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AOKI 詐欺行為の問題点

2014年4月 7日 07:00

 先週、紳士服業界2位のAOKIが行った詐欺行為について、2回にわたって報じた。初稿は事実関係について、次には当事者である記者が時系列に従って顛末を記した。反響は大きく、いまだに、その後のAOKIの対応を問うメールが殺到している状況だ。
 また、問題の本質から離れることだが、記事中にあった「ジョウチョウ」という言葉についての記者の認識にも、様々なご意見が寄せられている。
 AOKIの詐欺行為を見抜いたHUNTERの記者は、先週3日(木)、同社幹部からこれまでの内部調査結果を説明されたが、その経過と配信記事についてのHUNTERの見解を明らかにしておきたい。

これまでの経過
 今回の事案について、簡単にまとめておきたい。AOKIは、大学入学を決めた学生に購買意欲をかきたてる印刷物(下、参照)を送付。先月29日、印刷物の内容に惹かれて来店した学生とその家族に対し、実際には「各日5セット」と記されたセット商品が売れていないにもかかわらず、「本日分は出た」と偽り、別の通常価格でスーツなどを購入させていた。販売価格は、セット価格の倍以上となる「43,640円」だった。

AOKI ハガキ

 学生の父親はHUNTERの記者。売り場でのやり取りから「おかしい」と直感し、販売実績を追及した結果、詐欺行為が発覚した。その後、AOKI側の対応をにらみつつ、4月1日に事実関係を報じ、3日には記者の実体験を時系列的に並べ、第2報を配信した。

 AOKIの詐欺行為は明白。さらに、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制しており、これに抵触する可能性もある。

AOKI側の言い分
 記者の抗議を受けたAOKI側の対応は鈍かった。詐欺行為発覚の当日、店長とエリアマネージャーが来訪したものの、「お話をうかがいに来ました」程度。会社側と連絡をとって対応するということだったが、九州地区の統括責任者と称する社員から記者に電話が入ったのは翌30日の午後3時過ぎ。この時は記者が預けたままの20,000円の内金を、AOKI側が返金することを確認し合っただけとなった。この間、記者は一貫して会社トップであるAOKIの社長から話を聞きたいと要請している。

 結局、AOKI側と記者が直接相対したのは、4月3日。九州地区の統括責任者から2日に連絡があり、「お会いしたい」という申し出を受けてのことだ。AOKIを代表して福岡に来たのは同社専務。場所は、福岡市内にあるホテルのティールームだった(記者側が指定)。

 ここで初めて九州地区統括責任者の肩書が明らかになる。名刺には「営業本部 九州・沖縄地区営業責任者」とある。来福したのは「専務取締役 営業本部 西日本統括」。AOKIの親会社は「株式会社AOKIホールディングス」(以下『AOKI HD』)だが、専務という役職は存在せず、登場したのはAOKI HDの完全子会社である「株式会社AOKI」の役員である。

 専務が関係者から聞き取ったという話は、おおよそ次のようなものだった。

  • 3月29日当日は、朝から来店者が多く、店長が「各日5セット」となっている企画商品を完売したと思い込んだ。この時、本来なすべき「伝票」の確認をせぬまま、午後1時頃、店員に「セット完売」を伝えた。

  • 2セットしか売れていないことを確認したのは、HUNTERの記者と売り場責任者が電話で話をしている最中だった。すぐに電話中の売り場責任者に事実関係を伝えた。

 つまり、今回の事案は、店長の誤信によるもので、「騙すつもりはなかった」という筋立てだ。

逃げ口上は通用しない
 しかし、この話にはかなり無理がある。
 いったん内金20,000円を支払って帰宅した記者は、5分後に前掲の印刷物を確認。すぐに家族が店側に在庫確認の電話を入れている。電話を受けた店側は、“調べて電話する”として、その15分後ほど後に、記者宅に連絡を入れてきている。調べたという以上、当然この段階で、2セットしか売れていないことが分かっていたはずなのだ。

 にもかかわらず、記者との電話で、AOKI側は当初「5セットが出た」と強弁。再三確認した記者に、きっぱりと完売を宣言し、「好評の企画」だとその理由まで付け加えている。その後、記者が「伝票を確認する」と言い出したところで、詰まっていきなりの謝罪――『申し訳ございませんでしたー』につながっていく。専務が聞き取ったという調査結果とは、明らかに矛盾する流れなのだ。

 AOKI側からの電話を受けた記者が、「調べたところ、たしかに5セット完売しておりました」という言い分を信じ込んでいれば、詐欺行為は暴かれなかった可能性が高い。AOKIとしては、詐欺行為を認めるわけにはいかないということだろうが、これまでの企業犯罪でよくあるパターン。逃げ口上が傷口を広げるということを自覚すべきだ。

 お詫びはするが詐欺行為は認めない――AOKI幹部の姿勢は、まさにその典型といえる。重ねて述べるが、今回は通用しない。詐欺行為を確信していた記者は、電話でのやりとりを含め、すべての記録を残しているからだ。

