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僭越ながら:論

AOKIに問われる社会的責任

2014年4月22日 09:10

 上場企業には、一般の中小企業以上に重い社会的責任というものが存在する。市場で資金を集める以上、当然のことだ。そしていま、紳士服販売で業界2位のAOKIに、「社会的責任」を果たせるか否かが問われている。
 先月29日に「AOKI福岡 清水店」で起きたのは、セール企画商品が完売していないにもかかわらず、「完売した」と偽りを述べて別の高額商品を売りつけるという事案。騙された顧客からすれば明らかな「詐欺行為」である。消費者保護を重視したHUNTERは、その後のAOKIの対応を見ながら4回にわたって記事を配信、AOKIを展開する「株式会社AOKI」に対しては、説明を求める質問書を送っていた。
 これに対しAOKI側は、4月8日に「福岡清水店の件」、15日には「福岡清水店の事案について」とするお知らせ文を、株式会社AOKIとAOKIグループを統括するAOKIホールディングスのホームページ上に掲載。16日にはHUNTERの質問書に対する「回答」を郵送してきた。
 確認された行為は、たしかに「AOKI福岡 清水店」で起きた1件だけ。顧客が支払った現金は戻ってきており、遅ればせながらAOKIの役員が顧客に謝罪したのも事実。だが、AOKIは、真実を捻じ曲げて自社の体面を取り繕うという間違った選択をしてしまった。
 ここで改めて、AOKIの社会的責任について問題提起しておきたい。

これまでの経緯
 発端となったのは、先月29日に「AOKI福岡 清水店」で起きた店側による詐欺的行為。大学入学を決めた学生に購買意欲をかきたてる印刷物を送付しておきながら、印刷物の内容に惹かれて来店した学生とその家族に対し、実際には「各日5セット」と記されたセット商品が売れていないにもかかわらず、「本日分は出た」と偽り、別の通常価格でスーツなどを購入させていた。販売価格は、セット価格の倍以上となる「43,640円」だった。

 学生の父親がHUNTERの記者だったことから問題が発覚。その後、記者とAOKI側の対応を詳しく報じていたが、同社の正式な見解と同様の事案について有無を確かめるため、AOKI本社に対し、以下の質問を送付していた。全文は以下の通りだ。

前略 平成26年3月29日に、御社「福岡 清水店」において起きた事案については、ご承知のことと存じます。
本件は、《フレッシャーズ限定 スーツも揃う》と謳った「19,000円」の5点セットが完売していないにもかかわらず、“完売した”と欺き、セットとは別のスーツを購入させ、「43,640円」を請求したものです。
そこで、次の点についてご質問させていただきます。

  • 本件についての御社の調査結果はいかなるものか?
  • 本件同様の詐欺行為は、他店でも行われていたか?
  • その結論のその根拠は?
  • 今回の御社の対応は「遅かった」と思われるが、なぜ専務が来福するまでに5日の時日を費やしたのか?
  • これまで、セール商品とは別の高額な商品を押し付けるといったケースはなかったか?
  • また、同様の商行為にクレームが来たことはなかったか?
  • 信頼回復に向けていかなる措置を講じていくか?

 質問書を送るに至った経緯はこうだ。今月3日にHUNTERの記者を訪ねて来福した株式会社AOKIの専務は、徹底的な調査と改善策を約束している。記者への謝罪にも誠実さが感じられたという。ただ、AOKI側が、今回の事案を、店長の「誤信」――(朝から来店者が多かったため、各日5セットが完売したものと思い込んだ)――が原因だとした点は、時系列で記録を残している記者には容認できないものだった。食い違う見解についても含めて、AOKIの社長名によるさらなる説明を求めたのは言うまでもない。

 この折、専務は社長名による説明を「持ち帰り検討する」としていたが、その後の連絡は一切なし。8日には、一方的に「福岡清水店の件」と題するお知らせを公表したが、その内容は≪この度、AOKI福岡清水店において、フレッシャーズ限定セット商品(各商品5点で 19,000 円セット)をお探しのお客様に対し、ご満足いただける対応ができませんでした≫という、単なるクレーム対応に近いものだった。同社の企業体質に疑問を持ったHUNTERは、直後にAOKIの社長宛に「質問書」を送り、回答を待った。

 質問書への回答期限は4月18日となっていたが、AOKI側は15日の時点で、「福岡清水店の事案について」とするお知らせ文を公表する。下がその一文だ。

福岡清水店の事案について

 今回の事案の説明を、AOKI側は次のように記している。

 平成 26 年 33月 29 日、AOKI福岡清水店において、フレッシャーズ限定セット商品(各商品 5 点で 19,000 円セット。土日祝各日 5 セット限定の商品)をお探しのお客様に対し、当該店舗では商品在庫の確認ミスにより、完売前の商品を完売したと間違って回答するお客様対応をしてしまいました。当該お客様に対しては、今回ご迷惑をおかけした事を真摯に受け止め、当社より謝罪とご説明を行っております

