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背水の陣の安倍政権 新潟市長選で菅官房長官が仕掛けた野党分断
旧民進議員に自民入りを約束して寝返り工作

2018年10月26日 07:45

20181026_h01-01.jpg まさかの「沖縄3連敗」――9月30日投開票の沖縄県知事選挙以降、豊見城市長選(10月14日)、那覇市長選(10月21日)と、沖縄県内で実施された首長選挙に3連敗した安倍政権は、求心力低下を回避するためになりふり構わぬ選挙工作に奔走している。
 舞台は10月28日投開票の新潟市長選挙。飯野晋氏(元官僚・前新潟市北区長=45)、小柳聡氏(野党5党が支援・前新潟市議=31)、吉田孝志氏(自民党系前市議=56)、中原八一氏(自民党が支持・前参院議員=59)の新人4人が激しく競り合いながら選挙戦終盤を迎えている。
 混戦の原因は、小柳氏を支援する野党陣営で起きた足並みの乱れ。仕掛けたのは、謀略好きの菅義偉官房長官だという。

■新潟市長選で野党系衆院議員が「寝返り」
 沖縄3連敗以外にも、安倍政権はまさに「国難」続き。『週刊文春』が片山さつき地方創生担当大臣の「国税口利きで100万円」疑惑を報じ、安定の「福岡の恥」麻生太郎副総理は不摂生で病気になった人の医療費負担について「あほらしい」発言、柴山昌彦文部科学相は教育勅語を「アレンジして道徳に使える分野もある」と発言するなど、第4次安倍改造内閣はもはや、いつ、誰が辞めるのかに焦点が移っている。

 そんななか安倍首相が政権立て直しの足がかりとしてターゲットにしているのが、今週28日に投開票される新潟市長選だ。官邸にとっては、沖縄3連敗の流れをなんとしてでも断ち切って「安倍首相では来年の統一地方選や参院選は戦えない」「選挙の顔として相応しくない」という自民党内の声を沈静化させるのが至上命題。今後の政権運営や悲願の憲法改正にも影響を及ぼすため、地方選の連戦連敗を新潟市長選で食い止めようと動いている。

新潟県知事選で野党統一候補を応援した鷲尾衆院議員.jpg 安倍首相の期待を一身に背負うのは、「ガースー」こと菅義偉官房長官。菅官房長官が目をつけたのは、県内6小選挙区で4勝した野党系衆院議員のなかで最も保守色が強い鷲尾英一郎衆院議員(民主党→民進党→無所属)だ。自由党の森ゆう子参院議員の選挙でも裏切った「前科」があり、新潟県知事選の際は野党共闘をほぼサボタージュして顰蹙をかっていたという。
(右の写真が鷲尾英一郎衆院議員)

 野党統一候補への応援演説回数はたった3回で動きが鈍く、「県知事選では水面下で対立候補の花角英世氏(現知事)を応援していた」という情報も流れていたが、これは県知事選の選対を主導した森ゆうこ参院議員と菊田まき子衆院議員への反発が背景にあったという。森参院議員との仲は今でも険悪で、県内野党系4衆院議員の中でも浮いた存在だ。

 その鷲尾衆院議員はすでに自民党が支持する中原八一・前衆院議員の集会に参加しており、「転向宣言」ともいえる支援表明を行っている。地元政界関係者の間では、菅官房長官が鷲尾氏に将来の自民党入りを約束し、そのうえで中原八一氏の支援表明をさせたという「密約説」が一定の信ぴょう性をもって囁かれている。

 6月の新潟県知事選では、「名護市長選方式」を新潟に持ち込むことを提案した佐藤浩・創価学会副会長に、自民党新潟県連の柄沢正三幹事長が難色を示して対立。公明党が自主投票寸前までいった時に柄沢幹事長を官邸に呼び出して関係修復に尽力したのも菅官房長官だった。その結果、公明党は自主投票を撤回して創価学会がフル稼働状態となり、自公推薦の花角英世知事誕生に大きく貢献した。

 こうした菅官房長官の危機管理能力は、今回の新潟市長選でも野党系現職衆院議員の「寝返り」というかたちで実を結んだに違いないとみられており、二階俊博幹事長と並ぶ「寝業師」ぶりは健在というところだ。

■野党統一候補の選対を仕切るのは、県知事選敗北の「A級戦犯」
 今回の新潟市長選は保守分裂となったため、本来なら野党統一候補の小柳聡前新潟市議が「漁夫の利」を得るはずだが、選対幹部である立憲民主党の西村智奈美衆院議員(新潟1区)は野党全体を束ねるのに力不足で、国民民主党関係者の動きも鈍い状態だ。

 選対の乱れは、敗北した県知事選を仕切った森参院議員と菊田衆院議員が責任を取ったかたちで西村衆院議員に主導権を渡したのが原因だ。重要選挙を仕切る手腕は森参院議員の方がはるかに上で、2016年の県知事選で米山隆一知事が逆転勝利したのも、剛腕・小沢一郎に鍛えられた森参院議員の力によるところが大きいとみられている。

 一方、西村衆院議員は6月の新潟県知事選敗北の「A級戦犯」の一人でもある。自らの選挙区である大票田・新潟市で花角氏にリードを許し、「自分の地盤すら固められなかった」と批判されてもいた。勝てるはずの戦いを優勢に進められないのは、西村衆院議員に選対トップを任せたことが影響していると、嘆く野党関係者は少なくない。

 ただ、選対のもたつきという意味では自民党が支持する中原陣営も同じ状況だ。中央から三原じゅん子参院議員や山本一太参院議員(元沖縄北方担当大臣)ら国会議員が応援に駆け付け、期日前投票の要請など、相変わらずの企業・団体締め付け選挙を展開しているにもかかわらず、「県知事選の繰り返しだ」という反発もあって十分に浸透していない。公明党が自主投票となったことも重なって団子レースから抜け出せず、陣営内には焦りが募っているという。

 保守分裂に加えて自民党支持も得られないダブルパンチの割に健闘しているのが、4年前の市長選で善戦した吉田氏。「憲法改正に突き進む安倍自民党系の候補にも、共産党も応援する候補にも勝たせなくない」と思っている公明党支持者(創価学会員)や、立憲民主党主導の選対に反発する国民民主党支持者の受け皿になっている可能性がある。

 投開票まであと3日、現状では3人の有力候補の誰が勝ってもおかしくない情勢となっている。



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