政権に批判的な報道を封殺しようという政治家たちに、次々と「政治とカネ」を巡る疑惑が噴き出している。
安倍晋三首相に近い自民党若手が開いた勉強会「文化芸術懇話会」で、「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」などと発言。党から厳重注意処分を受けたあとも同様の発言を繰り返している大西英男衆院議員(東京16区)が代表を務める自民党支部が、選挙区内に住む男性二人に「結婚祝い金」を支出していたことが明らかとなった。公職選挙法は、政治家による選挙区内への寄附を禁じており、これに抵触する疑いがある。
政党のカネで「結婚祝い」
不適切とみられる支出を行っていたのは、大西議員が代表を務める「自由民主党東京都第十六選挙区支部」。同支部が東京都選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書によれば、同支部は平成25年7月と11月、大西氏の選挙区である江戸川区内に住む男性二人に、「結婚祝い金」としてそれぞれ30,000円を支出していた。政治活動費のなかの「交際費」として処理されているが、結婚祝い(祝儀)は即ち寄附行為。政党交付金が入る団体のカネで、公然と買収が行われた格好だ。(下が同支部の政治資金収支報告書)
公職選挙法は、政治家が選挙区内で行う寄附について、『いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない』と規定。さらに、『政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の政治上の主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるものは、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない』とも定めている。自由民主党東京都第十六選挙区支部による結婚祝い金は、同法に抵触する疑いが濃い。
大西氏側――「結婚祝いは合法」
“結婚祝い金は違法ではないか”――大西議員の事務所に確認を求めたところ、責任者は次のように回答している。
「党の活動に多大の貢献があった方が結婚されるということで、祝い金を出した。祝儀袋には『自由民主党東京都第十六選挙区支部』と記しており、問題はない。選管にも確認しており、こちらとしては違法性はないと考えている」
区議政治団体への寄附で食い違いも
同支部の政治資金収支報告を巡っては、選挙区内の区議らが代表を務める政治団体への支出にも疑義が生じている。下は同支部が行った政治団体への支出を記載した報告書のページだ。
確認したところ、赤い星印とアンダーラインで示した「秀和会」及び「江戸川知山会」への支出が、相手方の団体の収支報告書に記載されていなかった(下参照。クリックで拡大)。
両団体とも江戸川区議の資金管理団体。「秀和会」(代表:島村和成区議)の政治資金収支報告書には、自民支部から支出されたことになっている6月の10万円が収入として計上されていない。一方、「江戸川知山会」(代表:片山知紀区議)の報告書には、自民支部からの3回分、計30万円の記載がないだけでなく、すべての収入、支出が「ゼロ」。カネの出入りが一切なかった形だ。大西議員の自民支部と区議らの政治団体で食い違うカネの出と入り。どちらの報告内容が正しいのか分からない状況だ。
大西議員側の説明によると、「区議の政治団体に確認したところ、収入の記載を怠ったミスだと分かった。区議らの団体が早急に修正を行う」のだという。しかし、政治資金収支報告書は、備え付けが義務付けられた「会計帳簿」を転記したもの。1件でも収入を見落とせば、合計金額まで違ってくるはずだ。収入も支出も「ゼロ」として報告した江戸川知山会のケースに至っては、帳簿の内容自体がまったくのデタラメだったことを証明しており、虚偽記載であることは明白。真偽のほどはわからないが、自民党議員による杜撰な政治資金処理が浮き彫りになったことだけは確かである。
政党交付金1300万円を懐に入れた形となっていることが判明した井上貴博議員に続き、大西氏にも公選法違反の疑い。言論弾圧の急先鋒二人に、政治家としての資質が問われている。(参照記事⇒「消えた1300万円 言論封殺の自民・井上貴博議員に疑惑発覚」)