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消費者裏切るAOKIの商法(1) ― 現役従業員の証言 ―

2014年7月 7日 06:45

AOKI 紳士服販売業界2位の「AOKI」が展開する店舗の多くで、チラシやダイレクトメールで「各日5着」などと定めたセール特売品(以下『セール品』)を完売前に売り場から撤去し、「売れた」と偽って他の商品を販売する手法が横行していたことが、現役従業員や元幹部社員らの証言で明らかとなった。
 AOKIがホームページ上で公表してきた≪一部インターネット上の風評にある、当社が組織的に詐欺行為を行っているかのような内容は、一切事実に反するものであります≫との主張を揺るがす事実であり、AOKIに対し取材結果を示して質問取材を行ったが回答はない。
 消費者保護というHUNTERの取材趣旨に賛同したAOKIの現役従業員や、指示を与える側にいた元幹部社員らの赤裸々な声を、複数回に分けて報じていく。

「セール品引き上げは当たり前」―現役従業員の話
 HUNTERの取材に応じた現役従業員は、九州、関西、関東、首都圏に散らばっている。メールによる内部告発も数多く寄せられたが、直接会うか、もしくは電話で話を聞けたものだけを紹介する。なお、証言者全員に、AOKIの従業員であることを示す証拠を示してもらった上で、在籍確認もとっている。まずは、九州地方のAOKIの店舗で働く、男性従業員Aさんの話から。

 記者:取材に応じていただき、ありがとうございます。AOKIでの勤務状況や、これまで現場で見聞きしてきたことを、教えて下さい。
 従業員A:私はAOKIに勤めて3年ちょっと。九州地方のある店舗に勤務、としておいて下さい。まだ辞める予定はないので(笑)。なんで取材に応えようと思ったかというと、やっぱり「嘘」は「嘘」。人を騙してまで商売をしなくても、AOKIは利益を上げられる会社だからです。お話しすることで、会社(AOKI)が少しでも反省して、お客様に心から喜んでいただけるような商売をしてくれるようになることを願ってます。

 記者:いただいたメールには、「いつかはバレると思っていた」とありましたが……?
 従業員A:HUNTERの記事がネット上で炎上して、「ああ、やっぱりばれちゃった」というのが正直な感想でしたね。もうひとつ思ったのは、『ほかの店でもやってんだ』ってこと。自分のとこ(店舗)だけじゃないとは思ってましたけどね。ホッとしたと言うと怒られますよね。

 記者:具体的に、あなたがメールで「詐欺には違いない」と記した内容とは?
 従業員A:福岡清水店と同じですよ。私は男性向けの紳士服売り場にいますから、女性のスーツについては詳しくはありませんが、少なくとも、私のいる売り場では、セール品を昼ごろに引き上げることを普通にやってきました。いや、もちろん、何週間か続くセール企画の途中からですけどね。土日祝日限定というやつですね。

 記者:どういうことですか?
 従業員A:セール企画は、地域事情や季節によって変わるでしょ。新規開店なんかでのセールもありますよね。1回のセールは何週間か続くんです。最初は、お客さんがどーっと来るけど、そのうち少なくなる。そのあたりになると、当たり前のようにセール品を引っ込めるんです。だいたい昼ごろですね。そして、お客さまには「(セール品は)売れました」と言う。あるけど「ない」といって嘘をつくんです。最初はヤバいなと思ったけど、だんだん『商売ってこんなものか』と思うようになる。「各日5着」とかいうのは、土曜、日曜、祝日だけの話ですから。毎日じゃないし……。

 記者:セール品は完売したと聞いたら、お客さんは帰ってしまうんじゃないですか?
 従業員A:いや、たいていはセール品以外のものをお求めになられますね。記者さん、帰っちゃいますか(笑)?

