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消費増税 報じられぬ過去の失敗と財務省の矛盾

2012年6月25日 10:54

 消費増税をめぐる民主党内の対立が、最終局面を迎えている。26日に衆院で予定される増税法案の採決では、小沢一郎元同党代表を含む50名以上の議員が離党を視野に反対票を投じると見られ、党分裂は必至の状況だ。
 与党の過半数割れが予想される事態だが、もともと党内手続きの過程で多数決さえ取らずに一方的に議論を打ち切った挙げ句、「決まったことだから従え」と開き直ったのは首相の指示を受けた民主党執行部の方である。
 国民の声は無視。政策決定過程も不透明。このどこが"民主"なのかわからないが、非は明らかに民主主義を否定した野田首相側にある。
 こうした中、野田首相をはじめ自民、公明の政治家たちが、かつての失敗を省みず安易に負担だけを国民に押し付けようとしている現実を、大手メディアはきちんと報じていない。過去から学ぶことのできない為政者は国民を不幸にするということをハッキリさせておきたい。

平成9年に何が起きたか
 成熟した国家にとって、肥大化する年金・福祉予算を補うために何らかの形で税制を見直すことは必要である。しかし、見誤ってはならないのはその時期だ。

 平成9年4月、当時の橋本内閣が消費税を3%から現在の5%に引き上げた途端どういうことが起こったか。振り返ってみよう。

 平成9年4月の消費増税直後、日経平均株価は2万円の大台を回復し、約4カ月間は有効求人倍率も高水準の0.74%台を維持した。ところが7月にアジア通貨不安が起き、日本の金融機関にも危機が波及すると、年末から家計消費が5カ月連続で前月比マイナスとなり、有効求人倍率も低下した。長期不況の始まりだ。
 消費増税が実施されると、直前に必ず駆け込み需要が増加するものの、その後は反動で大きく需要が減退するのである。
 三洋証券、北海道拓殖銀行の経営破綻、山一証券の自主廃業といった経済史にのこる出来事もこの年に起きている。もちろん消費増税と無縁ではない。

 見落とせないのは、消費増税で一定の税収を確保できたと喜んだのが財務省と自民党だけで、国民は何の恩恵も受けてこなかったことだ。それどころか、その後も国の国債発行残高は増え続けており、国民だけが負担と借金を押し付けられた形。つまり騙されたということだ。

 政治家の決まり文句となった「子ども達の世代にツケを残さない」という言葉は、責任の所在をぼかし、批判をかわすためのものでしかない。ツケを残した張本人である永田町や霞ヶ関は、何の責任も取っていないのである。

最悪のタイミング
 増税のタイミングとしては、平成9年の時点より現在の方がはるかに悪いことは歴然としている。最悪と言ってもよい。

 まず国内。前述したように平成9年当時の日経平均株価は2万円台だが現在は8,500円台。有効求人倍率は当時の0.74%に対し、現在は0.52%に過ぎない。為替相場では空前の円高が続いている上、長引くデフレ不況を脱却する道筋さえ示されていない。この状況で増税を実施されたらどうなるか?

 家計を直撃するのはもちろん、中小企業の経営はいま以上に厳しくなり、国内経済はどん底に落ちる可能性が高い。子どもでも分かる理屈だが、民主や自民の増税推進派は事業所の9割以上を占めるこの国の中小企業経営者に「不況になりますが」という前提を語ってはいない。無責任極まりない話だ。

 一方、国際情勢に目を転じると、ユーロ圏の緊張の高まりが世界経済にのしかかるなか、国際通貨基金(IMF)は金融の安定リスクが上昇したとして今年の世界経済の成長見通しを大幅に下方修正している。欧州債務危機が世界経済の先行きを不透明・不安定にし、アメリカ経済も中国経済も低迷している状況だ。世界的な経済危機に直面している時期に、なぜ消費増税で国の力を削ぐのだろうか。

 平成9年の消費税アップの折、時の政権が国内の経済状況や国際情勢を読めなかったことは否めない。だが、政府の状況判断能力がこの時より低下しているのは確かだ。野田佳彦、前原誠司といった松下政経塾あがりの世間知らずや仙石由人程度の政治家に、まともな判断ができるとは思えない。

減らぬ税金の無駄遣い
 増税が許されない理由はまだある。度々報じてきたが、民主党が掲げた無駄の削減はパフォーマンスばかりで実効性を伴っていない。霞ヶ関の傍若無人ぶりは何も変わってはいないのだ(参照記事→「1冊38万円 総務省業務委託の詐欺的手法」。「天下り法人へ日当6万7,500円」)。
 それどころか、いったん止めると言ったはずのダム、新幹線、高速道路といった巨大公共事業は、次から次へと復活しており、「コンクリートから人へ」のキャッチコピーは死語となってしまった。増税の前に削るべき税金の無駄は、手付かずで残されているのだ。

幼稚な民主党議員
 それにしても呆れるのは増税に賛成している民主党議員の幼稚さだ。23日、民放ローカル局の番組に出演していた民主党の1年生議員が、「増税は国際公約。できなければ日本発の金融恐慌を引き起こす」と力説していた。発言者は外務官僚あがりの衆院議員だというが、あまりのバカさ加減に笑うしかなかった。

 「風が吹けば桶屋が儲かる」には納得もできるが、「増税しなければ日本発の金融恐慌が起こる」とする小役人政治家の主張には、どこにも現実との整合性がない。前述したとおり、消費増税が金融危機を招くことはあっても、その逆はあり得ないのだ。
 この程度の男が国会議員を務めていること自体驚きだが、それにしても政治の劣化は深刻である。

 そもそも海外に行って勝手に増税を国際公約とやらにしたのは野田首相である。しかし、民主党は自国の国民に対し増税の約束などしていない。約束したのは税金の無駄遣いをなくすということであり、それによって捻出したカネで暮らし向きの予算を増やし、子ども手当て、農家への戸別所得補償、後期高齢者医療制度の廃止、最低保障年金制度の創設といった主要施策を実現するというものだったはずだ。
 肝心の約束を反故にして、頼みもしないことのツケだけを国民に回すというのでは筋が通らない。国際公約を守るために国をつぶしていたら元も子もないのである。

財務省の矛盾
 増税に賛成している民主党議員は、増税の仕掛け人である財務省が、対外的に何と言ってきたか知るべきである。同省は、日本の財政事情は危機的なものではないと一貫して主張してきたはずだ。

 平成14年に同省から格付け会社に対して出された「外国格付け会社宛意見書」には、次のように記されている(→同省ホームページ参照)。
・日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高

 "消費増税を実施しなければ日本発の金融恐慌が起こる"などというバカげた説が、財務省のこれまでの主張を否定するものであることが分かるだろう。同時に、消費増税が、失政を糊塗するためのまやかしであることも理解できるはずだ。
 財務省が消費増税を推し進める理由として考えられることはひとつしかない。霞ヶ関の税金無駄遣いやばら撒きによって招いた財政破綻を隠すため、国民にツケを回そうとしているだけなのだ。

小沢氏は間違っていない
小沢一郎元代表 周知のとおり、与党内で現政権や自民党の主張に真っ向から反論しているのは小沢一郎元代表とそのグループの面々だけである。政局がらみだの選挙目当てだのとかまびすしいが、こと増税に関する小沢氏の主張は間違っていない。

 増税が民主党の公約ではなかったという点と、その前にやるべきことがあるという小沢氏の主張は単純明快で、政党人としてもっともなことを言っているに過ぎない。
 消費税アップの失敗とその後の国民への背信行為を考えると、増税を急ぐ政治家たちの愚行こそ責められるべきである。



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