育長に対して謝罪や撤回を指示する考えはない」とかばい続けた。

 その江島氏は、加計学園さらに安倍首相との密接な関係も取りざたされている。江島氏は95年から4期14年、09年まで下関市長を務め、13年に参議院議員に転出。市長を辞めて以降数年間、客員教授を務めていたのが倉敷芸術科学大学(倉敷市)だった。倉敷芸術学園の設置者は学校法人加計学園で、江島氏と安倍首相は父親の代からのつながりがあり、地元政界の関係者は「安倍首相が江島氏を加計学園に紹介したのでは」と噂しているという。

・『週刊文春』天下り官僚特集で、名指しで批判された人物
(学外委員)学校法人目白学園理事長 尾崎春樹

 2017年に問題となった文科省官僚の天下り問題の中で、『週刊文春』に名指しで批判記事が出た元文部官僚。目白学園は、文科省から多くの天下りを受け入れた大学としても知られる。

・文科省天下りシステムのドンが顧問を務める学園、福岡校校長
(学外委員)学校法人慈慶学園 福岡ECO動物海洋生物学校長 黒見義正

 校長を務める福岡ECO動物海洋生物学校の母体である慈慶学園は、文科省天下り事件の脱法システムを仲介した文科省人事課OB・嶋貫和夫氏が、退職後に特別顧問を務めた学校法人。慈慶学園は大学新設を目指し、嶋貫氏を学長として文科省に設置申請を行ったが頓挫し、現在は大学設置自体を見送っている。

・「九州の森友学園」志明館設立をけん引~支援者は日本会議福岡会長
(学外委員)宗像市長 伊豆美沙子

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谷井博美 前宗像市長 伊豆美沙子 宗像市長
(宗像市HPより)

 伊豆氏は、今年4月22日投開票の宗像市長選に立候補し、次点に大差をつけて当選した。伊豆氏は県議時代から日本会議地方議員連盟の一員であり、実家は宗像の造り酒屋「伊豆本店」。神社本庁の中でも「位が高い」とされる宮地嶽神社に御神酒を納めている。

 伊豆氏は早くから、福教大経営協議会の前学外委員である谷井博美前宗像市長の後継市長と目されてきた。谷井前宗像市長は、櫻井現学長を選考した元学長選考委員の一人で、谷井氏の支援者には松尾新吾氏(日本会議福岡会長、元九州電力会長)が名を連ねる。

 また谷井氏は、教育勅語に基づいた教育を目指す小中一貫校「志明館」の新設計画に対して、宗像市河東の広大な土地を無償提供。しかし、森友学園問題が国会で注目を浴びた時期に、「建設予定地下に巨大な岩盤が見つかった」とされて、学校建設は振り出しに戻っている。

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久留百合子氏
(福岡県子育て応援宣言HPより)

・女性の社会進出を応援……しかし、共同代表は日本会議福岡会長
(学外委員)株式会社ビスネット代表取締役
久留百合子

 JR九州常務の後藤靖子氏が2018年3月末に経営協議会メンバーを辞め、その後任となったのが久留百合子氏。アンケート調査、モニター調査などを行う会社「ビスネット」の代表取締役だが、久留氏の活動の一つに「女性の大活躍推進福岡会議」がある。久留氏はこの組織の共同代表を務めるが、共同代表のもう一人は前出の「日本会議福岡」会長、松尾新吾氏だ。

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八尋太郎氏(志明館HPより)

・右翼養成学校?「志明館」の発起人で学校運営を担当~加計学園の影
(学外委員)学校法人博多学園理事長
八尋太郎

 「九州の森友学園」と言われ、宗像市での開校を目指していた志明館小中学校。同校の学校運営を行う予定の学校法人、「博多学園」の理事長が八尋氏だ。さらに博多学園は、2016年に「吉備国際大学」と教育提携協定を結んでいるが、同大学を設置する「学校法人順正学園」の理事長・総長の加計美也子は、加計孝太郎氏の姉だ。順正学園の実態が加計学園グループであることは明らかで、博多学園は加計学園と密接なつながりをもつ。

 福教大のある教員は、「博多学園は小中学校を持っていません。さらに、教育大学の附属小中学校について再編・統廃合の動きもあるため、このまま博多学園の影響力が増せば、福教大附属小中学校が博多学園に譲渡されるという悪夢のようなことも想定されます」と危機感を隠さない。

■教育現場を侵食し始めた「日本会議」

 日本会議と文科省天下り関係者が経営の主導権を握る大学――福教大が置かれている状況を端的にいえば、そういうことになる。日本会議の着目点はたしかに的を射ているのだろう。教育は国の根幹であり、「教育は国家100年の計」の言葉通り、とくに多感な小中学生時代にどのような教育を受けるかは、数十年後の社会の在り方を方向付ける。将来の憲法改正を目指すのであれば、影響を与えるべきはいまの子どもたちだと考えるのは、極めて合理的ともいえる。

 そして、多感な時期にどのような教師と出会うかということも、子どもたちのその後の人生に大きな影響を及ぼすことは言うまでもない。恐怖政治が支配する大学で監視の目に怯える教員たちが、子どもたちの可能性を十分に引き出してあげられる教師を育成することができるのか。教員養成現場が政治的、思想的なかけひきの主戦場にされ始めているとすれば、日本はいま大きな転換期にあるのかもしれない。

(了)

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