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拡がる政務活動費問題 問われる“選良”33,557人の仕事ぶり

2016年9月28日 10:00

 富山市議会で発覚した政務活動費の不正使用。次から次へと詐欺的手法が明るみに出、定数40の同市議会で4分の1にあたる10人もの議員が辞職もしくは辞職表明する異常事態となった。政活費がらみでは富山県議会でも3人が辞職、他県の自治体でも不正の報道が相次いでおり、号泣県議から続く政活費をめぐる騒ぎは収まる気配さえない。
 たしかに政活費の不正使用は問題だ。だが、議員の話に関しては、“そもそも論”が欠けているように思えてならない。この国の地方議会は、本当にその機能を果たしているのか――。

問われるべきは地方議員の活動実態
 下は、総務省が把握している地方自治体の数と議員数を一覧表にまとめたものである。

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 47都道府県の議会議員と1,718市長村の議員、これに東京23区の議員を合わせると定数は33,557人となる。死亡や辞職による欠員がいるとしても、狭い国内に33,000人以上の“選良”がひしめく状況だ。彼らには、自治体の規模に応じて月額数万円から百万円近くの給与が支払われているが、原資は税金。政務活動費の不正使用は大問題だが、まず問われるべきは地方議員たちが給与に見合った仕事をしているかどうかという点だろう。

 33,000人を超える選良たちは、選挙のたびに「公約」を訴えバッジを手に入れる。その公約の大半が、バラ色の未来を約束する内容であることは周知の通りだ。これだけ多くの議員が地域の発展や暮らしの充実を約束したのだから、日本全国すばらしい地域になっているはず。しかし、現実は違っており、「政治家は口だけ」「誰がやっても同じ」とあきらめる有権者が増えるばかりである。責任はもちろん、選良たちに在る。

 地方自治は2元代表制。議会には首長の施策をチェックするという重要な役割がある。だが、首長を選挙で支援した政党の会派が与党を構成するため、議会と自治体執行部の慣れ合いが常態化。少数会派が失政を追及しても知らんふりで、逆に役所側を助けることの方が多い。議会質疑にしても、ガチンコ勝負が影を潜める状況。たいていの議会が、事前に役所側と質疑の内容をすり合わせしており、本会議はパフォーマンスの場と化している。

 議員の活動実態にも問題がある。多くの地方議員は、事実上地ご町内の御用聞き。地盤となる地域の要望を叶えるためには役所を使うしかない。力のある議員は役人に命令して終わりだが、当選回数の少ない議員は頭を下げるしかないため、役所の不行跡を責めることができない。首長側と議会の癒着は深刻だ。

 分かりやすい例がある。今月、福岡県大川市の市議会が、衆院福岡6区の補欠選挙(10月11日告示、23日投開票)に出馬するため辞職した鳩山二郎前大川市長の事前運動期間を確保するため、例年19日間開いている9月定例会を5日間に短縮するという暴挙に及んだ。市議会議長は、「審議は尽くせる」と強弁したが、それまでの19日間は無駄な日程だったと白状したも同然。“市民の暮らしより有力者の選挙”というのだから、呆れるしかない。2元代表制や議会制民主主義を冒涜する議会に、存在意義はあるまい。

 問題の政務活動費だが、千葉県一宮町の月額1,000円から東京都の60万円まで様々。支給額が大きくなるに従い、使用実態が分かりにくくなる傾向が強い。総務省が把握しているのは議員一人当たりの支給額に過ぎず、全国で費消される政務活動費の正確な額は、つかめないのが現状だ。

 給与に政務活動費――多額の税金を費消する33,000人以上の地方議員たちは、本当に住民のために働いているのだろうか?



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