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「賭博でひと儲け」のカジノ法 まかり通るヤクザの論法

2016年12月 5日 09:30

 実質審議5時間半。国会延長が決まると同時に、突然出てきた統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)が、今月2日に衆院内閣委員会で強行採決された。審議入りからわずか3日。自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決したが、慎重姿勢を示していた公明党をねじ伏せ、参考人招致を省くというゴリ押しの結果だ。
 繰り返される国民軽視の国会運営。カジノで経済発展を図るというのが法案推進派の主張だが、誰が考えてもそれは強弁。まるでヤクザの論法である。

賭博で金儲け=ヤクザの論法
 カジノ法案を推進してきたのは、カジノ解禁を目指し超党派で組織された「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連)。メンバーには、安倍晋三首相をはじめ右寄りの議員たちがズラリと並ぶ。当然、政権中枢は推進派ばかり。大臣だけで世耕弘成経産相、鶴保庸介沖縄担当相、金田勝年法相、山本幸三地方創生担当相、塩崎恭久厚生労働相、松本純国家公安委員長など6人。副大臣、政務官クラスまで数えれば、数十人が議連メンバーという状況だ。まさにカジノ政権。国民の知らないところで、賭博を推進する政治家がこれほど増えていたとは驚きだ。

 賭博好きにこの話は通用しないのだろうが、カジノの最大の問題は、ギャンブル依存症が増えること。日本はギャンブル依存症に陥る人の割合が多く、社会問題化して久しい。ギャンブルのために借金地獄に落ち、自殺するケースは数知れず。パチンコ狂いの親が、結果的に子供の命を奪ったケースなどは枚挙に暇がない。カジノにはまったあげく、議席を失った政治家もいる。国会の暴れん坊として知られた「ハマコー」こと浜田幸一氏は、ラスベガスのカジノでバカラ賭博にはまり5億円近く負けていたことが発覚。ハマコーさんは議員辞職を余儀なくされた。厚労省の調査によれば、ギャンブル依存症の患者は推定で約540万人。カジノ法が成立すれば、この数字がさらに増大すると見られている。

 カジノ法案は、カジノ、ホテル、商業施設などが一体となった統合型リゾート施設(IR)を促進するもの。政府は推進本部を設置し、1年をめどに実施法を整備するという。カジノ推進派は、カジノを観光立国や経済発展の起爆剤と位置付けているが、ラスベガスやマカオと日本の都市を比較するのは無理な話。環境も歴史もまるで違うのだ。賭博で人を呼ぶというのは、政策的には最低。そもそも、“賭博で金儲け”はヤクザ・博徒の考え方だろう。その昔、自民党の右派は暴力団・右翼との関係が良好だったが、いまや永田町がバッジをつけたヤクザの巣窟になっている。

日本維新の会のためのカジノ法 
 日本には、四季ごとに変化を見せる誇るべき自然と文化遺産がある。観光資源には事欠かない。賭博を観光の目玉にしなければならないほど、日本の各都市は力を失ってはいないはずだ。さすがに新聞各紙もカジノ法案に否定的。政権寄りの読売・産経でさえ拙速審議に警鐘を鳴らしていたほどだ。読売は今月2日、「カジノ法案審議 人の不幸を踏み台にするのか」との見出しで社説を掲載し、『賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である』として自民党の対応を批判している。

 味方の読売を怒らせてまで、問題山積の法案を無理に通すのはなぜか――。安倍自民党の狙いが、日本維新の会の抱き込みにあることは、周知の事実となっている。もともと「大阪でカジノ」は橋下徹氏や松井一郎大阪府知事の持論。維新の1丁目1番地は都構想だが、最終的にはカジノの集客に頼るという筋書きだ。大阪府と大阪市は、IRの候補地に想定している人工島・夢洲(ゆめしま)に2025年の万博を誘致する方針で、カジノと万博がセット。カジノ解禁は、安保法、TPP、年金法改正などの対決法案でことごとく政府与党に賛成してきた維新へのサービスなのである。つまり、憲法改正に向けて、橋下・松井の維新勢力を味方につけておく上での“エサ”。国家・国民のためではなく、維新のためのカジノ法というわけだ。

 松井大阪府知事は、カジノ法に反対している民進党について「政治的に僕に対する民進党の嫌がらせ。彼らは国民の方を全く見ず、日本のことも考えず、党利党略、個人的な好き嫌いで物事を考える。まあ、バカな政党だと思う」と批判した。党利党略は自民党に言うべき言葉、国民のことは考えていないのは、維新・自民の法だろう。バカは明らかに松井氏の方。カジノがなければ大阪の発展がないと言うのなら、維新はヤクザ以下の頭しかない集団ということになる。

美しい国
 安倍首相が提唱してきた「美しい国」。公式サイトには、日本の原風景ともいえる中山間地の農村と、農家のご婦人に深々とお辞儀をする首相の姿という象徴的な画像がある。

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 第二次安倍政権の発足以来、首相がやってきたのは特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法といった戦時体制の整備であり、今度はカジノ法案だ。首相が目指しているのは、カジノや原発で稼いだカネで、戦車やミサイルを買う国。どう考えても、「美しい国」とは無縁の世界である。暴力団とカジノ関連産業を喜ばす法案が、国の未来に光をもたらすわけがない。



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