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統一地方選 まかり通る法令違反
― 問われる政治の質 ―

2015年4月 8日 08:00

統一地方選 3日、道府県議会議員と政令指定都市の市議会議員選挙が告示された。福岡市内でも市議や県議の選挙カーが入り乱れ、早朝から夜8時まで声をからしての連呼。見慣れた風景とはいえ、うんざりである。この方々が、政治家としての使命を果たしているとは思えないからだ。
 政治家が公約を守り、議会人として誇れる活動を行っていれば、政治不信を招くことなどあるまい。しかし、各種選挙の投票率は下がる一方。有権者の多くが、「誰がやっても同じ」「何も変わらない」と感じている。
 投票率の低下に比例して、政治家の質も落ちた。街では、それを象徴するかのように公選法や条例を無視した選挙活動がまかり通っている。

変わらぬ選挙手法
 名前の連呼や街頭演説の絶叫。目の色を変えて票取りに走る候補者たち。選挙の度に同じ光景が繰り広げられる。訴えにしても、似たり寄ったり。変わらぬ政治を象徴しているかのように、どの選挙カーも同じ文言を垂れ流す。

 ―― あたたかいご支援を心からお願い申し上げます
 ―― どうぞお力を貸し下さい
 ―― あなたの1票を○○へ

 声をからしてしているのは、大半がウグイス嬢と呼ばれる車上運動員。候補者は笑顔で手を振り、頭を下げるだけだ。たまにマイクを握ったかと思えば現職は実績を強調し、新人は現状を批判する。そうした構図にも変化はない。一番不愉快なのは、政策とは関係のない言葉の連発。

 ―― 元気いっぱい頑張っております
 ―― 一生懸命頑張ります

 一体何を頑張っているのか――もちろん選挙であって、その後の政治活動ではないことは、有権者が一番よく分かっている。地方議員の仕事とは、地域からあがってくるお願い事をさばき、会合に顔を出すこと。議会活動に精を出し、市政のチェックを行っているのは、ほんの一握りの議員だけだ。「税金泥棒」という言葉は、政治家に向けられて然るべきだろう。

 ちなみに、ウグイス嬢は選挙後のことについて責任を負う必要がない。しゃべりの上手さだけが、重要なのである。公選法の規定に従えば、ウグイス嬢への日当は15,000円が上限。しかし、抜け道を使って2万円~3万円という高額な報酬が支払らわれているケースも少なくない。もちろん違法だが、ウグイス嬢の報酬がらみで逮捕者が出たという話は聞いたことがない。“選挙になったら、何でもアリ”――警告程度は屁とも思わないという風潮がはびこっている。そうした実例が下の写真だ。

違法な歩行遊説
 市内南区の幹線道路沿いでの光景。市議候補を先頭に、「○○△△でーす」と叫びながら、7~8人が練り歩いている。業界用語でいう「桃太郎」。踏んでいるのは視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)だ。後ろから1キロばかり付いて行ってみたが、ずっとこの調子だった。

川上陣営

 一行とともに進むのは、候補者名を大書した3本の“のぼり旗”。明らかな法律違反である。公職選挙法が選挙中の使用を認めているのは、選挙事務所や選挙カーの看板、選挙用ポスター、“たすき”程度。候補者の氏名が記されたのぼり旗は、認められていない。選挙捜査担当の警察官が現認した場合は、即刻警告が発せられることになる。写真は、2期目の挑戦となる自民党市議の陣営。選挙のイロハを知らなかったなどという言い訳は通用すまい。知らなかったとすれば政治家失格。知っていてやっているのなら、ただの無法者ということだ。

「街路樹」に告知用看板
 ルール無視は自民党に限ったことではない。選挙の度に見かけるものの一つに「ステ看」がある。ステ看とはつまり「捨て看板」のこと。高さ2mほどの枠組みだけの簡易な造りで、一度限りの使用に供されるのが普通だ。文字通り、すぐに捨てることを前提としており、選挙時には、主として街中の電柱や街灯の支柱に括りつけて、「大物」が特定候補の応援に駆け付けることを周知するのに使われている。同じように、厚紙やベニヤで裏打ちした告知用看板もある。

 下は、福岡市南区内の道路沿い。民主党・前原誠司元代表の来福を告げる告知用看板だ。葬儀案内を彷彿とさせる白黒デザインの看板が括りつけられていたのは、なんと街路樹の幹。民主党関係者は、平気で樹木を電柱代わりにしているのである。この神経には呆れるしかない。

ステ

 非常識であることはもちろん、街路樹に看板を括り付ける行為は、立派な「条例違反」である。「屋外広告物法」に従って制定された「福岡市屋外広告物条例」の第4条には、『広告物を表示し、又は掲出物件を設置してはならない』物件について、次のように定めている。

 (1)橋りよう、トンネル、高架構造物及び分離帯
 (2)街路樹及び都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律(昭和37年法律第142号)第2条第1項の規定により指定された保存樹又は保存樹林
 (3)銅像及び記念碑の類
 (4)公衆電話ボックス、公衆便所、郵便ポスト並びに路上に設ける変圧器及び配電器
 (5)信号機、道路標識、歩道柵、路上に設ける車止め、道路の石垣及び擁壁並びにこれらに類するもの
 (6)消火栓、火災報知機、防火水槽標識及び火の見やぐら
 (7)電柱、街灯柱その他電柱の類で市長が指定するもの
 (8)送電塔、送受信塔及び照明塔
 (9)煙突及びガスタンク、水道タンク、石油タンクその他タンクの類
 (10)景観法(平成16年法律第110号9第19条第1項の規定により指定された景観重要建造物及び同法第28条第1項の規定により指定された景観重要樹木
 (11)前各号に掲げるもののほか、市長が特に必要と認めて指定する物件

 法令に違反して選挙を行う連中に、政治を語る資格があるのか?――。答えは子どもでも分かるはずだ。



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