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官僚受難と言うけれど
議員秘書のひとりごと(2)

2018年4月 2日 08:30

 例えば年収590万円の家庭で、年間970万円支出することを何年も続けたらどうなるだろうか。借金するにしても限度はある。おそらく数年で家計は破綻するだろう。収入がないなら支出を抑えるのが普通の考えだが、そうでない世界がある。年590万円を59兆円、支出970万円を97兆円と置き換えると日本の財政状況に当てはまることになる。
 先月28日、参院本会議で過去最大となる来年度予算が成立した。森友疑惑で大騒ぎしている間に、いつ衆議院を通ったのか忘れてしまうほどの、じつに静かな今国会の予算成立劇だった。
 喜んでいるのは政府・与党だけではない。例年なら予算審議を通じて説明に追われる官僚たちが、じつは一番二ヤついている。

◆来年度予算、あっさり成立
 エコノミストの中には「国家財政と家庭の財政を同じように比較することはナンセンスだ」と主張する人もいるが、規模と期間が違うだけで、いつまでも国債を買ってくれるところがあるわけではない。いつかは支出を抑えなければならないはずだ。

 平成30年度当初予算は、97兆7,128億円。税収を59兆790億円と見込むのに対し、新規国債の発行額は33兆6,922億円となっており、予算額の34%を借金で賄う計算だ。過去最大の予算規模と胸を張る安倍政権だが、子供や孫たちの世代には、今日の借金が重くのしかかる。

 予算案は、先月28日の衆院本会議であっさり可決され、参院に送られた。本当に“あっさり”と衆議院の予算審議は終わった。参議院では森友オンリーで、予算内容についての実質的な審議はほとんど行われていない。

 予算案は参院の議決がなくても送付から30日で自然成立するため、森友問題で国会が空転しても、年度内に成立する。初めからあきらめていたのか、野党側は衆議院でも参議院でも、ほとんど抵抗らしい抵抗をしていない。近年では、珍しい光景だったと言えるだろう。

◆国会議員のレベル低下
 過去何十年間も、2月末日の夜に野党の反対を押し切って与党が強行採決するというパターンが繰り返されてきた。昭和後期から平成17年頃までは、予算の採決は深夜から早朝になるのが慣例だったのだ。変化してきたのはここ最近のことで、採決の時間が早くなり、夕方8時頃には予算が可決されるようになってきている。国会が成熟してきたのかといえばそうではない。逆に劣化しているのだ。昔の政治家は荒っぽいところもあったが、それなりに威厳や信念を持っていた。小渕内閣の頃まで、その名残が残っていたが、現在の議員たちの頭の中には次の選挙のことしかない。

 国会の姿が激変したのは平成17年の郵政解散後である。自民党の圧勝と、自民党中堅議員の減少、新人議員の急増という選挙結果の中で、本来は議員になれそうもないような人たちが大挙して国会に入り込んできた。「83会」と呼ばれる人の中には料理研究家の藤野真紀子氏や井脇ノブ子氏、極めつきは現在タレントとして活躍している杉村太蔵氏などがいる。

 私の知り合いの議員秘書は選挙の翌日、自民党本部の幹部職員から「秘書になってくれ」と杉村太蔵氏を紹介されたという。新聞で調べても「26歳・筑波大中退・証券会社職員」としか書いてない。とりあえず、なぜ立候補したのか本人に聞いてみたそうだ。

 すると杉村氏は、「証券会社は派遣で、財務省出身の長崎幸太郎候補の手伝いをすれば仕事に役立つかと思い、山梨に行っていたら8月11日に自民党のホームページに候補者募集とあったので、レポート用紙3枚をFAXで送ったら、13日に幹事長から呼び出されて出馬することになった」「大学はテニスでインターハイ優勝したことで推薦入学だったが、そのままテニスをするつもりがないと大学に伝えたら、退学しなさいと言われ退学した」――。一日話に付き合ったが、翌日お断りしたと笑っていた。

 中選挙区制の頃では絶対に当選できないような人物が、比例で当選する現象が顕著に見られるようになったのも、この平成17年の選挙から。小選挙区・比例代表制の弊害が顕在化したということだ。

 21年の総選挙では政権交代が起き、同様に民主党内に200人ほどの新人議員が出現。またしても「とんでも議員」が大量発生した。逆に24年の総選挙では、自民党内に200人ほどの新人議員が当選することとなる。

 昨年話題になった「魔の2回生」がこの人たち。不倫で議員辞職した宮崎謙介氏や、秘書への暴行事件で騒がれた豊田真由子氏など問題人物が多いことが特徴である。

 反対に、当選回数の多い大物議員の激減という現象も起きている。自民党の顔ぶれを見ても、次の総理候補がすぐに見つけられないという状況だ。政治家の若返りと言えば聞こえはいいが、実態は風に乗っただけで中身のない議員が増えて、実力者がいなくなってしまったということだ。

◆ほくそ笑む霞が関
 そんな中、実は喜んでいるのが、森友で揺れる財務省を除く中央官庁の官僚である。内閣人事局ができたことで、官僚が委縮したという声もあるが、それは幹部だけ。幹部にしても、人事権を握った総理や官房長官の顔色をうかがえばいいだけで、かつてのように族議員にかき回されたりすることなく仕事ができるようになっている。最強の官庁といわれ霞が関に君臨してきた財務省は、森友問題でがたがた。これまでのように他省庁を見下すことは、当分できそうにない。

 昔は自民党の長老・有力者の動向を注意してきた官僚が、自民党を見なくなってきた。官邸だけ見ていればいいという状況に変わってきているのは確かだ。

 国会の廊下で聞いていると、官僚たちが「あの議員、議員立法で提出するのに俺たちに説明するよう要求してきたぜ」「とりあえず説明した事実を作っておけばいいさ、中身を理解してないから」など国会議員を見下したひそひそ話が聞こえてくる。政治家の地盤沈下が著しいことを、一番よく分かっているのが官僚なのだ。

 意外だと思われるが、気づかないうちに官僚国家が強化されてきている。



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