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暴走する文科省 “教育勅語排除”の国会決議無視

2017年3月21日 08:25

文部科学省-thumb-280x240-1071.jpg 森友学園問題で注目を集めることになった「教育勅語」。稲田朋美防衛相が国会で、「教育勅語が言っているところの、道義国家を目指すべき」として勅語礼賛の姿勢を示したのに続いて、松野博一文科相までもが「教育勅語を授業に活用することは、問題ない」と発言。極右内閣の閣僚たちが、本音をさらけ出す形となった。文科省は官僚まで右傾化しているようで、2月には官房審議官が、勅語の教育利用を認める発言を行っている。
 そもそも教育勅語は、昭和23年の国会で衆・参両院が「決議」を以て否定したもの。文部科学行政に携わる者が、容認していいはずがない。

■教育勅語否定の国会決議とは
 稲田防衛相や松野文科相が礼賛する教育勅語が説く12項目の徳目とは、親への孝養、兄弟・姉妹間の友愛、夫婦の和、友との信義、謙遜、博愛、修学、智能啓発、人格の向上、社会奉仕、順法、義勇。これだけなら、たしかに「何が悪いんだ」という開き直りが説得力を持つ。だが、『一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ』(もし国家に危険が迫れば正義と勇気の心をもって公=国家のために働き、皇室を助けよ) の一文があるために、道議を説いたはずの勅語は「歪んだ愛国心」を育てるための“道具”と化す。教育勅語は、「臣下」たる国民に、皇室への「滅私奉公」を奨励する国の方針を示した文書であり、主権在民や法の下の平等を規定した現行憲法とは、まったく相容れない。勅語を教育現場で利用することは、憲法違反なのである。

 衆議院と参議院は昭和23年6月に、それぞれ「教育勅語等排除に関する決議」と「教育勅語等の失効確認に関する決議」を行い、教育勅語と決別している。

教育勅語等排除に関する決議】」(衆議院:昭和23年6月19日)
 民主平和国家として世界史的建設途上にあるわが国の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の改新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となっている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜わりたる勅諭その他の教育に関する諸詔勅、今日もなお国民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、従来の行政上の措置が不十分であったがためである。
 思うに、これらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すものとなる。よって憲法第98条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。
教育勅語等の失効確認に関する決議」(参議院:昭和23年6月19日)
 われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。
 しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。
 われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすぺきことを期する。

 衆議院決議では「排除」という強い表現で教育勅語を否定。≪指導原理的性格を認めないことを宣言する≫とした上で、≪謄本を回収し、排除の措置を完了すべき≫とまで言い切っている。一方、参議院決議では教育勅語の失効を確認。≪わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭≫するために、衆院同様≪謄本をもれなく回収≫と決議している。

 「謄本を回収」とは、教育勅語原本の写しまで日本国内から消し去るという意味。終戦直後、この国の指導者たちが教育勅語をどれほど危険視していたのか、よく分かる文言である。戦後教育の現場で、教育勅語を教材に使うことはご法度と理解すべきだろう。特に文部科学省は教育勅語をめぐる経緯を自覚しなければならない役所だろうが、極右政権の下、同省の官僚や大臣から安倍晋三に媚びを売るような発言が続いている。

■決議無視する文科省
 2月の衆議院予算員会、文科省の藤江陽子大臣官房審議官は、参考人としてこう答弁している。
 「教育勅語を我が国の教育の唯一の根本理念として戦前のような形で学校教育に取り入れ指導するということであれば適当ではないというふうに考えますが、一方で、教育勅語の内容の中には、先ほど御指摘もありましたけれども、 夫婦相和し、あるいは、朋友相信じなど、今日でも通用するような普遍的な内容も含まれているところでございまして、こうした内容に着目して適切な配慮のもとに活用していくことは差し支えないものと考えております」

 どうやらこの女性官僚、教育勅語に関する二つの国会決議を知らないらしい。国会が「排除」を宣言し、「謄本を回収」とまで決めた教育勅語を活用していいと言うのだから驚きだ。国会軽視どころか完全無視。官僚がこの程度の認識なのだから、大臣も右へならえ。松野博一文科相は、今月14日の記者会見で、次のように述べている。
「憲法や教育基本法に反しないように配慮をもって授業に活用するということは、これは一義的にはその学校の教育方針、教育内容に関するものでありますし、また、教師の皆さんに一定の裁量が認められるのは当然であろうかと思います。教育勅語を授業に活用することは、適切な配慮の下であれば問題ないと思います」

 松野氏は当選6回の文教族。極右団体「日本会議」の関連団体である「日本会議国会議員懇談会」のメンバーだ。当然、教育勅語賛美が松野氏の政治信条。教育現場で時代錯誤の教育勅語を用いるのに、何の抵抗もないのだろう。以前なら、更迭が考えられてもおかしくなった発言が、安倍一強の下では、お咎めもない。
 悪徳官僚による天下りに教育勅語の容認――教育を司る役所が歪む現状は、まさに戦前である。



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