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「福岡県町村会」に簿外金約6000万円    ~問われる改革の行方~

2011年3月10日 08:30

 職員の詐欺事件、さらには会長と副知事による贈収賄事件を起こした福岡県町村会に、簿外の金を扱っていた複数の預金通帳が存在し、約6,000万円の現金が残っていたことが明らかとなった。見つかった簿外金は、平成23年度の町村会の会計に雑収入として繰り入れられる。9日、町村会事務局長が事実関係を認めた。

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いわゆる「町村会事件」とは 
 「福岡県町村会」を巡っては平成21年、当時の参事や元事務局長らが経費の水増しや架空請求によって捻出した金を遊興に使っていたことが発覚、詐欺容疑で逮捕、起訴された。この詐欺事件の捜査過程で、町村会側による県幹部職員への接待疑惑が浮上、責任をとって中島孝之副知事(当時)が辞任する。
 翌年2月には、県町村会会長で全国町村会会長も務めていた実力者・山本文男添田町長(当時)が、後期高齢者医療制度にからみ便宜を図ってもらった見返りに、中島元副知事に現金100万円を渡していたとして、山本、中島両氏が逮捕され、県政を揺るがす贈収賄事件に発展した。事件の背景には、4期16年におよんだ麻生県政の腐敗が存在することは言うまでもない。
 それぞれの事件で逮捕された関係者らは、起訴後の裁判で執行猶予付きの有罪判決を受けたが、接待や贈賄の原資となった金がどうやって管理されていたかは曖昧なままだった。

簿外金の存在
 問題の簿外金は、山本会長時代、詐欺などで逮捕された前事務局長が複数の通帳で管理していたとされ、事務局長交代にともない現事務局長が引き継いだという。
 9日、取材に応じた事務局長は、簿外金や複数の通帳の存在を認め、前事務局長から引き継いだ通帳はいくつもあったとした上で、不適切と考え、三つの通帳に集約して管理するように変えたと説明。最終的に三つの通帳に残っていた現金が約6,000万円だったとしている。
 改革を目指す町村会内での内部調査で問題の通帳が確認され、約6,000万円にのぼる現金の存在が明らかになったが、既に費消された金額や、どのようにして巨額な金が集めらたのかは判然としない。簿外金は平成23年度の予算で、雑収入として本来の町村会会計に繰り入れられる。

 先月28日に開かれた県町村会の総会で配布された「定期総会提出書類」には、平成23年度歳入歳出予算が議案として明記されており、この中で"諸収入"のうちの"雑入"として6,130万円が計上されている。この大半が複数の口座に分散してプールされていた金だったことになる。
 予算書を見ると、諸収入が昨年の880万円から7,000万円に、雑入が同じく10万円から6,130万円に膨れ上がっており、不自然さは一目瞭然。県内の町村が拠出する「会費」が年間500万円程度で、補助金等を加えての毎年の予算額が8,000万円前後だったことを考えると、町村会にとって6,000万円がいかに大きな金額であるかが分かる。
 2月の町村会総会後に開かれた記者会見では、「定期総会提出書類」が記者団にも配布されていたが、記者団から雑収入の金額の大きさ等についての質問は一切なかったという。

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町村会の問題点
 山本前会長時代の町村会の「膿」がまたひとつ顕在化した形だが、事件や不適切な会計処理を招来した"町村会が抱える問題点"を整理しておきたい。

 北海道から沖縄までの全都道府県には、それぞれ町村会が存在する。その全国組織が「全国町村会」で、「全国知事会」や「全国市長会」と並んで"地方3団体"と呼ばれる(「全国都道府県議会議長会」「全国市議会議長会」「全国町村議会議長会」を加え"地方6団体"ともいう)。
 前身は、大正年間に町村自治の振興・発展を目指して設立された「全国町村長会」で、戦後、現在の「全国町村会」に改称され現在に至っている。昭和38年と平成5年の地方自治法の改正で、自治大臣への届出団体となり、さらには内閣や国会に対して意見具申ができる団体にまで成長した。
 地方自治の振興・発展に向けた政策に関する各種の調査・研究や政府等に対する要望、政府審議会等への参加などの政務活動を行っているとされるが、都道府県ごとの町村会は、単なる「任意団体」(福岡県市町村支援課)。情報公開の対象にもなっていない。ここが最大の問題点だ。
 任意団体と言いながら、町村会の運営は全て公金で賄われている。福岡県町村会の規約を見ると、《本会の経費は、会費、補助金、寄付金及びその他の収入をもってこれを弁償する》とされており、"会費"については《加入町村の負担》と明記されているのだ。自治体の公金や公的補助金で運営されている以上、徹底した情報開示がなされるべきだろう。
 町村会が、早い時期に情報公開制度の導入に踏み切っていれば、詐欺や贈収賄といった事件は起こらなかったと言っても過言ではない。カリスマ会長のワンマン体制が引き起こした事件は、町村会改革のあるべき方向を示している。

 問題はまだある。福岡県内の、ある首長経験者は、取材に対し町村会の理事会における理事の構成、選任方法に疑問を投げかける。町村会の会議は、規約上、総会と理事会が規定されているが、ほとんどの事案が理事会において決められ、総会は追認機関になっていると指摘する。また、町村会規約では《理事は郡町村会の会長をもって充てる》と規定しているのだが、多くの理事が選挙の都合などで、2~3年程度で交代してしまうのだという。
 山本前会長は10期、実に40年近く添田町長を務めていたことに加え、全国町村会の会長でもあり、町村会の全てを熟知していた。対して、理事在任期間の短い他の首長は、町村会の内情を理解する頃には交代するといった有様で、山本氏には全く太刀打ちできなかったという。
 町村会は自治体の集合体ではなく、首長をもって組織されている。必然的に長く首長を務めている人物に権力が集中する。しかし、前述したように、運営経費は公金から拠出されているのだ。開かれた町村会にするためには、会長の在任期間制限や理事構成についての検討も視野に入れるべきではないだろうか。
 新会長(南里辰巳・志免町長)が決まり、新たな体制でスタートした県町村会の改革の行方に注目したい。

さらなる問題判明
 山本前会長による独裁体制は、町村会に様々な弊害をもたらしていた。県町村会には昨年8月、人知れず処理されたさらなる不適切な問題が存在した。実は、現在の町村会会長にも報告されていない。                 

(つづく)

                  
 



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