 記者:買っちゃいますね。私もそうでしたね。当然、高い買い物になりますよね。
 従業員A:それが狙いですから。セール品は客寄せの道具ですよね。それ自体が悪いことではないでしょう。他の業界でも、例えばヤマダとか、電気製品の業界でも極端に安いセール品をチラシに載っけて、客を集めてる。ただ、電気屋さんの場合は、数をごまかせない。店頭に積んであるから、ズルができない。紳士服は違う。お客様の状況を見てると、(セール品を)引っ込めるタイミングが必ず来る。だから、やっちゃう。詐欺と言われても文句言えないですよね。

 記者:セール品撤去の指示は誰が出すのですか?
 従業員A:うちの店では店長。私が勝手にやったことは、さすがにないですよ。ただ、もう当たり前のようになっていたから、麻痺していましたね、HUNTERの記事読むまでは。お客様には申し訳ないと思ってます。

 記者:店長への指示は、AOKIの本社か、あるいはエリアマネージャーあたりが出すんですか?
 従業員A:いや、直接的な上からの指示はないんじゃないかな。ただ、エリアマネージャーが知らない、ということはないですね、絶対。売り上げの実態を知ってるわけだし……。本社が知ってるかどうかまでは分かりません。ただ、うちの店だけの話ではないと思いますよ。他(の店舗)でやってることも知ってるし。

 記者:なぜ、他の店舗でも(セール品撤去)をやっていると分かるんですか?
 従業員A:友だちいるから。その店舗に。だから、どこ(の店舗)でもやってるんだなって……。

 記者:AOKIの商法について、いまどのように思っていますか?
 従業員A:最初に言いましたけど、まともな商いをやってほしい。少なくとも、お客様を騙すようなやり方は、これきりにすべきだと思います。ネットの書き込みを見て、つくづく思いました。『やっぱり、おかしいと思われてたんだな』と――。幸いというか、HUNTERの報道があってからは、セール品を引っ込めることはなくなりました。そのかわり、セール品は『12時まで』と、ハッキリチラシに入れるようになりましたがね。これって、『やってました』と認めたようなもので、少し情けないですがね。(会社が)開き直ったということでしょうね。セールやっといて、12時にセール品引き上げる理由なんてないでしょ。完売するまで置いとけばいいいわけで。いままでやってきたことを、ごまかすためとしか思えませんね。少し残念ですけど、それでも「嘘」をつくよりまし。程度低いと思われるでしょうけど……。私にはこれくらいのとこしか分かりません。

 記者:最後にもう一点。AOKIの本社は、福岡清水店での騒ぎを受けて、アンケート調査を全店でやったとしています。アンケート調査のことを知っていますか?
 従業員A:知らなかった。どうせ店長とかが適当にやってるんでしょう。実態通りに答えたら、えらいことになる。(セール品撤去を)やってるやつでも「やってない」と答えるでしょう。そんなこと分かってるのに、アンケートなんて……。ポーズでしょうね。

 記者:ありがとうございました。

 従業員Aさんの話にあるように、現在、セールを知らせるAOKIのダイレクトメールやチラシには、「各日5着」の下に『昼12時まで』と但し書きが入るようになっている(下参照。HUNTER編集部によるピンク色の囲みに注目)。以前には見かけることがなかったものだ。こうした但し書きが必要になったのは、福岡清水店で起きた詐欺的販売手法の発覚を受けて、組織防衛を図る必要性に迫られたからとしか思えない。ある意味の開き直り。これまで多くの店舗でやってきた早い時間でのセール品撤去を、断りを入れて堂々とやるようになっただけの話だ。姑息というしかない。

AOKI、昼12時までのチラシ

売れ残りがセール品に
 大阪以西にある別の店舗でも、同様の詐欺的行為が行われていた。就業して1年半になるという従業員Bさんは、こう話す。

 私が勤めている店では、詐欺的行為が行われたというHUNTERの記事が掲載された直後くらいに、「セール商品は終日、店舗に陳列しておくように」という内容の通達がありました。セール品といっても、ほとんどが売れ残りの商品ばかりです。

 今まではセール商品については朝に陳列し、お昼頃にセール商品を撤去し、セール商品目当てにご来店された方には「全て売り切れてしまいました」と対応していました。セール期間中のどの時期に、というのではありません。店舗によって違うのではないでしょうか。ただ、こうした詐欺みたいな行為に関しては、どの店でもやっていた可能性があります。それほど、当然のようにセール品を引き上げていたからです。セール品引き上げをやるのは、店長とか売り場の上の人。自分も命じられてやってきました。

 店側にすれば、あくまで戦略的販売と考えているのかもしれませんが、消費者にとっては、詐欺行為と考えてしまうのが普通でしょう。自分が、AOKIのこういった販売の仕方に嫌気がさしているのは事実です。