 この点について、AOKIの専務と会った記者は、認めるべきことを認めた上で、再発防止に取り組むよう要請している。そうでなければ、同様の犯罪行為が後を絶たないと判断したからだ。その上で、社長名による説明文書も要請している(⇒AOKI側は『検討する』と回答)。

 記者がAOKI側に社長との話を望んだ理由も、専務には伝えている。「社長出てこい」の一点張りでは、たしかにクレーマーと思われる読者もいたかもしれない。しかし、企業が起こした犯罪行為なら、会社のトップが経緯を説明するのが筋だろう。しかも、今回の詐欺行為は、その他の店舗でも行われていた疑いがある。AOKIの対応に不信感を持った記者は、この会社の姿勢を見極めたかっただけだ。

膨らむ不信
 AOKIの商法については、ここ3日間ほどの取材で、次のような証言を得ている。
「セット物を買おうと思ったが、すでに売れていると言われた。翌日行こうと思い在庫を聞いたら、自分に合うサイズはもうないと言われた。結局4万円以上の出費になった」(18歳:福岡市在住男子学生)

「5セットの中に含まれるはずの靴がなくて、結局通常の価格で買った。35,000円ぐらいかかった」(18歳:太宰府市在住女子学生)

 AOKIの商法に疑問を持ったのは、学生だけではない。
「安売りのチラシにさそわれてスーツを買いに行ったら、いつのまにか高額な商品を買わされた。試着が終わるまで値段の説明はなかった。こんなもんかと思っていたが……」(24歳:福岡市在住男性会社員)

 怒りの声を上げるのは関西在住の女子大生。
「私は昨年の秋、就職活動用のスーツが急に必要になったため近くのAOKIでスーツを購入することにしました。宣伝ハガキを持って行きました。そこで売り場の方にハガキを見せ、そこに書いてあった一番安い19,000円程度のスーツを購入したいとハッキリ伝え、見せていただきました。また、シャツや靴、鞄のセットが5,000円ほどで買えるものも一緒に購入したいことを伝え、そちらもお願いしました。

 はじめに不審を抱いたのは、スーツを見せていただいている際、一度も値段についてのお話がなかったことです。さも私が頼んだものを説明しているようでした。

 次に不審を感じたのは、試着が終わったとたん、すそ上げなどの加工をスーツに施し始めたことです。まだ値段も知らされる前にです。会計で、ようやく高額であることを知ったころにはスーツの加工はほぼ終わっており、「やっぱり止めますとは言えない雰囲気になっていました。他にも様々なやり方で値段を吊り上げられ、6万円以上の会計になっていました。

 当初3万円程度で済むと思っていたのでもちろん手持ちはありませんでしたが、3万だけでいいから残りは後で、という形になりました。

 どうしても納得がいかず、その日のうちに店に電話をかけ説明を求めました。対応した人間は私を担当した方でしたが、ヘラヘラしながら言を左右にするばかり。態度に真摯さが欠けていて憤りを覚えました。この日は結論が出ませんでした。

 翌日、やむなくAOKIのコールセンターへ連絡しました。そこでは話が通じ、お店で返金を受け付けてもらうことになりました。しかし私に対応した方は出てこず、店長らしき方から謝られ商品券と粗品を持たされ帰りました。被害には遭わず済みましたが、詐欺まがいの手口にはいまだに怒りがおさまりません。私も世間知らずで、至らない点もありましたが、このやり方は学生の足元を見た許せないやり方だと思います」。

 取材対象を探すのに手間取り、わずか10数名にしか話を聞けていないが、こうしたケースは少なくないようで、同様の事案を伝える読者メールは数十通に達している。AOKI福岡 清水店に確認したところ、セール期間中、「5セット」を完売していなかった土日祝が複数回あったことを認めており、他店舗でも、学生を欺いて高額なスーツを売ったという疑いは否定できない。AOKIは、すべての販売実績を調査し、今回同様の詐欺行為がなかったか、公表する義務があるはずだ。

「ジョウチョウ」について
 さて、「ジョウチョウ」についてである。問題となったジョウチョウは「上長」と書く。上司の意だ。AOKI側と対した記者が、この言葉を一般的なものとして認識していなかったのは事実だ。“知らなかった”、といってよかろう。だからこそ、電話口で「ジョウチョウが、ジョウチョウが」と言うAOKIのエリアマネージャーに、注文をつけて、問い質している。

