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上代を上回る「赤札価格」 ― 消費者裏切るAOKIの商法(4) ―

2014年7月17日 09:10

タグ 紳士服販売大手「AOKI」の多くの店舗で、AOKI本社が決めた「上代価格」が店舗ごとの判断で高い価格に変えられたり、値引き額が過大に見えるように装った値決めをしていることが分かった。上代価格とは、商品の小売価格として設定されたもので、いわゆる「定価」。定価を上回る価格設定に違法性はないものの、顧客を欺く手法と言われてもおかしくない格好だ。
 AOKI関係者の話を基に取材を進める中、今度は上代価格を上回る「赤札価格」の存在が明らかとなった。

販売価格への疑問
 AOKI関係者の話を総合すれば、AOKIの上代価格は、商品ごとに本社の商品部が決めるという。この段階で「原価に6~7割を乗っける」(元幹部社員の話)とされ、半額にしても利益が出る仕組みだ。その後、店舗ごとに実際の販売価格を決めていくが、前稿で報じた通り、タグに示された上代価格をオーバーする値札を付け、より利益を得るための細工が施されていく。

 ただ、これが違法というわけではない。上代価格は、あくまでも「目安」となる値段。安くするのも高くするのも自由だ。商売である以上、利益追求のためという主張は認められよう。地域ごとに輸送費も違うだろうし、他に様々な要因があって、店舗での販売価格を上代より上げざるを得ないこともあろう。しかし、AOKIは全国でチェーン展開しており、有名タレントを使ったテレビCMも数多く流している。客は、同一商品は同一価格で販売されていると思い込んでいる。それが、店ごとに違う値段であったり、定価より高い販売価格が設定されているなどとは思ってもいないだろう。これは、AOKIが消費者と、どう向き合っているかが問われる問題なのである。

 ある同社元幹部社員はこう話す。「たしかに、タグの右上の数字に上代価格が示されています。下3ケタを後ろから見るわけです。これが守られるのは稀と言っても過言ではなく、多くの店舗で、上代を上回る価格を設定し、販売してきました。この手法は、今も変わっていませんね。上代を上回る価格で売るほか、店舗で設定した高い価格を半額にしたり、値引きしたりするわけです。客は随分得した気分になるでしょうが、実際にはそうでもないというケースが多いんです」

 こうした元幹部社員の話を裏付ける値決めのケースが、下の2点である。

aokiタグ1  aokiタグ2

 ともにタグ右上の数字の下3ケタは『756』。上代は65,700円ということ。それに、2,300円を乗せ、68,000円の販売価格を設定した上で、最終的には58,000円の赤札価格をつけているのが分かる。68,000円→58,000円なら10,000円の値引きだが、上代は65,700円。つまり、65,700円-58,000円=7,700円が実際の値引き額ということになる。現場取材では、こうしたケースばかりが目立っており、巧妙に値引き額を圧縮し、利幅を得る販売手法が横行しているといえよう。客からみれば、「騙された」という形になりはしないだろうか?

上代上回る「赤札価格」
 ここまでのケースについては、AOKI側にも言い分があるかもしれない。しかし、下のケースについてはどう説明するのだろう。

タグ3.jpg

 タグ右上の数字は『854634』。634を逆に読めば436。上代は43,600円だ。それが、販売価格を設定する段階で4,400円上乗せされ、48,000円となり、最終的な赤札価格は「45,000円」となっている。なんと、赤札価格でありながら、上代より1,400円高く販売しているのである。定価より高いセール品など聞いたことがない。詐欺的な販売手法と言われてもおかしくないたちの悪さだが、AOKIの元幹部社員たちは、口を揃えて「どの店でもやっている」と言う。

 さらに、ある元店長は「これは、もっともタチの悪いケース」だと指摘する。上掲のスーツは、2012年製造のものなのだという。元店長の説明はこうだ。タグの右上に上代価格を示す数字があり、その下に、『540‐K6』とある。アルファベットの後ろに続く数字は製造年を表しており、『2』は、2012年のこと。 つまり、この店舗では、2年前のスーツを、上代より高い価格で販売しているというのだ。

 別の元幹部社員は、次のように話す。「アルファベットの次の数字は製造年で間違いありません。最後の数字は季節を表します。夏とか、秋冬とかですね。このスーツは、何年か前に製造された ―― つまり売れ残り商品ですね。上代より下の価格を設定して、せいぜい原価割れしない程度で販売するのが普通でしょうが、スーツの製造年などお客さんには分からないですから、こんなことができるんです。もっとも、同じようなことは、多くの店舗で行われています。感覚が麻痺しているとしか言いようがないのですが、これがAOKIの体質なんです。もちろん、本社は実態を知っています。売り上げ優先ですから、どんな値決めをしようと、構わないということです」

問われる企業倫理
 セール品の撤去、上代を上回る販売価格の設定――現役従業員や元幹部社員たちの証言によって、消費者を欺くAOKIの販売手法が浮き彫りとなった。セール品の扱いについてはダンマリを通していたAOKI本社だが、上代価格の件についてのHUNTERの取材には、広報が回答を寄こしてきた。

AOKI側の回答

 取材に対し、回答を拒否するのは自由だが、消費者には説明責任があるだろう。問われているのはAOKIの商法の是非、そして企業倫理なのである。

<AOKI特別取材班>



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