 自分が知る限りでは、セール商品については「ひとまず、スーツ一式は揃うが、到底飛ぶように売れるレベルの商品ではない」のは確かです。ダイレクトメールやチラシに掲載されている内容は、あたかも数万円のスーツ一式がセール価格で揃うように書かれています。ですが、自分が知る限り、商品自体が数年落ちのスーツばかりで、サイズも全サイズは揃っていないのです。客に合うサイズがない時点で、セール価格でのスーツ購入不可能になります。高い価格のスーツを買うしかなくなります。

 「閉店セール」「改装セール」とうたっておきながら、実際は客寄せの口実であることも、お気付きですね。気になるのは、青山など他の紳士服販売会社も、みな同じようなセールをやっていることです。「各日5セット」や半額セール、福岡清水店であったような女性向けの「セットで19,000円」など、どこも同じ手法、同じ価格になっています。AOKIだけの問題ではないかもしれません。いずれにしても、客を騙すというのは、やはり我慢できないことです。自分がAOKIではなく、別の業界の会社にいたとすれば、騙されていたかもしれません。お尋ねの本社のアンケートとかについては、何も聞いてません。

首都圏の店舗でも
 次は首都圏のAOKI店舗で働く、男性との1問1答。やはり、セール品引き上げを認めている。

 記者:AOKIでの勤務期間は?
 従業員C:2年ちょっとです。

 記者:福岡市のAOKIの店舗で、セール品が売れていないにもかかわらず、「売れた」と偽り、他の高額商品を販売するという出来事があった。あなたが勤める店舗で、同じようなことをやっているというのは本当か?
 従業員C:やっている。商売だから、これもありかと思っていた。

 記者:詐欺的な商売の手法だと思うが?
 従業員C:言われれば、その通りだと思う。ただ、上の者の指示には逆らえない。初めは驚いたが、じきに慣れた。

 記者:上の者とは?
 従業員C:店長とか、売り場の責任者とか……。

 記者:具体的にはどのような指示が出るのか?
 従業員C:『セール品下げて~』みたいな……。わざわざ『セール品』などと言わないこともある。なんというか、当たり前になっているので、あうんの呼吸で。なんとなく流れの中でやっている感じ。

 記者:時間が決まっているのか?
 従業員C:特に決まっているということではない。昼過ぎまでには(セール品が)なくなるという感じ。

 記者:セールが始まってすぐでも、(セール品撤去を)やるのか?
 従業員C:やったこともある。いや、初日にはない。さすがに、初日には絶対ない。早くて、2週目あたりから。客が少なかったら、初日でもやるかもしれないが。

 記者:セール品はどうやって選んでいるのか?
 従業員C:基本的には売れなかったスーツやジャケット。常識的に考えて、売れ筋の商品を(セール品として)出すはずがない。店長や売り場の人間が決めている。

 記者:なぜ、告発メールを送ろうと思ったのか?
 従業員C:もうすぐ辞めてもいいかなと考えていた。商売の仕方としては、胡散臭すぎる。転職するなら染まる前がいいかな、と。もう染まっているかもしれないが……。

 記者:AOKIの本社が行った詐欺的販売行為についてのアンケートのことを知っているか?
 従業員C:知っている。知っているが、何か聞かれたというわけではない。店長の判断で回答したのだと思う。真実など出てくるはずがない。自分がやってることだから。

 本稿で紹介したのは、直接話を聞けた従業員の証言だ。内部告発のメールはまだまだある。ほとんどが、セール品を早い時間で撤去していることを認める内容で、「きちんと報道して、止めさせてほしい」と、苦しい心の内を明かした長文のメールもあった。

 一方で、「うちの店では詐欺的な販売などやっていない」と完全否定する従業員もいる。従業員レベルの話からは、早い時間でのセール品撤去が組織的に行われているかどうかは判然としない。

 それでは、従業員らにセール品撤去の指示を出していた側――つまり店長やエリアマネージャーと呼ばれる幹部社員はどう取材に応えるか?さすがに現役からの告発はなかったが、長年AOKIに勤めて、ここ数年の間に辞めた元幹部社員たち数人との接触に成功した。AOKIの商法を知り尽くす彼らの証言から、驚きの実態が浮かび上がる。― 以下次稿 ―

<AOKI特別取材班>



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