公職選挙法が改正され、選挙権年齢が現在の20歳以上から18歳以上に引き下げられたことに伴い、来年度から学校の授業で政治や選挙に関する「主権者教育」が実施されることになった。
文科省は、選挙を所管する総務省と共同で高校生向け副読本「私たちが拓く日本の未来〈有権者として求められる力を身に着けえるために〉」及び同名の教員向け指導資料を作成し、教育内容の方向性を示しているが、現場がこれをすんなりと受け止められるかといえば、さにあらず。現実の政治は劣化が激しく、とても子どもたちに政治の崇高さを教えられる状況ではない。
恥ずかしくて、とても学校では教えられそうもない永田町の実情とは……。
閣僚不祥事次から次
「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」と辞世を詠んだのは、かの大盗賊石川五右衛門。「盗人」を「政治屋」と置き換えるとピタリとあてはまるのが現代で、税金を原資とする政党助成金を懐に入れたり、政党支部を窓口にして禁止されたはずの企業団体献金を集めまくるなど、選良たちの悪辣さは盗人以上だ。
民意を無視する安倍政権の手法には呆れるばかりだが、政治家の劣化も深刻だ。新閣僚に次から次へと問題が浮上し、政府・自民党は防戦一方。野党から出された臨時国会の開催要求にさえ、応えられない状況となっている。まずは「政治とカネ」で追及される大臣方。簡単に「罪状」をまとめると、このようになる。(以下、顔写真は自民党HPより)
上から順に、森山裕農相、馳浩文科相、島尻安伊子沖縄・北方担当相。森山氏には政治倫理の欠如、馳氏と島尻氏には、自身の政党支部や関連政治団体における違法行為の疑いが指摘されている。しかし、いずれも辞任するつもりはないらしく、返金や言い訳でことを済ます構えだ。政治資金規正法や公職選挙法が「ザル法」と呼ばれて久しいが、要は政治家自身が責任を取ろうとしないことが原因。この国で、“大人の狡さ”を最も体現しているのが政治家なのである。
小渕氏の態度 子どもたちはどう見る?
違法な政治資金処理で刑事事件を引き起こしておきながら、国会議員を辞めようとしない政治家もいる。昨年、第2次安倍内閣で経済産業相を務めていた小渕優子氏だ。
疑惑発覚で大臣を辞任したものの、違法行為については終始一貫「知らぬ存ぜず」。暮れの総選挙で再選されたが、今月9日には、政治資金規正法違反で逮捕・起訴された元秘書や会計責任者らに、執行猶予付きながら有罪判決が下されている。
お粗末なのはその後の言動。19日、「第3者委員会」とやらが調査結果を報告したことを受け小渕氏本人が会見を行ったが、なんと謝罪の相手は「後援会のみなさま」。さらに、後援会から「群馬のためにがんばれとの決議をいただいた」として、議員辞職をきっぱり否定した。第3者委員会といえば聞こえはいいが、しょせん小渕氏側が設置した組織。お手盛り検証をアリバイにして、自身の潔白を宣伝しただけの話だ。高校の授業で、小渕氏の問題について生徒が質問したらどうなるか?おそらく、こんな具合だろう。
生徒:自分の政治団体の会計責任者が二人も逮捕されて有罪判決を受けたのに、小渕さんはなぜ辞めないで済むのですか?
教師:ご本人を有罪にする証拠がなかったからです。
生徒:小渕さん本人が代表を務める政党支部や後援団体が、数千万円単位のおカネをごまかしていたというのに、「知らなった」ということがあるのでしょうか?
教師:小渕さんは「知らなかった」と言っています。
国が教育現場に求めるのは“学校の政治的中立”。授業中、教師が政府与党にとって不利な話をするのはご法度で、不起訴になった以上、小渕氏を責めるようなマネはできない。結果、授業は消化不良で終わるだろうが、口は達者だが不祥事にはダンマリ、責任逃れに終始する政治家たちを、18歳の若者たちが尊敬するとは思えない。
下着ドロが大臣?
「国会は国権の最高機関」--憲法は、そう規定している。だが、実際にはカネまみれ、疑惑まみれの輩が永田町を闊歩し、子どもにまでバカにされているのが現状だ。政治家の不祥事は、まさに「浜の真砂」状態。ついには、泥棒疑惑の大臣まで現れた。
下着ドロ疑惑が事実なら、政治家というより人間としての問題。石川五右衛門もびっくりといったところだろう。教室で質問攻めにあう先生たちの、困った顔が目に浮かぶ。