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18歳選挙権 授業で問われる戦争法案

2015年9月25日 09:35

安全保障法 成立 安全保障法案ばかりに注目が集まった国会だったが、戦後70年の節目に、大きく変わったもう一つの法律がある。6月、選挙権年齢を現在の20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が国会で成立。来年夏の参院選で、18、19歳の約240万人が1票を投じることになった。
 18歳といえば高校生。授業で、直近に行われる選挙のことが取り上げられる可能性は高い。参院選で安保法案の是非が争点になるのは確かだが、教育現場の教師たちは、安倍政権による暴走をどう教えるのか……。

来夏参院選 高校生に選挙権
 選挙権年齢が変更されるのは70年ぶり。18、19歳に選挙権を与える改正公選法が施行されるのは、公布から1年後の来年6月19日となる。施行日後初めて行われる国政選挙は、解散総選挙がない限り、夏の参議院議員通常選挙になる可能性が高い。

 今月18日に参院の特別委員会で強行採決され、翌19日の本会議で可決・成立した安全保障関連法案に対しては、説明不足を指摘する国民の声が8割に上っており、参院選で法案の是非が争点化されるのは必至。選挙年齢の引き下げに伴い、高校の授業でもこの問題が取り上げられることになりそうだ。どんな授業になるのか――?

そもそも論で立ち往生?
 実際の授業でも、“そもそも論”から入らざるを得ない。なぜ集団的自衛権の行使を容認しなければならなかったのか――。スタートはここからだが、教壇に立つ先生たちの多くが、疑問を抱いたまま生徒と向き合うことになるだろう。

 衆参の国会審議を通じて、政府はいずれの問いに対しても納得できる回答を出していない。だからこそ、8割の国民が「説明不足」だと感じているのだ。立法府のセンセイ方が答えられないものを、学校の先生たちがスラスラと説明できるはずがない。下は、高校で使われている「現代社会」の教科書だが、解説には、集団的自衛権の行使を違憲とみなす政府見解が紹介されている(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

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 ほとんどの教科書、参考書で同様の記述。戦争法案の成立を受けて、先生たちは、これまで教えてきたことと正反対になった現状を、いやでも説明しなければならない。しかし、文科省は、学習指導要領の中で厳しくチエックしてくることが予想され、そうなると授業は“政府・与党の主張に沿った形”で進めざるを得ない。教室で、これまで聞かされてきた牽強付会の論が展開されることになるが、普通の高校生なら、国の嘘やごまかしをすぐに見抜くことだろう。先生たちが、入り口のところで立ち往生する可能性は高い。

現役教師の不安
 これまで子どもたちは、授業で「民主主義」「平和主義」「立憲主義」の大切さを教えられてきた。しかし、新聞、テレビ、ネットで得る情報は、安倍政権のやったことが、そのすべてを否定するものであることを示している。法案審議の過程が、「民主主義」や「立憲主義」を否定する暴挙だったことを、ほとんどの生徒が知っているのである。国民の過半数が反対する法案が成立するという現実に、「国民主権」が名ばかりとなっている現実にも気付くはずだ。つまり、安倍という政治家のやっていることは、戦後教育の全否定。教育現場は大混乱することになる。

 高校の職員室では、法案成立直後から、集団的自衛権や安保法制をどう教えていけばよいのかが話題になっているという。九州の公立高校で教鞭をとる男性教師は、次のように話す。

 18歳への選挙権引き下げが現実のものとなりました。来年夏の参院選では高校3年生の中に投票する者が出てくることになりますが、学校現場は次第に混乱し始めています。高校の教員に生徒へのしっかりとした教育が求められる一方、「中立性を保つよう」にと言われています。一体どうあるべきなのか、いまだに答えが出ていないのです。

 問題に直面する教科は公民の政治経済や現代社会ということになりそうですが、国語の小論文や英語、ディスカッション、ディベートの類も関係してきそうです。言うまでもなく、高校は多種多様な学問を多面的に学ぶ場であり、生徒の個人的な関心や社会事象も話題となります。教員は、生徒と真正面からぶつかり、進路指導にせよ、生徒指導にせよ、自分の生き方や考え方をしっかりと開いてあげなければなりません。嘘は論外ですが、教員が「立場上、そのことについてはコメントできない」などと逃げを打てば、すぐさま生徒から見透かされ、信頼を失ってしまうでしょう。

 集団的自衛権や安保法案について、教員が政府や政権与党の側に立って授業を進めれば「中立性」は保たれるのかもしれません。しかし、国民の半数以上が反対する法案であるという現実を、無視するわけにはいきません。生徒も、テレビや新聞のニュースで、ことのあらましくらいは知っているからです。来年の参院選が授業の課題となった場合は、今回の安保法案の成立について、教員が生徒に意見を求められるのは至極当然。生徒はこう聞いてくるのではないでしょうか――『安保法案の審議を不十分だったと考えている国民は8割、憲法学者のほとんどが法案は憲法違反だと言っています。安保法案に反対する人は6割を超えていますが、先生はどう考えているのですか?』

 私が大多数の国民が感じているのと同じことを述べた場合、文科省や教育委員会は、「中立性を欠いた不適切な指導」として、処分の対象にするかもしれません。おそらく、指導要領の中で、集団的自衛権や安保法案のことを細かく指示してくるでしょうから。私は、そうした現状こそが“いつか来た道”であることを教えるつもりですが……

 戦前、戦中を通じ、学校は“軍国少年”を育成する場だった。教科書には「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ」、校庭では軍事教練が行われた。ところが、終戦と同時に「鬼畜米英」を叫んでいた教師たちは一変。昨日までの教えなどなかったかのように、民主主義や自由主義を賛美したという。

 70年をかけ、教育の正常化が図られてきたはずだが、安倍政権の暴挙で、再び戦前同様の「嘘を教える学校」に――。かくして、教育現場でも“歴史は繰り返す”。



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