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福岡市副市長人事の危険性

2013年3月18日 09:20

 福岡市役所で、組織に壊滅的なダメージを与えることが確実な、非常識極まりない人事が行われようとしている。
 高島宗一郎市長は、同市副市長3人のうち任期途中の2人を4月から交代させ、後任に総務企画局長と農林水産部長をあてる方針だ。部長から副市長への「昇進」は、福岡市では初めてとなる大抜擢だが、この人事にはきな臭さが漂う。理由は、新たに副市長となる部長の職歴にある。
 市議会はもとより、足もとの市役所内部からも反発が出ている副市長人事の背景を探った。
(写真は福岡市役所)

注目される「契約課長」の過去
 今回の人事では、総務省から出向していた山崎一樹氏と市職員から叩き上げの渡辺正光氏が退任、現在総務企画局長の貞刈厚仁氏と農林水産局水産部長の中園政直氏が新たに選任される見通しだ。
 任期途中の交代劇も珍しいが、部長から一足飛びに副市長に就任させる人事はこれまでに例がない。多くの局長級職員を無視して、格下の部長を市政NO2に抜擢するのはなぜか?答えは中園水産部長の職歴にある。

 中園氏は60歳、通常ならこのまま定年を迎えるはずの同氏だが、過去に特別な役職で辣腕を振るっていた。そのポジションは財政局の「契約課長」である。
 福岡市の契約課長は特別な存在だ。同市では、契約課長に、市議会議員をはじめ有力者からの業者選定に絡む依頼が集中するシステムとなっており、歴代課長は依頼内容を書き記した文書を持っている。市役所版「黒皮の手帳」である。
 中園氏は山崎広太郎氏の市長時代(任期:平成10年~18年)に契約課長に就任しており、この時築いた建設業界との関係が深い。つまり、同氏は、建築、土木、マリコンといった利権関連業者のコントロールができる上、当時頼みごとをしてきた有力者らにとっても都合の良い存在ということになる。
 何も知らない高島市長に、何者かが入れ知恵した結果が今回の人事なのである。

「贈収賄事件の火種」との声も
 中園氏が副市長就任の打診を受けたのは2月中旬、12日から14日にかけてのことだという。21日には早くも新人事が新聞報道されており、山崎・渡辺両副市長が事実上の更迭を知ったのも、この報道後だったとされる。既成事実化して両副市長の戦意を削いだというわけだが、仰天人事は市内部や議会に衝撃を与えた。

 局長を飛び越えての副市長昇格も驚きだったが、「契約課長」というポストの意味を知る市関係者たちは、裏にある黒い思惑を見抜いたのである。
 ある市幹部OBはこう話す。「利権だな。利権を狙う市長周辺が、中園の起用を市長に進言した。中園と懇意の人物が動いたのは間違いない。中園は使い勝手がいいということを知っている人物の浅はかな考えだ。中園も中園だ。静かに定年を迎えておけば良かったものを、局長を飛び越えて副市長になれば、内部の反発が大きいことを知らないはずはない。上の人間には弱いという彼自身の性状を知ってる職員は多いから、早晩ギクシャクして機能停止になる。職員のモチベーションは下がる一方だろう」。

 古参の市関係者は、別の意味での危険性を指摘する。「今回の人事は危険だ。契約課長の役割を知っている建設業関係者や利権を狙う政治家は、待ってましたとばかり副市長詣でを始めるだろう。私は山崎市長時代の中園の仕事ぶりを知っているから・・・・。この人事は、贈収賄事件の火種をばら撒いたようなものなんだ」。

議会の体たらく
 一方、高島市長の間違いを正すべき市議会の体たらくにも呆れるばかりだ。人事案が表面化した直後から、市内部や議会関係者の反発が出たが、市議会与党の動きは噴飯ものだった。
 高島市長との蜜月が噂される自民党市議団の会長が、自民、公明、みらい福岡の議員らを率い市長室に直談判。声を荒げて市長に意見したというのだが、これが単なるパフォーマンスだったことは言うまでもない。市議会関係者からは次のような突き放した声が上がる。「見え透いている。ガス抜きですよ。はじめから人事案を撤回させるつもりなんかない。高島市長と示し合わせて、長老がやったこと。本来なら議会でやるべきことで、市民に見えないところでどんなに騒いでも意味がないでしょう。自民党市議団の中堅、若手に不満が溜まっており、今後はどうなるか分からない。元契約課長を副市長にして、業界や議会を懐柔しようという策らしいが、世の中をなめているとしか思えない」。
 開催中の市議会でも今回の人事が取り上げられたが、自民党をはじめとする市議会与党が腰砕けでは、市政の改善は望めそうもない。

 不祥事を起こした市職員を「腐ったミカン」と揶揄した高島市長だったが、市役所を腐らせているのは市長本人なのである。



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