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八百長審議でカジノ法案強行採決

2016年12月 6日 08:25

gennpatu 1864410756--2.jpg これでは八百長ではないか。カジノ法案を巡る審議は、そんな気分にさせるものだった。「勝負は形だけ、やったふりをしとけばいい、結果は自分たちの思い通りになる」。そんなおごりが、自民党の国会議員にはある。
 今月2日の衆院内閣委員会。カジノ法案は、自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決された。審議はたった実質5時間半。カジノ解禁の抱える問題や不安の大きさに比べ、あまりに短かった。だが、量の問題だけではない。その質もまた、カジノ解禁の問題や不安を膨らませるものだった。

議場で般若心経
 カジノ法案が審議入りした11月30日の衆院内閣委員会を振り返ってみたい。質問者は自民党の谷川弥一氏だ。谷川氏はまず、カジノ解禁に賛成との立場を明らかにした上で、解禁の目的や効果、依存症対策、入場者規制といったテーマについて、「どのようにお考えか」などと尋ねた。どれも重大なテーマだが、ほとんど手元の紙を読み上げるだけで、深掘りされることはなかった。

 谷川氏は「で、一応質問は終わったんですが、あまりにも時間が余ってるんで」と断って話し出すと、それまでとは打って変わって生き生きとし始めた。賛否の割れる法案の審議を強行した政党の議員が「時間が余ってる」などと発言したことには耳を疑ったが、その後に延々と続けられた話の内容にも驚かされた。形ばかり、カジノ法案との関連付けをしてみせたものの、「般若心経のありがたみ」や「漱石文学への思い入れ」、「山頭火の自由律俳句の披露」と、ほとんどカジノ法案の中身とは関係のない持論の開陳に終始したのである。(詳細は最後に掲載したので興味のある方はご覧いただきたい)

“無邪気な発言”では済まない
 谷川氏が、なぜカジノ解禁に賛成なのか、この日のやりとりだけでは、よく分からない。国会で持論を開陳することに快感を覚えているだけの、ある意味では“無邪気な発言”と受け取る向きもあるかもしれない。だが、足元を見つめれば浮かんでくるものはある。

 谷川氏は、衆院長崎3区選出。壱岐、対馬、五島といった離島に加え、大村市や佐世保市の一部などを選挙区とする。佐世保市には、カジノ構想を掲げているテーマパーク「ハウステンボス」がある(ハウステンボスの所在地は厳密には長崎4区に含まれるものの、地域としては一体だ)。その構想は、「西九州統合型リゾート研究会」がまとめた「九州・アジア統合型リゾート構想(案)」に詳しい。構想案によれば、ハウステンボスにカジノを含むリゾート施設を作った場合の経済波及効果は約2,544億円にのぼるという。雇用者誘発効果は1万1,062人と試算している。

 谷川氏は、こうした構想案を抱えた地域から選出された議員として、自らの背景を踏まえた発言をするべきだろう。地元に利益を誘導したいのであれば、なぜそうした方が良いのか、課題はどう解消していくのか、正々堂々と論じるべきだ。それが長崎3区の有権者に対しても、長崎3区以外のすべての有権者に対しても、責任のある態度だろう。国会は般若心経のありがたさを説くための場所ではない。

構想案から見えてくるもの
 2012年6月にまとめられたという、この構想案にも寄り道してみたい。そのタイトルは「日本を元気にする九州の提案」。冒頭に掲げられた文章は、もっともらしい。

 リーマンショック以降の長引く景気の低迷と、歯止めがきかない円高など、我が国を取り巻く経済環境は依然として厳しい状況にあります。また、平成23年3月11日に発生した東北大震災は日本の経済だけでなく、世界の人々の心に大きな傷跡を残しました。

 しかし、我々は如何に厳しい状況下にあっても、未来を担う子どもたちに力強い日本を残す使命があります。

 そのためには、ひとつの企業、ひとつの自治体、ひとりの力の枠を超え、互いが持つ力を結集し、未来のビジョンを描き、その実現のための戦略をたて、着実に実行していくことが必要です。

 不況や震災を乗り越えて、未来を担う子どもたちに力強い日本を残すのだという。聞こえはいい。だが、長崎、佐賀、福岡3県の経済界が音頭を取り、研究会を発足させたのは2007年8月。「いざなぎ景気」を上回る戦後最長の5年9カ月に及ぶ好況のさなかだった。リーマンショックと東日本大震災が起きたのは、研究会発足の後のことだ。構想案の文章には、「世界の人々の心に大きな傷痕」を残した直後(いや、まだ傷痕になる前の、傷が癒えていない震災1年後)に、カジノ構想を打ち出すことへの後ろめたさがにじみ出ている。同時に、「何が何でもカジノをやりたい」という思いがあふれてしまっているように感じる。まじめに働き続けた末にマネーゲームのあおりを受けて職を失った人たち、東京五輪・パラリンピックでも大義名分に利用された東日本大震災と原発事故に見舞われた人たちに、こうしたお題目はどう響くだろうか。

