自動料金収受システム(ETC)の普及で、様変わりした高速道路の料金所。大半の車がETC専用のゲートを通って高速道路を出入りしているのが現状だ。しかし、ETC車載器をセットアップしている車は全体の約6割。まだまだ料金収受係員のお世話になる機会も少なくない。
そうしたなか、HUNTERの記者が取材の帰りに利用した九州自動車道「太宰府インターチェンジ」の料金所で、気になる対応があった。その顛末とは……。
1円玉が使えない!?
国内の自動車保有台数は、平成27年2月末現在で81,093,798台(国土交通省HPより)。2001年12月から全国展開されたETCは年々規模を拡大し、今年4月時点で累計約5,000万台の車がETC車載器をセットアップするまでになった。直近のETC利用率を調べてみると、全国の高速道路利用者の約9割がETCを使っているという。
すっかり定着したETCだが、4割の車は未装着。高速の料金所には、そうした車のために有人の料金収受所がある。割合は少なく、料金ゲートの端に一カ所か、大きなインターで2か所程度。取材で、たまに高速道路を利用する記者も、お世話になることがある。
そんな有人料金所での出来事。記者が県南地区における取材を終えての帰路、九州自動車道「太宰府インター」から福岡都市高速に入るゲートでのことだったという。
料金は、九州道の料金に都市高の通行料金を加え1,460円。財布の中には千円札が5枚に百円玉が4枚、50円玉も1個ある。しかし、たまたま10円玉が不在。あとは1円玉と5円玉しかない。1,450円はそろったが、10円足りない。やむなく1円玉5個と5円玉で支払おうとしたところ、料金所係員の意外な対応。「細かいのは、やめてもらえませんかねぇ」と、1円玉と5円玉を突き返されてしまった。
混乱したのは記者。(あれ、1円と5円は使えなかったっけ?)、(支払い方法が変わっていたのかな?) ―― あれこれ考えるが、高速道路で1円玉と5円玉が使用禁止になったというニュースには記憶がない。
(いやいや、そんなはずはない)。思い返して、“九州道では、1円と5円は使えないのか”と尋ねたところ、係員はきっぱりと「はい」。続けて「後の車のために、ご協力ください」。自信たっぷりの対応に、記者の頭は混乱するばかり。
いつ支払方法が変わったのか聞こうとしたが、バックミラーには後続車がズラリ。夕方の混雑時間帯であったことから、記者は納得できないまま、1,000円札を出して支払いを終えた。
どうにも納得できない記者が周辺に聞いたところ、友人の一人が、似たような経験をしていた。やはり太宰府インターでのことだったらしく、1円玉10枚を交えて支払おうとしたところ、つっけんどんに「10円か50円はありませんか」と言われ、あわてて財布の中をひっかき回したのだという。太宰府インターの料金所は、1円玉と5円玉を嫌っているようだ。
1週間後。再び太宰府インターで前回と同額の料金を支払うことになった記者が、1円玉5枚と5円玉1枚を差し出し「これで払えますよね」と念を押すと、係員は苦笑い。受け取り拒否こそなかったものの、あからさまに嫌そうな顔をみせたという。
1円玉、5円玉での高速料金支払いは、業務に支障が出るとでもいうのか ―― 九州自動車道を管理・運営している「西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)」に話を聞いたところ、1円や5円での支払いには何の問題もないという。太宰府インターでの出来事については、「現場の係員が、何か勘違いしたのでは」として、注意を促すことを約束してくれた。やはり1円、5円は使える。記者は、たまたま自分勝手な係員にあたった、ということだ。
通貨法―硬貨は20枚までOK
ちなみに、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(貨幣法)の第7条は、貨幣の使用枚数について、次のように規定している。『貨幣は、額面価格の20倍までを限り、法貨として通用する』 ―― つまり500円玉なら1万円まで、100円玉なら2,000円まで、50円は1,000円、10円玉は200円、5円玉は100円、そして1円玉なら20円の支払いまでOK。相手は受け取りを拒否することができない。同法の規定を知っていれば、太宰府インターで不愉快な思いをせずに済んだはず。不見識な記者が、改めておしかりを受けたのは言うまでもない。