子どもには見せたくない政治の惨状がある。
路線対立から分裂に至った維新の党が、大阪組と東京組に分かれて非難合戦に突入。昨年8月に日本維新の会と結いの党が合併して出来た政党が、ヤクザ顔負けの内部抗争を展開する事態となった。
大阪組の親分は橋下徹大阪市長。良くも悪くも情報発信に長けた政治家だが、強引な手法は“無理が通れば道理引っ込む”のたとえ通り。牽強付会の法律論を振り回し、東京組の議員をバカ呼ばわり。発言にも一貫性がなくなっており、大阪以外で彼とその一党を支持する声が広がる気配はない。
「維新」を名乗る連中の争いに興味はないが、橋下氏の言動が、この国の政治の質を下げているのは確かだ。
ガキのケンカが招く政治不信
親安倍か反安倍か――大阪組と東京組の違いを一言で表現すれば、つまりはそうなる。歴史観も憲法観も、安倍首相と同じなのが橋下氏と松井一郎大阪府知事。そして橋下を絶体の存在とみなし、どこまでも付いていこうというのが「大阪維新の会」とその賛同者たちだ。
一方、東京組は旧結いの党、民主などからの寄せ集め。大阪組に比べれば戦闘力で劣ると思われていたが、電光石火で大阪組を除名処分にするなど、負けてはいない。
どちらかを応援しようという気持ちはさらさらないが、橋下氏を中心とする大阪組のやり方はあまりに身勝手。相手を口汚くののしる橋下氏の姿勢にも、賛同できない。
都合が悪くなると、いったん議論の方向性を変え、しかる後に相手を叩くのが橋下流。今回の騒ぎでも、その特徴を遺憾なく発揮している。橋下氏のTwitteにおける発言の変遷を拾ってみた。
弁護士という自分の職業にうぬぼれているのか、東京組の主張をこきおろし、「弁護士に相談しろ」と言わんばかり。根底にあるのは、国会議員より弁護士が優越するという考え方のようだ。
ところが、東京組の依頼を受けた弁護士らの「法律意見書」が提出されるやいなや、一転。今度は、東京組の主張に沿う意見書を書いた郷原信郎弁護士の過去について騒ぎ立て始めた。
過去に、郷原氏が大阪府知事選への立候補を検討したから、不適格と言うのである。Twitterの最後には「は――」。まるでガキのケンカだが、内容を云々する前に、相手を誹謗した格好。議論のすり替えは、橋下氏の常套手段である。その後、意見書に対する反論もつぶやいているが、分が悪かったとみえ再度方針転換する。それが下。
今度は「政治家なら政治で対抗すべき。政党内部の問題にはそもそも司法は介入しない」である。先に「弁護士に相談しろ」と言い、現執行部の資格について法的適格性を否定しておきながら、論破されると豹変。突然の“政治家復帰”である。ご都合主義も、ここまで来れば幼稚という他ない。
主張が破たんし論理矛盾に陥ると、力での解決をごり押しするのも橋下流。次の例は、その典型だ。
橋下氏は、東京組=維新の党執行部に資格がないと言う。松野頼久代表の任期が切れたからだとしているが、橋下氏は代表選挙の先送りを了承していたはず。しかし、執行部不在論に批判が出たとたん、大阪が抱える「特別党員」(議員、首長、立候補予定者)が多いのをいいことに、とんでもない強弁で自己弁護。数の力で矛盾をごまかした形となっている。卑怯という言葉は、この人のためにあるのかもしれない。
そもそも、橋下氏は「維新の党」を離党した身。自分が作った政党だからという理由で、古巣の解党を主導するなど筋が通らない。難解な法律論を振りかざして大衆を煙に巻こうとしたのだろうが、格上の弁護士が出てきて頓挫。いつものことながら、敵対者への口撃は激しさを増す。発言と現実が乖離すると、ケンカ相手を口ぎたなくののしるのも橋下流だ。
連日垂れ流される橋下氏のつぶやくきの中に、何度「バカども」が出てくることか……。まともな社会人なら、おそらく使わない言葉を、市長で一党の代表でもある男が、これでもかと使っているのである。政治家である以前に、人間としての品性が欠けている。ガキのケンカを国政の舞台でやることが、どれだけ政治不信を助長するのか、維新の関係者は肝に銘じるべきだろう。
無法者集団
類は友を呼ぶというが、大阪維新が集めた人材は、欠陥品ばかりだったことが証明されている。浪速のエリカ様こと上西小百合議員の醜聞は記憶に新しいが、それ以外の不祥事も枚挙に暇がない。
その他、維新所属の国会議員陣営が選挙違反で摘発されたケースは数え切らないほど。こうなると“無法者集団”と言っても過言ではあるまい。
橋下グループがどう強弁しても、都構想は大阪だけの話。市・府レベルで進めるべき政策課題であって、他の都道府県には関係がない。大阪ローカルになぜ国会議員の数が必要なのか、理解できないのは記者だけではあるまい。橋下氏を改革者として持ち上げる向きもあるが、政治家には「人格」や「品性」も必要。そうした意味で、橋下氏は最低のリーダーだと断言しておきたい。学校の授業で、教師たちは維新のドタバタをどう解説するのか?