 リーマンショックで工場の撤退が相次ぎ、原発事故で故郷を追われる事態が起きて、とりわけ地方の疲弊と混迷は深まった。構想案の言う通り、「未来のビジョンを描き、その実現のための戦略をたて、着実に実行していくこと」は必要だが、巨大なカジノリゾートが本当に地域が求める答えなのかは疑わしい。私たちはもう、大企業に地域ごと依存するような、これまでのやり方の危険性を知ってしまった。

 構想案は「未来を担う子どもたちに力強い日本を残す使命があります」と言う。カジノを解禁することで、未来を担う子どもたちに何をどう残していくことになるのか、そのことを突き詰めて論じ合う場こそが、国会だ。繰り返しになるが、国会は般若心経のありがたさを説く場所ではない。

巨大な権力の危険な賭け
 国会は今や言論の府ではなくなってしまった。背景にあるのは「数の力」だ。今夏の参院選、憲法発議に必要な3分の2の議席を占めるか否かが焦点となり、結果、改憲勢力は衆参の3分の2を突破した。だが、ふたを開けてみれば、実に27年ぶりという、また別の一線も越えていた。衆参で単独過半数を占める、というラインだ。法案の採否は多数決による。過半数を占めた自民党は、他党の納得を得られなくても、他党の反対を無視しても、法案を通すことができる。今の自民党は、派閥が健在で党内議論が活発だった27年前とは異なる。歴史的にも珍しい巨大な権力が生まれている。

 カジノ法案を巡って、自民党は、地方公聴会の開催や参考人質疑といった単独過半数を取る前に与野党で合意していた手続きを踏まなかった。連立のパートナーである公明党が異例の自主投票となったのも、慎重論が根強いという法案固有の問題に加え、党内で議論して意見をまとめる時間を与えない自民党の強引な国会運営によるところが大きい。そもそも、今国会ではTPP法案、年金法案と強行採決を連発したために、賛否が分かれるカジノ法案をじっくり議論できる状況ではなかった。

 この巨大権力に比べれば、監視する側のメディアの力は見劣りすると言わざるを得ない。今回ばかりは、新聞各紙がこぞって反対したが、権力を思いのままに操ってはばからない自民党が聞く耳を持っているようには見えない。それでも、いや、だからこそ、最後に在京5紙の見出しだけでも拾ってみよう。

・毎日「唐突な採決に反対する」(2日)

・日経「拙速なカジノ解禁は問題多い」(3日)

・産経「懸念解消を先送りするな」(2日)

・朝日「危うい賭博への暴走」(2日)

・読売「人の不幸を踏み台にするのか」(2日)

 新聞各紙が懸念するように、「唐突」で「拙速」な、「懸念解消を先送り」した「危うい」「暴走」は止まらず、「人の不幸を踏み台にする」ことになるのだろうか。そんな危険な賭けに出る前に、議論すべきことは山ほどある。十分納得した上で参加し、八百長やイカサマはしない。これは国権の最高機関たる国会ではもちろん、カジノでも守らなければならない最低限のルールだろう。

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【谷川氏の質疑の一部】
 で、一応質問は終わったんですが、あまりにも時間が余ってるんで、えー、地元のことを一点、これは答えにくかったら答えてもらわなくても結構です。で、最後に私見を述べて終わります。

 で、えー、地元のことですが、私の地元長崎県は、恥ずかしいことですが、5年間で約5万人人口が減っております。その最大の理由は水産業なんです。東シナ海という大変いい漁場を持って、私の出身の五島列島を中心に、伊勢エビ底引きとか巻き網がどんどん出て、大変な経済的な効果があったんですが、今から言う理由によって、もうガタガタになっております。

 一つは中国が川魚を主としたのが海の魚に移ってきて、東シナ海に約2万隻出ております。日本は800しか出ておりません。そのことによって、伊勢エビ底引きはほぼ壊滅状態になっております。巻き網もほとんどそれに近い。もう一つは温暖化によって住む魚が、地域が違った。西の魚が山陰沖に行き、山陰が青森の沖あたりに移って行ってる。3番目が消費者の魚離れによってお肉をパックでぱっと買っていく。4番目が冷凍技術の進歩によってノルウェーの魚が瞬間冷凍して日本に持ってきて解凍したら、すぐその辺の魚と同じ状況になってきた。つまり産地の優位性が崩れてるんです。この4つはどれも簡単に解決できません。できないと思います。そうすると、水産の復興というのは、もう、まず養殖を確立させない限り、あり得ないかなと思っている。

 もう一つは歴史の宿命ですが、造船業は韓国、中国にほとんど移ってですね、主産業の造船業は長崎県はもう思うに任せません。そうすると何でやるのという話になるんです。私は口を酸っぱくして観光をやれと言っているんですが、なかなか思う通りやってくれません。これを言うともう個人攻撃になるので、中身は言いません。非常に、私は経営感覚はまあ人並み以上に優れていると思っているんで、これをやれ、あれをやれ、これをやれると言うんですが、一つも実行してくれない。そういう中で、このIRっちゅうのはすごいなあと思っているんで、独り言ですが、まあ、所見があったら教えてください。

