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金正恩の独り勝ち 各国外交への疑問

2018年6月20日 08:20

 世界中のメディアが注目する中、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールで会談した。「歴史的」という形容詞が新聞の紙面に踊ったが、何が決まったのかというと、非核化の道筋も時期も示されておらず、「単なる顔合わせ」「政治ショー」との指摘にうなずくしかない状況だ。
 米国との雪解けムードを演出する一方、中国・韓国との関係を強化させる北朝鮮――。不必要になった核施設を破壊しただけのは、最も欲しかった「体制保証」への切符を手に入れている。
 蚊帳の外に置かれた日本を含め、各国の対応に間違いはないのか?

■金正恩の独り勝ち
 不可解というしかない。ついこの間まで、北朝鮮を狂気の独裁者が支配する国家として厳しく批判していたメディア各社が、手のひらを返したように金正恩を評価するようになった。

 韓国の文在寅大統領との2度の会談、トランプ大統領との“歴史的会談”を経て、評価を上げたのは金正恩だけ。韓国と米国のリーダーは、完全に彼の引き立て役だった。

 世界が注目したのは、北朝鮮が進めてきた核開発や弾道ミサイル発射実験を、本当に止めることができるかどうか――。朝鮮半島の非核化が実現すれば、たしかに「歴史的」な出来事となっていただろう。

 だが、いずれの会談結果をみても、「完全な非核化」は単なる努力目標。実際の非核化への道筋や確認の方法については、何も決まっていない。戦争も辞さない構えで強気の発言を繰り返してきたトランプ大統領は譲歩を連発。19日には、8月に予定されていた米韓合同軍事演習を取りやめることを表明している。

■「体制保障」は間違い
 言葉だけの「完全な非核化」と引き換えに金正恩が得たのは、「体制保障」である。北朝鮮の体制とは、金日成、金正日、金正恩と続く金一族による独裁。絶対的な個人崇拝を背景に国民を抑圧し、身内の粛清も辞さない狂気の国会体制だ。同国の人権侵害については、改めて述べるまでもあるまい。

 民間航空機や海外の式典会場にテロを仕掛ける国家、他国の国民を拉致し、その事実を隠蔽する国家――それが北朝鮮ではなかったのか。会談に応じたから体制を保障するというのは、金一族による一連の暴虐行為を容認するに等しく、それは「間違い」と言わざるを得ない。

 そもそも、命がけで脱北しなければならないほど追い詰められた北朝鮮の国民が、金正恩による独裁体制を望んでいるはずがなかろう。関係諸国による「体制保障」は、北朝鮮国民を見捨てることと同義である。

 北朝鮮国民はもちろん、各国にとって最も望ましい方向性とは、金一族による独裁体制を崩壊させること。ならば、鎧を付けたまま笑顔を振りまく独裁者を容認し、安易に「体制保障」を約束するのは早計にすぎよう。

■お粗末な安倍外交
 この数か月間、主役は北朝鮮の金正恩であり、韓国と米国の大統領は主役の引き立て役でしかなかった。それでも米韓二人の大統領が、ドラマの主要な出演者であったことは確かだ。
 翻って、我が国の宰相はどうか。南北の首脳が会談を実現させたという重要な時期には、上空を飛び越えて中東を訪問。誇るべき成果を残せず、日本に引きあげている。トランプ―金会談の際は、官邸で指をくわえて眺めているだけだった。

 「拉致問題の解決」を最優先課題としながら、二人の大統領に「金正恩に拉致のことを話してほしい」と頼むことしかできないふがいなさ……。安倍首相に、自主的な北朝鮮外交を期待するのは無理だ。「外交を任せられるのは安倍さんしかいない」とする声があるが、安倍外交のどこをどう見ればそういう評価になるのか聞いてみたい。

 韓国にとっても米国にとっても、最優先で確保するのは自国の安全で、北に「完全非核化」を迫るのはそのせいだ。同盟国の頼みとはいえ、他国の拉致問題は二の次、三の次というのが現実だろう。拉致問題を巡り、アメリカや韓国が、無理をしてまで北に圧力を加えるはずがない。外交は、義理人情ではなく、利害で動くものなのだ。

 誤解を恐れずに言うが、我が国の国民にとっての最重要課題は、やはり北朝鮮による核やミサイルの脅威をなくすことだろう。まずは非核化。次にミサイル攻撃の排除だ。拉致被害者家族の長年にわたる悲しみ、苦しみに報いるためにも同時進行で拉致問題に取り組むのはもちろんだが、拉致問題だけを“最重要”と位置付けることには違和感を覚える。

 安倍晋三首相は18日、参院決算委員会で「最後は私自身が金委員長と向き合う」として、金正恩氏との日朝首脳会談による日本人拉致問題の解決に改めて強い意欲を示したが、答弁のなかに、安全保障の話はほとんど出てこなかった。安倍さんにとっての拉致問題は、人気取りの道具でしかない。



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