 ただし、本事案はあくまで当該店舗の当該お客様に対する対応の問題であり、一部 インターネット上の風評にある、当社が組織的に詐欺行為を行っているかのような内容は、一切事実に反するものであります。
 当社では福岡清水店における事実関係を確認する一方、全 500 店舗余において調査を実施し、本日までに調査を完了いたしました。その調査の結果から、風評に取り沙汰されているような「景品表示法違反」や「詐欺行為」に該当する事実はないことを確認しております。

 何度も報じてきたが、HUNTERの記者が「AOKI福岡 清水店」における詐欺行為を確認するまでの過程は、すべて記録に残されている。いったん内金20,000円を支払って店を出てから、数分以内に記者の家族が店側に電話し、商品在庫と販売状況を問い合わせ。ここで「調べて電話する」と言った売り場の責任者は、それから15分ほどして記者宅に電話を入れてきており、事実関係を確認した上での連絡だったことは明らかだ。「調べる」と言ったからには、この段階で「AOKI福岡 清水店」は5セットが完売していないことを把握していなければおかしい。

 しかし、AOKI側は「調べた」後の記者宅への電話で、明快に5セットが「出ています」と明言。さらに、「好評の企画ですから、本日分はすでに出ています」と繰り返している。AOKI側は、「誤信」が判明したのは、この記者との2度目の電話の途中で、すぐに店長が電話対応していた売り場責任者に伝えたというが、残された通話記録を何度確認しても、そうした状況ではなかったことが歴然としている。売り場の責任者は、「伝票を確認させてもらう」という記者の追及に詰まり、いきなり謝罪。さらに、実売数が「2~3セット」だったと答えている。実際に売れていたのは「2セット」。AOKI側が主張するように伝票確認で完売が間違いだと気付いたというなら、「2~3セット」などという曖昧な言葉は出てくるはずがない。売り場責任者は、この日のセット販売数をある程度把握していたため、とっさにアバウトな数を口走ったと見るほうが自然だろう。販売数が5セット未満であることを知っていながら、それでも「出ました」と言い張った以上、「騙された」と批判されるのは当然ではないだろうか。真実は一つなのだ。

 もう一点、AOKIの公表文には、信頼性が欠けていることを指摘しておきたい。全500店舗余において調査を実施し、問題はなかったたというなら、どのような調査方法だったのか、また、セール商品とは別の高額な商品を押し付けるといったケースはなかったかという点についても、詳細を明らかにするべきだろう。HUNTERの取材では、AOKI本社が各店の店長にアンケートを行い、さらに店長が従業員に聞き取りを行っていたとの証言がある。AOKIがいう調査が、このアンケートのことを指しているのであれば、実態解明は難しいと言わざるを得ない。“客を欺いたことはあるか”と問われ、「ハイ」と答える従業員がいるとは思えないからだ。

送られてきた「回答」について
 さて、翌16日付けでHUNTERに送られてきたのが、内容証明郵便による「ご回答書」である。 そこに書かれていたのは、残念ながらまともな回答とは思えぬ内容だった。前記7項目の質問に対しては、AOKIが15日にホームページ上で公表した「福岡清水店の事案について」で説明したから、確認しろという。さらに後段の記述では、≪貴社の記事内容による、弊社が会社ぐるみで詐欺行為を行っているかのような主張は看過いたしかねます≫として、今後の記事に対する「法的措置」をほのめかしている。報道を黙らせようとするAOKIの姿勢が顕著となった形だ。

 HUNTERはこれまで、AOKIが組織的に詐欺行為を行っているなどとは述べていない。「AOKI福岡 清水店」での出来事とその後の経緯を詳しく報じたのは、同様の事案が起きないようにするため。それは報道の使命だ。そして、たった1件の事案であっても、同様のケースがないかしっかりと確かめるのは、重い社会的責任を背負った一部上場企業なら当たり前のことだろう。その際、事実は事実として、正直に答えてこそ企業の姿勢が評価されるのではないか。まずは顧客に対し、「迷惑」ではなく、「被害」を与えてしまったということを、AOKIは自覚すべきだろう。

 今回の事案は、一店舗での出来事。たまたま問題行為が発覚したため、記事を見た読者が「自分のケースも納得がいかない」などとして、ネット上でいわゆる「拡散」が起きた。しかし、HUNTERに送られてきているのは、AOKIの商法に関するものだけではない。紳士服業界大手は、そろってAOKIと同じようなセール企画を連発しており、謳い文句とは違う商品を買わされたとする訴えは後を絶たない。いまAOKIに求められているのは、業界を代表する企業として、また一部上場企業として、真実ときちんと向き合い、消費者の信頼を勝ち取ることのはずだ。今回の件が引き金となって噴き出した同社の商法に対する顧客の様々な声を真摯に受け止め、疑問を払拭するという社会的責任を果たしてもらいたい。一連の報道の趣旨は、そこにある。この論が、法的措置の検討対象になるとは思えないが……。



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