(答弁を挟んで再び谷川氏の発言)

 えー全部、時間を使おうと思っておりませんが、また私見ですが、一番心配は、批判している人も言っている通り、負の部分ですね、この法律による。負の部分。それで提案ですけども、私はこれ私見ですよ。人間の本能ちゅうのは、苦しいことは避けて楽を求める。これは僕は本能だと思うんです。そうすると、そうすると良い結果が出ないんでですね、悪い結果に対して、人のせいにして言い訳する。これを私は保守本能、美化本能と言っているんですけど、これに対抗するには実は5つありますよ、5つ。

 一つは、人生に壮大な目標を持つこと。これは私見ですからどこにも書いてませんよ、私が勝手に言っているだけですから。二つは、このまま放っといたらどうなるかなあ。例えばどんどんどんどん借金を重ねていってますが、日本は。このまま放っておいたらどうなるかなあと言って将来に対する危機感を持ってそれに構える。三つ目はあいつには負けたくないよという負けん気を持つ。四つ目が恥ずかしいんですけど、愛ですよ、愛。家族を守る。女房子供を守るために命がけで働く。自分のことは自分でやる。五つが宗教なんです。宗教については日本の社会は触れたがりません。憲法違反とか言って。しかし、我々の先祖はもともと一週間に一回ぐらいお寺に行ったり教会に行ったりしとったんです。なんでやれないのかなと思っているんですけど、現実はやれない。

 例えば宗教について一つ触れるとですね、私は禅宗なんで禅の勉強を40の記念に3年やったんですが、般若心経というのがあるんです。観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄っちゅうんですが、その根底にあるのは、般若っちゅうのはですね、般若波羅蜜多っちゅうのは、般若は知恵なんです。蜜多ちゅうのは行くなんです。で、えー、ハンニャーハーラー、波羅が彼岸。幸せになるための道ということなんです。どうしたら幸せになるのと言ったら、無念無想で生き抜けっちゅうんです。言い訳するなっちゅうんです。75分の1秒単位で、わーっと行けって言うんです。行けますかね。あなたがんで死にますよと言われて、さて無心になれるのかなと私は自問自答するんですが、それはできないと思いますよ。できないでも泣きながら這いずり回ってでも1日でも生きようとする。これが実は般若なんですが、こんなことを徹底してやっていかないと解決できない部分が出てきますよ、このIR法案には。やってほしい、けど、負の部分もあるよ、いうことをよくよくお考えいただいてもう一回、宗教については見直せないのかな。自分の宗教でいいじゃないですか。全否定するんじゃなくて。どれをやれって言ったら問題だけど、自分の宗教なら徹底してやるよということを議員それぞれ考える時期に来ているんじゃないかな。膨大な借金、人のせいにする、平気で人のカネを使う、それをなんとも思わない、当たり前だと言って推奨する新聞もあります。政党もあります。そういうことを僕はここでぜひ立ち止まって考えていただきたい。これがIR法案の負の部分に対する私の心構えなんだ。

 もう一つぜひお願いしたい。私は文部副大臣のときに、夏目漱石を読んだことのある人はおれと語ろうよ、来いよって言って手を挙げさせたけど、誰も来ませんでした。へえ、最近の文部省ちゅうのは、漱石も読んでないのかよ、と思ったんですが、私は「猫」と「草枕」については、全部、何ページの何行目から何行目はこれは行けるぞ、これはこの法律について書いてあるよと、ずーっと書いて持っている。私はキチガイみたいに実は漱石が好きなんです。全巻12回ぐらい読みました。

 そういうことの中で、例えば「まっすぐな道でさみしい」とかですね、「日ざかりの地蔵様の顔がにこにこ」とかですね、「しぐるるや人の情けに涙ぐむ」とか、全部山頭火なんですが、こういう部分をもうちょっと見直していただきたい。教育面で。

 そういうことをもういっぺんですね、人の心を、例えばAIが普及したら49%失業する。どうするんですか。やっぱり心を耕す仕事をもういっぺん我々は考えんといかん。そうすると、心を耕す仕事ってなんだっていうと、文学であり、彫刻であり、陶芸であり、三味線であり、それから宗教なんです。

 そういうことを構えていかないと、このIR法案の負の部分についての抜本的な解決にならんぞ。そういうことを提案して反対するならいいけども、何も提案せんで負の部分だけ見て反対、反対っていうのはいかにも芸がないよと。それを本当は言いたいんです。もしご所見があったら承って、もうこれで終わりますから、おきたいと思います。

(正式な議事録ではなく、中継動画から文字に起こした。万が一、誤字脱字、聞き間違いがあればご指摘いただければありがたい)



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