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食い物にされる「企業主導型保育所」

2018年12月14日 08:00

20181214_h01-01.jpg ある国会関係者が、知人から、来年の統一地方選挙に出馬希望の人物が手がけている事業で問題が発生したので、何とかしてほしいという相談を受けた。その事業とは「企業主導型保育事業」。企業が従業員のための保育施設を設置する際に整備費・運営費について助成する制度を使った保育施設の運営である。
 相談者の説明によると、通常の事業所内保育所を作るよりもメリットがあり、整備費や運営費が助成され、テナントとの共同利用も可能だということだったが、話を聞くうちうんざりしたという。その内容とは……。

■保育をカネ儲けの道具する区議候補
 安倍政権が進める「子ども・子育て支援新制度」の「企業主導型保育事業」とは、2年前に世間を賑わせた「保育園落ちた、日本死ね」で問題化した待機児童問題への対応策だ。民間主体(株式会社、学校法人、NPO法人など)で保育園を経営することが可能となり、内閣府の外郭団体「公益財団法人 児童育成協会」(1978年設立、2012年に「日本児童手当協会」から名称変更)が事業の窓口となっている。

 相談にやって来た人物が持ってきたのは2件の申請書。両方とも23区内の住宅地に施設を設置するというものだった。問題は、そのうちの1件。建物所有者の気が変わり、「やっぱり建物は貸さない」と言いだしたので、「申請を別の場所に出来ないか」という内容だった。却下されるのが怖くて、児童育成協会には相談しにくいという。

 この人物が、「このままでは、選挙資金が出なくなってしまう。そのために始めた事業なのに」と言いだした。国会関係者は、「目が点になった」と振り返る。企業主導型保育の事業者は、保育に対する関心や情熱があるわけでもなく、多額の助成金から利益を得ることだけを目的と考えていたのだ。ばかばかしくて相手にするのをやめたという。

 しかし、国会関係者は、児童育成協会から審査結果が発表されて驚いた。建物を借りて運営する片方の申請が「不採択」となり、賃借不可となった建物の申請に「助成決定」という、とんでもない結果だったのだ。協会の審査に問題があったか、何も見ていないかのどちらか――。“不正”を疑うしかなかったが、後日、某政党が保育をカネ儲けの道具にしている件の事業者を、区議会議員の候補者として公認したことで二度驚いたという。たしかに、有権者を馬鹿にするにも程がある。

■「児童育成協会」の体制に問題
 事業が採択された場合、どれだけの助成金が入るのか具体的に調べてみた。企業主導型保育事業を活用すると、東京特別区で定員20人の施設の場合、児童一人あたり、乳児250,480円、1歳児167,600円、2歳児167,600円、3歳児106,320円の助成金が国から渡される。その他、施設に対して基本単価8,090万円、地域交流・一時預かりスペース加算264万円、病児保育スペース加算2,101万円など助成金の額は大きい。仮に乳児5人、1歳児5人、2歳児5人、3歳児5人を預かる施設だとすると、月額346万円の助成金となる。利用者負担分を引いても、年間で3,324万6,000円。かなり高額の収入と言えるだろう。

 国が助成金を支出する事業であれば、参入する企業の経営状況や財務体質を児童育成協会が厳格にチェックする必要があるはずだが、実際には「書類が右から左へ流れていっているだけで、細かいチェックはしていない」(同協会関係者)というのが実情だ。前述の相談者のような、いい加減な申請でも通ってしまうわけだ。

 原因は、児童育成協会の組織にある。同協会は、「企業主導型保育事業は、審査担当62人、監査担当18人の計80人で運営」という少人数で、平成29年を調べると2,000件以上の助成決定をしている。しかも企業主導型保育事業への参入に際しては、認可保育園の申請に必要な「会社が3年以上存続していること」という縛りもなく、認可保育園よりも緩い基準で認可並みの助成が受けられる。参入企業が相次ぐのは当然の成り行きだ。実際に、2018月3月末時点で2,597施設・定員5万9,703人まで増加している。

 なぜ、こんないい加減なシステムが出来上がってしまったのかといえば、安倍総理の肝いりの政策であったために、内閣府が急ごしらえの組織を作ったからに他ならない。ここにも安倍政権に対する内閣府の忖度が見え隠れしている。

 そんな中、企業主導型保育事業で、今年度分の助成金の一部の支払いが遅れていることが分かった。理由は、内閣府が加算額を審査する基準となる要綱を出すのが、昨年度は4月下旬だったが、今年は6月にずれ込んだためだという。助成金の支払い遅れは、事業者にとっては死活問題となる。事業者から協会に問い合わせても電話がつながらず、つながっても「人が足りなくて審査ができない」「助成金をあてにされても困る」などと返答があったと報道されている。待機児童ゼロを目指すのは当然としても、人手が足りない状態で、保育をカネ儲けの道具にするような悪質業者の参入を簡単に許してしまうような児童育成協会の体制を放置しておく訳にはいかない。



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