 これに対し、≪「上長」は一般的な言葉、世間知らずで記者が務めるのか≫、といったご批判がある。ひどいのになると、記事の信頼性まで否定する始末だ。たしかに、「ジョウチョウ」を使う企業がある一方、記者同様「知らなかった」というご意見の方が多いことを明らかにしておきたい。世相を映すという意味において、例えばテレビドラマなどで「上司」という言葉は頻繁に出てくるが、「上長」にはお目にかからないような気がする。使用例があれば教えていただきたい。新聞でも使用されることほとんどない。「上長」は社内用語であり、対外的に使うべき言葉ではないだろう。結論として、「一般的」とまでは言えないというのがHUNTERの見解である。これはハッキリさせておきたい。記者が無知だと言われるならたしかにそう、ご批判は甘んじて受けるしかない。

 じつは、AOKIとの顛末記事を配信する直前、記事内容のチェックを行った編集部門からも「『ジョウチョウ』は上司のこと。会社によってはよく使うことがある。辞書にもある。このまま配信するのはどうか」という意見具申があった。確認し、検討もした。しかし、記者が「ジョウチョウ」を知らなかったのは事実であり、AOKI側とこの言葉をめぐって厳しいやり取りをしている。相手の動向を逐一伝えていくのに、こちらのマイナス面だけを隠すのはおかしい。結局、原稿そのままで配信することにした。間違っていたとは考えていない。これがHUNTERの流儀である。

 記事を修正しなかった理由はまだある。詐欺行為発覚から1日。記者は、まだアオキの組織体系を知らない。そこに電話で「ジョウチョウが」と言われても、誰のことを指しているのか分からないのだ。本来なら、「私の上司にあたる九州地区責任者がご連絡を取りたいと申しております」などと言うべきだろう。会社トップとしての見解を聞きたいと主張した記者は、「ジョウチョウ」が社長なのか、はたまた副社長を指すのか、皆目見当がつかないのだ。もともと非はAOKI側にあるのだから、この場合「ジョウチョウ」は妥当ではあるまい。ともあれ、今回の問題の本質は別のところにある。「ジョウチョウ」が一般的なのかどうかは読者の議論に委ねたい。

AOKIが謳うコーポレート・ガバナンスとは
 紳士服販売を手掛ける株式会社AOKIの親会社が、AOKIホールディングスであることは前述した。この会社のホームページでは、「コーポレート・ガバナンス」について、次のように謳っている。AOKIグループ全体の企業統治理念である。

 当社の経営理念は、「社会性の追求」、「公益性の追求」、「公共性の追求」であり、この3つの経営理念を追求するためには、コーポレート・ガバナンスが重要な課題であると認識しております。

 法令遵守の観点から顧問弁護士を含めた法務相談会を月1回開催し、またコンプライアンス委員会は、法務委員会と連携し、当社グループの内部統制システム強化のため、課題の検討の他、規程やマニュアルを整備するとともに勉強会等により、制度の周知を図っております。

 コーポレート・ガバナンスとやらを大切にするため、勉強会を行い、内部統制システムを強化しているというが、今回の対応はどうだろう――。詐欺行為発覚からのAOKIの動きは、顧客重視とは言い難いものだ。3日、同社専務と九州・沖縄地区営業責任者に対し、記者は二つの質問を投げかけた。

 ―― 問題が起きてから翌日午後まで、九州地区の責任者に連絡がつかないということだった。しかし、店舗で人身事故や火事でもあった場合、翌日まで連絡がつかないというようなことがあり得るのか?それで危機管理ができるのか?

 ―― 今日は問題発覚から5日目。これが例えば総理大臣の娘や息子に関わる問題だったら、AOKIはどう対処したのか?社長は、即刻飛んで行ったのではないか?

 AOKI側の2人が、うつむくしかなかったのは言うまでもない。2問目はいささか極端な事例を挙げての質問だったが、これがAOKIの実情。「コーポレート・ガバナンス」は、ホームページ上のたわごとに過ぎない。

問題の本質は
AOKI チラシ 詐欺は犯罪行為である。経緯がどうであれ、人を騙して金品をせしめた以上、AOKIの商法は社会的に許されるものではあるまい。問題は、こうした商法が横行している可能性が高いことだ。

 平成23年7月、消費者庁は紳士服販売業者5社に、景品表示法に基づく「措置命令」を出している。命令を受けたのはAOKIをはじめ青山、コナカ、はるやま、フタタの紳士服販売大手。5社は、テレビCMやチラシで、「スーツ・コート・ジャケット 全品半額」と宣伝。実際には、メンズスーツ、メンズコート及びメンズジャケットのうち表示価格が一定金額以上の商品のみが半額で販売されていた。

 チラシでは、「全品半額」と強調する一方、半額適用条件の表示は小さく目立たない程度。テレビCMでは、適用条件については2~3秒しか表示していなかった。「全品半額」は、事実上偽りだったということ。消費者庁の命令は、以後、こうした表示による販売を止めるよう、厳しく指導したものだった。この時の措置命令の趣旨は、守られているのか。消費者を欺くような販売手法が続いてはいないか。今回のAOKIの問題は、紳士服業界すべてに疑問を投げかけている。

*紳士服業界の商法については、さらに取材を進め、続報を配信する予定だ。



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