車の後部に貼り付けられた標識、あなたは何種類あるかご存知だろうか。いわゆる「若葉マーク」(初心者マーク)は広く知られているが、その他の標識については、意外と認知度が低そうだ。
つい先日、取材で車を走らせていた時のこと。前走車の後部に1枚の標識。「はて、この蝶々のマーク(右の写真)、何の標識だったか?」と考え込んでしまった。調べてみると、蝶ではなく「耳」をデザイン化したもの。「聴覚障害者標識」だった。職業柄「知らなかった」では済まない。恥じ入るしかなかったが、ことのついでに周囲の友人、知人に片っ端から標識について聞いてみた。やはり全部を知っている人は少ない。改めて、すべての表示について調べてみることにした。
標識は4種類 認知度の低いものも
現在、道路交通法上で規定されている標識は4種類。「初心運転者標識」、「高齢運転者標識」、「聴覚障害者標識」、「身体障害者標識」だ。このうち、「若葉マーク」の呼称で親しまれている初心運転者標識や、高齢運転者標識については、「知っている」と答える人が多い。しかし、聴覚障害者標識や身体障害者標識については、まだまだ認知度が低く、実物を見せて正確に何の標識かを答えられる人は少なかった。標識のデザインごとに、整理してみた。
初心運転者標識(初心者マーク)通称「若葉マーク」。
制度の導入は1972年。道路交通法第71条の5第1項に規定。
・表示対象:普通自動車免許を受けていた期間(免許の効力が停止されていた期間を
除く)が通算して1年に達しない人。
・表示しない場合、道路交通法違反になり、罰則(2万円以下の罰金又は科料)も。
・反則金:4,000円
・行政処分点数:1点
高齢運転者標識(高齢運転者マーク)
通称「紅葉マーク」。
・表示対象:年齢が70歳以上の人で、加齢に伴って生ずる身体機能の低下が運転に
影響を及ぼすおそれのある人。
・平成9年導入
・表示しない場合の罰則なし。
・反則金:なし
・行政処分:なし
※2011年(平成23年)2月1日からデザイン変更。以前のデザイン(右)が枯れ葉に見えると批判が強かったため。当分の間は、変更前のデザインも使用できる。
聴覚障害者標識(聴覚障害者マーク)
・表示対象:普通自動車を運転することができる免許を受けた人で、政令で定める程度の
聴覚障害のあることを理由に当該免許に条件を付されている人。
・平成20年導入
・表示しない場合、道路交通法違反になり、罰則(2万円以下の罰金又は科料)も。
・反則金:4,000円
・行政処分点数:1点
身体障害者標識(身体障害者マーク)
・表示対象:普通自動車を運転することができる免許を受けた人で、肢体不自由で
あることを理由に当該免許に条件を付されている人。
・平成13年導入
・表示しない場合の罰則なし。
・反則金:なし
・行政処分:なし
初心者マークや聴覚障害者マークの表示義務違反は、反則金や行政処分のほか、場合によっては「2万円以下の罰金又は科料」に処せられる。高齢運転者マークや身体障害者マークについては、表示を怠っても道公法上の罰則がない。調べてみると知らなかったことばかり。標識の表示位置についても、《車体の前面と後面の両方に、地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置に表示するよう》と決められていることを、改めて勉強させられた。標識によっては認知度が低いと感じられるものがあった。とくに聴覚障害者標識と身体障害者標識。きちんと区別できる人が少ないのが現状ではないだろうか。一層の周知が必要であることは言うまでもない。
保護義務違反には罰則
それでは、標識掲示車に対し、どのような注意を払えばいいのか。表示対象者がそれぞれ対応する標識(マーク)を表示して普通自動車を運転しているときは、危険防止のためやむを得ない場合を除き、進行している当該車両へ「側方に幅寄せ」や「割込み」をしてはいけないのだという。これをやると道路交通法違反(初心運転者等保護義務違反)。5万円以下の罰金となる場合があるほか、反則金は表示義務違反より高くなる。
【反則金】
・大型車(中型車を含む)7,000円
・普通車・二輪車6,000円
・小型特殊5,000円
・行政処分点数1点
4種類の運転者標識、ぜひとも覚えて交通マナー向上に役立てていただきたい。