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【リニア疑惑異聞】 談合の象徴は永田町にあり
ゼネコン談合経験者の告白

2018年3月 6日 06:40

20120608_os01-thumb-480x360-4093.jpg 今月2日、リニア中央新幹線の建設工事を巡り、東京地検特捜部が大成建設元常務執行役員(現顧問)の大川孝容疑者と、鹿島建設土木営業本部専任部長の大沢一郎容疑者を独占禁止法違反容疑で逮捕した。大林組と清水建設を加えた大手ゼネコン4社で、不正な受注調整(談合)をしていた疑いだ。
 談合に対する批判がマスコミを賑わせているが、談合自体は今に始まったことでなく、過去何十年にもわたって続けられてきた。その象徴的な事業が、じつは政治の中心地である永田町にあるという。
 かつて大手ゼネコンの本社に勤務し、営業担当として談合に加わった経験のある人物が、HUNTERの取材に応じて内幕を明かした。《写真は首相官邸。左奥が旧官邸(現・首相公邸)》

■なくならぬ談合とその背景
 HUNTERの取材に応えたのは、15年ほど前まで大手ゼネコンの営業本部に勤務していた人物。記録も残しており、その証言は生々しかった。現在も永田町との関わりが深いということで、具体的な事業名や人名を記事にしないという条件で話を聞いた。

――談合に関わった経緯と当時の状況を教えてください。
私がいた営業本部の机の周りには、建設省、運輸省(ともに現在の国土交通省)、農水省、日本道路公団、水資源公団、首都高速道路公団、防衛省、海上保安庁などのOBが数多く在籍していました。
 入札情報はこうしたOBたちが集めてきて、仲間と連絡を取りながら「これはうちじゃない」「これはうちの案件だ」など判断して入札に応じていました。いわゆる談合です。
 営業本部に在籍した4年あまりで数百回入札に参加しましたが、談合が成立しなかったのは2回だけ。業界内での決まり事は、何十年にもわたって続いているんです。

――「政治家の関与」がマスコミに取り上げられることがありますが……。
 暴れん坊で有名だった千葉県選出の議員から「俺のパーティー券を2千万円買え。そうでないと千葉で仕事ができなくなるぞ」と脅されたことはありますが、これは希なケースでした。
 実態は各省庁の天下りによる談合が全てだと言ってもよいくらいで、例えば防衛施設庁から10人ほど天下りを受け入れれば、翌年には受注が数十億円増えるという、あからさまな数字が出ていました。

――リニア疑惑で大手ゼネコンが特捜部の捜査対象になっています。はやり大手4社の力は抜きんでているのですね?
 今回は公共事業に近いリニアの入札ですが、発注は民間のJR東海。スーパーゼネコン4社が主導したことは明らかです。周到に連絡を取り合い受注していたのだと思います。
 トンネル工事は、軟弱地盤や固い地盤にぶつかると難工事となり費用がかさむ特徴があります。単純には単価が算出できないんです。そのため地盤の変化があると、随時契約の形で変更が可能となる。時には損失を覚悟で受注し、その埋め合わせを他の工区で受注するというのが業界の鉄則ですね。
 今回はその受注の中で中堅ゼネコンとの調整がつかず、内部告発から発覚したという事件なんです。

――「談合は悪」という感覚はないようですね。
 談合がすべて悪かと聞かれると、必ずしもそうとは思われない面もあります。
 現在の入札は、かつての「指名競争入札」から「一般競争入札」へと主流と変化しています。談合撲滅などと言われてきましたがが、一般競争入札や総合評価方式が、うまく機能しているとは思えません。とくに、総合評価方式は役人が一役買うため、以前よりタチが悪くなっています。まあ、談合は無くならないということです。

――必要悪だということですか?
 例えば記者さんが家を建てるとき、複数の建設会社の見積もりをとった後、一番安い建設会社を選びますか?もちろん安いだけの会社を選ぶこともあるでしょうが、“信頼できる建設会社”を選択するケースが多いはずです。家は一生ものですから、当然ですよね。忘れてならないのは、建築のレベルを比較した時、中小と大手ゼネコンでは品質に大きな違いがあるということです。大型公共事業ではなおさら。だからスーパーゼネコンは強い。

 こんなケースもあります。中京地区のある自治体での話なんですが、公共工事を一般競争入札で受注した業者の中に悪質なところがありまして、他社よりも極端に安い額で落札して、施工後しばらくして「地盤に問題がある」「変更契約しろ」と自治体にクレームをつけてきた。結局ほかの入札参加社の提示した額よりも大きな支出を自治体に強いていたんです。担当職員は大変だったと思いますよ。常に一般競争入札で低い金額の方が良いという訳ではないのです。「談合は必要悪」といわれる所以です。

■永田町は談合の象徴
――政治の力をもってしても、談合はなくならない?
 笑ってはいけませんが、永田町こそ一番の談合の象徴でしょう。国会関連事業の入札結果を見てみれば分かることです。次は参議院の清水谷宿舎の建て替え工事が予定されていますが、どこが受注するか推理してみてください。

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――業界の人間なら容易に想像がつくと……。
 わかっていると思いますよ。具体的な社名は勘弁して下さい。

――官邸や議員会館、議員宿舎の工事はすべて談合と考えてよろしいんでしょうか?
 でないと、まとまらないんです。ただ、官邸についてはちょっと違っていて、昭和初期に建てられた旧官邸は、清水組(現・清水建設)が請け負ったもので、かつては官邸の敷地のなかにはメンテナンスのために「清水建設官邸事務所」があったほどなんです。だから清水。特命随契に近い形で、新官邸の落札者が決まったという経緯があります。

――3棟ある議員会館の落札状況は、実に分かりやすいですね。
 そうでしょう。みごとに仕事を分け合った。衆議院の第一、第二を大林が落札。その入札の対抗馬だった鹿島、清水、大成グループが参議院会館を落札しました。談合以外の何物でもない。

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*手前から衆議院第一議員会館、同第二議員会館、一番奥が参議院議員会館

――政治家の関与はあったんですか?
 ゼネコン主導です。政治家が介入してどうにかなる話ではないんです。政治家が何か言うとすれば、せいぜい下請けを入れてくれという程度。業界の秩序を乱せば、政治家の方が傷が大きくなる。もっとも、官邸のご意向が働けば別でしょうが……。永田町のことはもう……。

――最後に、リニア疑惑は政界に届きますか?
 無理でしょう。特捜部の捜査がバッジに届くとは思えない。与党がらみなら、なおさら。これだけ官邸の力が強い中で、リニアの工事に介入できるほどの大物を狙うとは思えない。介入した政治家はいると聞いてますが、大きな受注の枠組みを左右するほどではなかったと思います。ただ、ゼネコン側から『お伺い』を立てた可能性はあります。「今度、どこそこの工事を受注します。よろしく」ということで――。談合を容認しているのは、じつは日本の政治なんですから。



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