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アベノミクスと東京オリンピックで試されるREIT市場の新たな時代

2013年10月10日 08:10

都心 果たして「アベノミクス」か「アベノリスク」か―安倍政権の舵取りについては、しばしばこの二つの言葉で評されるが、その功罪はこれから本当の姿を現してくる。
 実体経済への影響はいまだ明らかとは言えず、来春予定の消費増税がどう景気を左右するかも見えていない。確かなのは、サラリーマンの給与水準が上がっていないということだけだ。
 そうしたなか、「アベノバブル」の様相を呈しているのが不動産業界。その一端をうかがわせるのが不動産投資信託(REIT)市場の拡大だ。2020年の東京オリンピックが後押しするとの見方もあるが、これが文字通りのバブルとならないか、今後試されることになりそうだ。

REIT市場に新たな動き
 REITとは、投資家から調達した資金を不動産に投資する金融商品の一種。一般的には中長期的かつ安定的な収益を目指す不動産の賃料が収入源という性格から、オフィスビルやマンションを運用する法人が中心だった。

 そのREIT市場に、注目すべき動きが拡がっている。政府は6月、成長戦略の一環として、介護・医療施設専門REITのガイドラインを整備する方針を発表。来年度はじめには同REITの創設を解禁する予定だ。そうなると来春には、こうしたREITの上場が容易となる。

 この政府方針を受けた三井住友銀は今月3日、NECキャピタルソリューション、シップヘルスケアホールディングスと共同で、介護・医療施設を運用対象とするREITを立ち上げると発表した。東証への上場は6月の予定だという。
 また不動産投資会社のケネディクスが、来秋にも運用資産200~300億円規模のヘルスケア特化型REITを設立すると報じられている。

「アベノミクス」か「アベノバブル」か
 現在の仕組みでも介護・医療施設専門REITの上場は可能だが、この分野は事業者の財務状況が把握しにくいなど、投資家にとってはリスクがつきまとってきた。そのため、上場に二の足を踏むケースが少なくなかったが、今回、政府が金融庁や国土交通省らと調整し、情報開示や契約条件のルールを整備することで、投資家に安心を与える環境ができる。

 事業者側にとっても、資産が流動化することでメリットが生じる。政府は、高齢化社会に医療・介護施設の増加で対応する構えだが、REITが既存施設の買い取りをすすめれば、その売却資金を元手に事業者は新たな施設を建設できる。

 REITの活用は、物流分野においても目立ってきた。そのうちの1社、大和ハウス関係者は「マンションやオフィスビルは、他社との競合が激しく大きな伸びが期待できなくなってきた。そこで当社では、物流分野をもうひとつの事業の柱として確立するために環境を整えてきた」と語る。この分野でも、今後はREITの活用が拡大していくと見られる。

 日本のREIT市場は今年に入って、リーマン・ショック以前に不動産市場が活況を呈していた水準を超えてきた。時価総額は、07年5月に過去最高となる6兆8,152億円をマーク。しかし、08年9月のリーマン・ショックにより2兆円台まで縮小したあと、民主党政権の間はおおむね3兆円台で推移していた。

 ところが、アベノミクスへの期待がピークとなった今年3月、なんとREIT市場の時価総額は7兆2,481億円にまで膨らんだ。株価上昇のほか、新規銘柄の上場も相まって、かつて不動産バブルといわれた状況を数字上は凌駕しているのだ。再び不動産市場が活性化するとの見方もあり、2013年がREIT市場にとって新たな時代の入り口となる可能性が高い。とはいえ、これが「アベノバブル」に終わらないか、注意深く見守っていく必要がある。あらゆる市場の一寸先は「闇」なのだ。

<嵯峨照雄>



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