安倍晋三首相に近い自民党若手が開いた勉強会「文化芸術懇話会」で、「沖縄のゆがんだ世論」「左翼勢力に完全に乗っ取られている沖縄メディア」などと発言し、作家の百田尚樹氏から沖縄蔑視の暴言を引き出した長尾敬衆院議員に、政治資金規正法違反の疑いが浮上した。
自民党本部から受けた長尾氏の資金管理団体に対する寄附が、政治資金収支報告書に記載されておらず、現状は同法上の「不記載」。勉強会での暴言が問題視される井上貴博、大西英夫両代議士に続いて、長尾氏にも不適切な政治資金処理――暴言3人組が、揃って政治とカネを巡る疑惑を抱え込んだ形だ。
消えた500万円
自民党本部が総務省に提出した政治資金収支報告書によれば、同党は平成24年11月30日、大阪市の「長尾たかし後援会」に500万円の寄附を行っていた。(下が自民党の収支報告書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
長尾議員の資金管理団体「長尾たかし後援会」が、大阪府選挙管理委員会に提出した平成24年分の政治資金収支報告書を確認したところ、自民党本部が寄附したはずの500万円の記載はなく、同年の収入は「4,549,500円」のみ。前年からの繰越金を加えても「4,844,066円」に過ぎず、500万円には届かない状況だ(下が長尾たかし後援会の収支報告書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。明らかな「不記載」。すべての収入、支出を報告するよう求めている政治資金規正法に、抵触する状態である。
民主から自民へ――手引きは安倍首相
長尾敬氏は当選2回。初当選時の所属は民主党で、平成24年の総選挙直前、同党を離党して大阪14区から無所属で立候補。選挙戦最中の12月13日に自民党が追加公認したものの、落選していた。昨年の総選挙では再び小選挙区で敗れ、比例で復活当選。代表を務める大阪14区の自民支部は、昨年になって設立されている。長尾氏の民主への「離党届」提出は24年の11月16日。自民党は、公認候補でもない状態の長尾氏側に、500万円の政治資金を提供(11月30日)していたことになる。
長尾氏の自民入りを推し進めたのは安倍首相。24年の総選挙では公示後に無所属だった長尾氏の応援に出向き、街頭演説中に追加公認を発表するといった熱の入れようだった。その安倍首相と長尾氏の関係を巡り、関係者の間から別のカネの流れを示唆する証言がある。
下は、平成24年の自民党本部の収支報告書の一部。長尾たかし後援会に500万円が支出されたのと同じ11月30日に、安倍首相に5000万円が支出されていた。名目は「政策活動費」。使途報告が不要の、投げ渡し金である。このカネの一部が長尾氏側の活動資金に充てられたというのである。
長尾氏が民主党を離党したのは平成24年の11月で、その直後には大阪14区の民主党支部を解散している。この年の長尾たかし後援会の総収入は約484万。手元に残った政治資金は少なかったはずだ。総選挙における長尾氏の選挙資金は約750万円。後援会活動や選挙資金を手当てするのに、かなりの苦労を強いられたとみられる。これを助けたのが安倍首相が党本部から引き出した5000万円のカネの一部だったという見立てである。信じられない話だが、事実だとすれば表に出ないカネの流れがあったということになる。
消えた後援会への500万円に裏金の噂――3日、長尾氏本人に話を聞くため国会の事務所に取材を申し入れたが、出稿までに長尾氏側からの連絡はなかった。
政治資金規正法違反が疑われる資金処理に、説明責任の放棄・・・・・・。沖縄のメディアを侮蔑し、言論を封殺しようとした長尾氏に、政治家としての資格があるとは思えない。