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安倍政権の「地方創生」が奪う受験生の夢

2018年12月10日 10:30

20181210_h01-01.jpg 入管法や水道法といった国民の暮らしに直結した法律を、強行採決で改悪した安倍政権。独裁的な手法は教育分野にも及んでおり、ここ数年で大学入試に大きな変化をもたらしている。
 特に厳しくなったのが東京の私大入試。国が、私大定員の厳格化を進めた結果だ。受験シーズンを前に、安倍政権が「地方創生」の一環として進めてきた大学改革の実態について考えた。

■門戸狭まる東京の大学
 文部科学省は、大学教育の質の向上などを目的に、私大の入学定員超過に対して、私学助成金の交付をカットするという措置をとる方針を打ち出した。 

 例えば、2015年までは、総定員8千人以上のマンモス大学は、入学定員充足率(国に届け出た入学定員に対する実際の入学者の割合)が1.2倍までに抑えられていれば、私学助成金は満額が交付されていた。しかし、この基準が2016年度は1.17倍、2017年度は1.14倍、2018年度は1.10倍と年々厳しくなっており、基準が達成されないとペナルティーとして助成金が全額カットされることになっている。

 影響を見ると、たとえば早稲田大の場合、一般入試の合格者数は2年間で3,444人減少。青山学院大は2,191人減、法政大は5,591人減などと、主要な大学で大幅に合格者数が減っている

 この「定員厳格化」措置は、安倍内閣の「地方創生」政策の一環で、東京・名古屋・大阪の三大都市圏に学生が集中するのを抑え、地方へ振り分ける狙いがあるとされている。「地方創生」などと聞こえはいいが、地方の若者から「東京や大阪で学びたい」という夢を奪う愚策でしかない。

 この激変に追い打ちをかけたのが、5月25日に成立した「地域における大学の振興および若者の雇用機会の創出による若者の修学および就業の促進に関する法律」である。この法律は、平成40年3月31日までの10年間、大学などの設置者は地方の若者の修学や就業を促進するため、一部例外を除き、特定地域内で学生の収容定員を増加させてはならないと規定しており、東京の大学は定員を増やせなくなった。

 地方から首都圏への若者の流出を防ぐ目的だというが、そもそも若者の23区内への大学進学を抑制する政策によって、地方の大学は活性化するのだろうか。

■歪む「地方創生」
 人口減少社会では、将来の日本を支える若者に対する教育の質の向上が大きな課題となる。そのためには、トップクラスの大学の研究レベルをさらに高めることが必要なのだが、この法律では逆行することとなる。優秀な研究者や学生は、どうしても都心に集まってくるからだ。

 昨年、全国知事会が「東京23区への若者の流入が増える流れを直ちに止めるよう文科省に指導強化を求める」という声明を出したが、これは東京への若年層の流入と流出の不均衡を是正するという、まるでトランプ大統領の「貿易不均衡批判」と同じ論理で保護主義を正当化するような内容となっている。

 仮に東京23区の大学の学部定員を抑制したら、地方の高校生が地元の大学に行くだろうか。実際には23区以外の首都圏や、関西圏の大学に行き先を転換する可能性のほうが大きく、それ以外の地方大学への希望者が増えるとは考えにくい。

 文部科学省は経営が悪化した私立大学に対し、債務超過の可能性が確認できた場合、学生募集の停止や設置校の廃止、学校法人の解散という厳しい措置に出ることを文書で通知している。

 「危ない大学」の一例として、2015年に4年制大学の募集停止を決めたプール学院大学(大阪府)と比較して財務内容が見劣る大学法人を、帰属収支差額、帰属収入総管理費比率、固定比率、補助金依存度、繰越収支比率の5項目で危険性を評価した表がある。

 5項目中4項目該当する大学が、足利工業大学、芦屋学園、金蘭会学園(千里金蘭)、郡山開成学園(郡山女子)、東亜大学、柏専学院(新潟産業)、明浄学院(大阪観光)。5項目中3項目該当する大学が、ありあけ国際学園(保健医療経営)、市邨学園(名古屋経済)、開智国際、享栄学園(鈴鹿)、都築教育学園(第一工業)、天満学園(太成学院)、東洋学園、奈良学園、船田教育会(作新学院)、平安女学院、ものつくり、稚内北星学園――。いくら地方創生を叫んでも、このような地方の大学に入学を希望する学生が増える見込みは極めて低いのが実情だ。

 地方創生を謳った「地域における大学の振興および若者の雇用機会の創出による若者の修学および就業の促進に関する法律案」は、単に地方出身の国会議員の意向を忖度しただけの、「学問の自由・研究の自由」を無視した愚策である。

 そもそも、国内では一人勝ちのように見える東京の大学だが、欧米やアジアの主要都市との競争では立ち遅れている面が多い。日本の大学に対する国際的な大学のランキングは、東京大学が42位、京都大学が65位。一方、アジア色の大学では中国の清華大学が22位、北京大学が31位、シンガポール国立大学は23位などと、日本が後れをとっている。

 大学の質を高める施策を置き去りにしたまま、定員数をいじって「改革」とはしゃぐ安倍政権――。首相は、名ばかりの「地方創生」が、じつは地方の若者の夢を奪っている現実を直視すべきである。



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